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 気が抜けたような雰囲気が居間に漂う。3人は何も話さず、昼下がりのけだるい空気が部屋に蔓延している。

 佐藤はソファでテレビを見て、南はティッシュでカーペットにしみ込んだコーラを拭いていた。

「ねえ、大川さん」

 大川はペットボトルを片手に、テレビに集中している振りをして佐藤を無視。

「ねえ、大川さんたら」

「うるせえよ」

「……林さんも良いケツをしてますよね」

 大川は口を開けたまま佐藤を見る。

「3人で林さんをやっちゃいませんか」

 佐藤は口の端を曲げてゆがんだ笑いを浮かべている。

「マジか?」

「大川さんと南さんとで抑えつけといて下さい。あとは僕が一発やってやりますよ」

「キッヒッヒー。やめとけよ。いくなんでもなあ」

 南は濡れたティッシュをゴミ箱に放り投げた。

「本当にやるわけじゃないですよ。入れる振りだけですよ、振りだけ。からかってやるだけのジョークですよ」

「本当にジョークだよな」

 大川は上目遣いで佐藤を探る。

「ジョーク、ジョーク。ちょっとからかってやるだけですよ。暇つぶしになるでしょ」

 大川はうーんと唸ってペットボトルを置いた。

 廊下から足音が聞こえてきて、居間に大柄な林が入ってきた。

 棚から灰皿を取り出して卓の上に置くと、タバコに火を付ける。何度も遊びに来ているので自宅のようにくつろいでいた。

「おい、佐藤。今日はお前に言いたいことがある」

 そう言って林はタバコを吸いこむ。

「なんでしょう」

 すました顔。

 林は佐藤の方に煙を吹き出した。

「分かってんだろ。仕事のことだよ」

 佐藤は薄笑いを浮かべて、やれやれまたか、というように首を振る。

「林さん、休みの日に仕事の話はやめましょうよ」

 そう言ってテレビに視線を移動した。

 林は、舌打ちして卓のマージャン牌をかき回す。

「おい、大川。今日はマージャンやらないのか」

「本田と寮長は、やる気がないみたいですよ」

 ふーん、と言って林が残念そうに牌を並べる。

 佐藤は立ち上がり、林の後ろに回って大川と南に目配せをした。

 南と大川は目を合わせる。本当にやるのかよという会話が無言で交差した。

「林さん」

 佐藤がいたずらっぽく笑う。

「ん?」

 佐藤は林の両脇に手を入れ、大きな体を引き上げて卓にうつぶせにした。

「ん? なんだ、なんだよ」

「大川さん、早く押さえて」

 仕方がねえなあ、と小さくつぶやいて、大川が右肩と背中を押さえた。南は左の肩と首筋を固定する。

「何すんだよ、お前ら!」

 もがくが、しっかりと押さえつけられているで尻が揺れるだけ。

 佐藤は卓の灰皿を棚に戻した。

「危ないからこれも取っておきましょうね」

 林のメガネを外して棚に置く。

「佐藤、いい加減にしろ!」

「まあ、落ち着いて。これから一発、尻を借りるだけですよ」

 林が絶句した。

「僕たちは、寮長からやられてますからね。この男子寮はそういったことになっているんですよ」

 ねえ、と言われて南が気持ちの悪い声で笑う。

「そうそう、俺たちも寮長からやられたもんなあ。乱暴にするから痛かったよなぁ」

 キッヒッヒーと笑った。

「林さんも俺たちの仲間になりましょう」

 大川もいやらしく笑っている。

「これが本当のシリアイってやつですね」

 そう言って佐藤は林のズボンを脱がせにかかった。

「やめろ!」

「あまり大声を出すと、乱暴にガンガン行っちゃいますよ」

 佐藤の言葉におびえて黙りこむ。

 佐藤は脱がせたズボンとパンツを部屋の隅に放り投げた。

 上は派手な赤いシャツ。むき出しになった白い下半身に黒い靴下が似合っていない。

「じゃあ、いきますか」

 そう言って佐藤はわざと聞こえるように、よいしょと言ってズボンをずり下げ、棚のこけしを取りだした。それを股間に当ててイチモツのように振り回す。

「どうです、僕のチンチンおっきいでしょう」

 林は佐藤を見ようとするが、しっかりと南が首を押さえているので形状を確認することがかなわない。

「おお、すっげー。でけえなぁ」

 南がわざと感嘆の声を上げる。

「そんなに大きいの入るかあ。林さん大変だなあ」

 大川が、からかうように笑う。

「林さん、僕……前から林さんのことをこうしたかったんですよ」

 いやらしい言い方で、こけしの頭をペチペチと尻に当てる。腰がピクリと動いた。

「そろそろ入れちゃいましょうか」

 林の腰を左手で押さえる。

 彼は半分あきらめて体から力が抜けていた。

「待て、佐藤……」

 呟くように弱弱しい声。

「なんですか。林さん」

「頼む、……優しくしてくれ」

 佐藤はクスリと笑った。

「分かりました。ではいきますよ」

 尻の筋肉がキュッと締まる。

 林は体に挿入されることを覚悟したが、いつになってもその感覚は襲ってこない。

「うそだぴょーん」

 佐藤は林の横に来て股間のこけしを振っていた。口の端を曲げてバカにしたような笑い。

 南が押さえていた手を放す。

 林は首を持ち上げて、佐藤のニヤついた顔を呆けたように見る。

「林さん。うそだぴょーん。これはこけしでした―」

 佐藤をはじめ、南と大川もニヤニヤしながら林を見ていた。

「放せよ、こら!」

 大川の手を振りほどき、起き上がった。

「いやあ、本当にやられると思ったでしょう」

 佐藤を睨んだまま何も言わない。

「でも内心、やってほしかったりして……」

「このヤロウ!」

 林は佐藤につかみかかった。逃げようとしたがパジャマの袖をつかまれてしまう。

 こけしが壁に当たって音を立てた。

「ふざけるなよ。さとおぅー!」

 ほっそりとした体を捕えようとしたが、佐藤は体をひねって林の手を振りほどく。

 佐藤は窓から通路に飛び出し、外階段を駆け降りた。それを林がすさまじい勢いで追いかける。道路に逃げようとしたが、その手前でつかまってしまった。

「こいつう! やってやるぞ、ケツに突っ込んでやる」

 林はパジャマのズボンを下着ごとはぎ取ろうとする。佐藤は必死にズボンを押さえる。

「今日という今日は許さねえ。犯してやるからそう思え!」

 両手でズボンをずり下ろす。尻が半分露出した。

「誰か助けてー! このおじさんが僕に変なことをするよおー!」

 林の動きが止まる。彼が正気に戻って、あたりを見ると歩道には数人の通行人がいて、二人を見ていた。

 いたいけな少年のズボンに両手をかけて脱がそうとしているごつい男。それが周りの人間から見た構図だ。

「ママ―、助けてー! このおじさんにいやらしいことをされちゃうよー」

 佐藤は腰の手を振りほどいて、歩道を走り去って行った。

 後に残されたのは両手を前に出し、中腰で下半身を丸出しにしている林。

 人々は隆起した股間のイチモツに視線を集中している。

 車も数台停車して、運転席から林を見ていた。ひとときの静寂があたりを支配する。

 歩道の男の子が指をさした。

「あ母さん、あのおじさん、チンチン……」

 隣の母親が急いで口をふさいだ。でも、その目はじっと林の股間を見ている。

 天を突くように怒張していたイチモツは角度を失い、しなびていった。

 林はゆっくりと後ろを向き、寮に向かって力なく歩きだす。

 派手な赤いシャツに下半身は裸。白い足に黒い靴下がアンバランスだった。見物人たちは何も言わず、彼が階段を上っていくのを見ていた。


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