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第5話 ヤメーメ城に潜入してみた

町でイヌを見かけるとタタロオとリンクする今日この頃です。

 両替所を出て通りを進むと、民の姿が現れはじめた。


 おー、いるじゃないか、マガハラ大陸のみなさん――

 

 ただやっぱりどれも顔がケモノっぽいな。

 ラノベとかでよくある獣人みたいなことなのかな。


 しかもあの男たちがやってるの囲碁じゃないか?

 囲碁は人類が生み出した最も難解なゲームだって聞いたことがあるし、てことはこの世界の民はそれなりの知性がそなわっているということか。

 

 ヤメーメの村には、いたるところに豊富な木が茂っているのがわかる。 

 古代都市のエネルギー源はおもに木材だったから、たぶんこの村も生活に有効利用しているのだろう。

 鉄製の(くわ)などを見かけることからも、ここには冶金(やきん)技術もあるらしい。


 誰もいない材木屋を抜けると、前方に大きな建物が見えた。

 日本で言うところの、地方にあるイ○ンモールくらいの大きさだ。


 そろりと門へ近づいていくと、水泳のビート板ほどの板にこんな文字。


【ヤメーメ城】


 もっと中世ヨーロッパ風の豪勢なものをイメージしてたが、壁に(つた)が絡まってて、パッと見た感じだと市立図書館や古めの学校みたいな雰囲気がある。


 こうして文字が読めるってことは、人間の姿になった特典で識別能力もそなわったということなんだろう。

 ヨーロッパの多言語主義は最近のもので、大戦前は単一言語主義が一般的らしいが、この世界の言語も認識においてはジーコの限られた知識の範囲内(モノリンガル)と思っていいのかな。

 

 すると門の先で、おっさんが居眠りしたまま立っていた。

 口がメスシリンダーに吸い込まれたみたいに突き出た男は、手に長い棒を持ってるので、おそらく門番か。

 そこでパッと目を開けたが、壁に寄りかかってまったくやる気なしの様子。

 

 もっと、しゃんとしよーぜ。


 これじゃまるでゴールキーパーなしでシュート入れ放題状態みたいじゃないか。


 ということで、おれは城の関係者をよそおう顔で門を通過。

 そのときも、蟻の行列でも眺めるような目でチラッと見られただけだからな。

 こんな門番、即刻クビにしたほうがいいんじゃないか。

 だって城を守る気、ぜんぜんないんだもん。


 ジャンボジェット機がすっぽり入りそうなほど広い校庭風の場所を抜けたら、すべて空っぽの下駄箱を発見。


 中の様子も、城というより学校を改築した感じだな――。


 もちろんここが学校っぽいと感じるのは、ジーコの脳による知識なんだろう。

 1500グラムの人間の脳は百五十億個の神経細胞からできてるらしいが、その半分くらいがイヌだったおれの脳に入り込んできたイメージでいいのかな。

 

 キングは人間好きだから簡単に会えるだろうという話だったけど、言ってもこの国の長なわけだし、じっさいに会うとなると緊張するぜ。

 イヌの暮らしじゃ、お偉いさんに会うことなんて一度もなかったもんな。

 ジーコだって、会うのはせいぜい校長先生くらいだろう。


 草鞋(わらじ)を脱いで入ると、廊下も学校みたいな感じ。

 ただところどころが妙にきらびやかで、壁一面が大理石ってところもあるから、かなり異様に見える。

 ほかにも窓枠にきれいな石がはめこんであったり――


 ダイヤか? なんか、すげえな。 


 古い校舎をむりやり豪華に見せようとしている感じだ。

 じっさい建物全体が玉石混交(ぎょくせきこんこう)な風情で、かなりムリがある。


 〈だってボロい板の廊下の天井にシャンデリアだぜ?〉


 と、廊下を曲がったところで、だれかが寝ている。


 “いやいやいや、廊下で寝ないでくださいな”



 裁縫好きのおばあさんが孫のために編んだみたいな()ぎはぎだらけの格好からも、貴族って感じではない。

 二日酔いの用務員か? 

 あまり見ないようにして通過。


 視線を上に向けると「保健室」や「図工室」「職員室」と書かれたプレートが見え、さびついたロッカーに宝石がはめこまれている。

 学校ほど宝石が似合わん場所もない気がするけど。


 あまり落ち着かない気分になるのは、たぶんジーコの脳が学校に対して拒否反応を示しているからだろう。

 よほど学校にいい印象がないんだな。

 よくもまあ、がんばって高校に通っているもんだ。

 

 木造の階段をのぼっていくと、先のほうからカコーンと鹿威(ししおど)しみたいな物音がした。

 どうも「六年三組」のプレートがさがった部屋から聞こえてきたらしい。


 まさか授業中ってわけじゃないよね? 


 教室の後ろのドアが少し開いてたので、抜き足差し足で耳を澄ませながら、そおっと覗いてみた。


 ギクッ――教壇のところにだれかいるぞ。


 しかも煌々(こうこう)としてて、やたらまぶしいんだけど。


 おれは足音を立てないように気をつけて、そろりと接近。

 そこで声を受けた。


「さあ、いらっしゃい」


 げっ、バレてるやん! 


 となれば引き返すわけにもいかないので、ドキドキしながらドアから入り、おれは目を疑うことになった。

 教卓があるべき場所に、仰々しい玉座が置かれてあるんだ。

 そしてそこに座っているのは――

 ······

 ············

 ヤギのおじいちゃん? はだかの大将?


 ちょ、ちょ、ちょ、なんかヤバそうだぞ、このじいさん!

 浮世離れも(はなは)だし、って感じなんだけど。


 すると、ヤギ顔おじいちゃんの口が開いた。


「もっとこちらへ」


 よほど引き返そうかと思ったが、そう言われちゃあ、しかたがない。

 近づいていくと、わずかに服を着ていることはわかった。


 ふぅ、よかった······

 すっぱだかのじいさんだったら、マジどうしようかと思ったよ。


 まあその服ってのも法衣とかではなく、抹茶(まっちゃ)色の薄い布をサラッと羽織ってるだけな感じだもん、ヤバいよね?

 たぶんこの人がキングなんだろう。


 〈まさに半裸の王様ってところか――〉


 しかもその玉座、ちょっと派手すぎません? 

 いろんな石がついてて、半裸のヤギじいさんをギラギラと囲んでいる。

 おかげでヤギじいさんが、磨いた仏像みたいに輝いて見えるんだ。


 これにはまいったね、手を合わせて拝みたくなったよ。

 YouTubeにアップしたら即バズりそうだな。

 

 おぉ、しかも黒板に青や黄色のチョークでいろいろ書かれてあるぞ。


 えーっと······まず相合傘でしょ。

 よくわからん数式でしょ。

「卒業おめでとう!」

「かっとばせ、中大兄皇子くん!」

「喧嘩上等」や「唯我独尊!」と殴り書いたものも。

 

 ······おいおい、ヤンキー学校かよ? 

 

 人間界のアカン一面をフィーチャーしてません?

 そこで半裸のヤギじいさんが口を開いた。


「さあ、ここにかけなさい」


 そこには園児用ほどに、ちっちゃな椅子がひとつ。

 これだったら、いつもジーコにさんざん言われてる“おすわり”のほうが、よっぽどマシじゃないか。


 でもまあ歩き疲れたから、けっきょくそこにちょこんと座ったんだけどね。


 そしてヤメーメ王国のキングとのやりとりが始まったわけだ。

最近の校舎って土足オッケーもありますよね。

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