出会い
目が覚めるといつもの自室の白塗りの天井ではなく、綺麗な三日月が夜空に浮かび、その周りを無数の星たちが煌びやかさを派手に演出している夜空が瞳に映った。
寒さを感じる、当たり前だろう、身体が海に浸かっているんだから。
しかし、何故?僕はこんなところにいるのか?煙草をふかし、優しい毒水を口に含んで、睡魔の誘惑にあっさりと堕ち、眠りについた事は覚えている。けれど、今は違う場所にいる。
夢でも見ているかのようだった。
けれども、あのアニメキャラや、小説の主人公のように自分もきっと異世界にとんできたのだろうということに、気づいているのだ。
僕は身体を起こし、海辺を見つめた。
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「「「殺してやる!!!」」」
美しいという言葉では表しきれない、美しい美少女、人魚が僕の心臓めがけて、氷でできたようなナイフを突き刺してくる。
僕は、ナイフを握る彼女の拳を抑えた。ナイフの刃先が軽く胸にあたる感触があったが、触れだだけのようであった。
その時だった。彼女の腕が、正確に言えば指先から腕にかけて。まるで、切り刻まれているかのように、無数の切り傷が出来始めた。
彼女の傷口から流れ出る赤い血が、彼女の拳を抑えている僕の手にも触れた。
僕は彼女を助けなければと感じた。理由は死んでしまうからだと思ったからだ。
僕は彼女を抱きしめた。それでも、ナイフを握る彼女はまだ、僕を殺す気である。だから、ナイフの刃の部分を持った。刃が手のひらに食い込み、自然と血が溢れ出す。それでも、我慢しながらナイフを彼女から奪い取り投げ捨てた。
投げ捨てられたナイフは空中で、綺麗に粉々に砕け散った。
ナイフを奪い取られた彼女は今度は僕の腕に噛み付いてきた。腕の肉を引きちぎられる。それなのに、僕は痛みを感じることなく彼女を優しく強く抱きしめた。
「俺は君と争いたいわけじゃない!話がしたい。お互いに生きてるんだ!君も俺の目を見ろ!」
僕の言葉が届いたのか、美しい人魚は僕の目を見た。その目は何か禍々しいものを宿していたが、次第に禍々しさが消えていき、この世の何もかもを癒すのではないかというほどに、優しい目になった。
彼女は消え入りそうな声で僕に言った。
「ありがとう・・」
そして、そのまま、彼女は僕に体をあずけて気を失ったかのように、眠りについた。