最狂
静かに暮らしたい。ただ深く眠っていたい。そんなことを思いながら鴉のように黒い髪を後ろで纏めて、血の涙を流していた。空にきらめく星をただ眺めていた。そんな彼にやさしい女性の声がかけられる。
「少し休みましょう。私が傍にいますから。」 優しい声だった、異常なほどに早かった鼓動がしずかになっていく。
月明かりに照らされて、彼と彼女は小高い丘の上に腰を下ろした。無言のまま数時間が過ぎた頃、彼が呟くように口を開いた。
「いつからだろう・・名前を呼ばなくなったのは・・いつからだろう・・笑った顔を思い出さなくなったのは・・いつからだろう・・泣かなくなったは・・・ただ一つ、失えても・・・愛している・・」
朧んだ自分のことを、叫びたいのに、言葉につまる。この気持ちを言葉に現せないでいた。
ただ、いまとなっては遠い過去のことのようだ。今の自分自身が好きかと言われれば・・・「自分を愛せていると思う。おれがおれでいられるのは・・・」
それ以上その青年は何も言わなかった。けれど、それ以上を物語るかのように、彼の鎖骨あたりにある痛々しい火傷のあと。いや、切り傷を焼いて塞いだようなその跡を彼は優しく撫でるだけだった。その時の彼の目は、いつの日か最狂と呼ばれる者の目ではなく、ただ誰かを愛している時の優しい目をしていた。
初めまして。ではないですが、申し訳ありません。作品を描いていない期間がありまして。すいませんでした。
以前、優しい僕が修羅に落ちちゃったという作品をまた描いていきたいと思います。よろしくお願いします。
当分は、改訂作になりますが、話の続きを描いていきたいと思います。
前作から読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
また、よろしくお願いします^^