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第45話 タンニシ王国のパラシュート部隊

 ふわりと舞い降りてきたタンニシ王国のパラシュート部隊。

 それとはべつに、明るくなった上空に見えるのは、ゴツゴツした鳥のようなもの。

 

 ン? アレってもしや、リモコンで操作するタイプの······


「ずいぶん奇妙な形だな」

「ベロじゃよ。偵察機じゃ」


 ベロ型のドローン? 


 いかしたセンスじゃないですか。

 きっとタンニシには優秀なデザイナーさんがいるんでしょうな。


 見ると、パラシュート部隊は無事に着地できたみたいだ。

 ふぅ、よかった、よかった――

 って、ぜんぜんよかねーよ!


 次から次に何かが現れて、もはやおれの頭はスクランブルエッグ状態だ。

 ケチャップつけてジュルッといけば、案外うまいかもね。


「急ぎましょうかの」


 キングの声を受け、おれたちは全力疾走を再開。

 とにかく逃げれるところまで逃げるっきゃない!


 はあ、はあ、はあ······


「グウェッ」

「タタロオ、だいじょうぶ?」


 くっ、走りすぎて卓球ボールが喉に詰まったみたいな声が漏れちまったぜ。

 頭に酸素が足りず、うまく考えることもできんわ。


 しかも前方にもパラシュート部隊の姿。

 あーあーあー、剣を振りかざして、こっちに向かってきてるじゃないかよ。

 もちろんお友達になりましょう、ってわけじゃないよね?

 最悪だ、まちがいなく敵視されている。

 しかも魔物の姿も見えるから、まさに連合軍だよ。

 

 ヤツらはどんどん迫ってくる。

 あんな多勢に対し反撃したって焼け石に水だが、おれたちは(つる)から生えたブドウやら地面のタケノコやら桃を投げながら、とにかく逃げる。

 そういや日本の神話でも、黄泉の国でイザナギ神か誰かがブドウや桃を投げながら逃げてなかったっけ?


「まったく、しっちゃかめっちゃかだな。猫の手を借りたいくらいだよ」


 チャウ丸がそんなつもりで言ったのかわからないが、シャムりんが反応した。


「猫ならここにいるわ!」


 昔の日本人は猫を借りてきてネズミを退治させたって言うもんね。

 そしてシャムりんはヒトの姿になっても、正真正銘のニャンコ様だ。


 そこでシャムりんが後ろに向かって叫んだ。


「ミラクルボンバイエ!」


 彼女の手から渦巻く光が放たれて強風が起こり、接近する敵兵をまとめて蹴散らした。


「別名、猫背、猫ババ、猫かぶりよ!」とキュートなキメ顔。


 シャムはん、また新技じゃなかですか。

 いつの間にそんな術を身につけたのよ?

 もしや戦いながら能力をあげ、その都度、発動させれるの?


 だとしたら天才を通り越して魔術の神じゃん。

 猫が賢い生き物ってのは知ってるけどさ、人間とフュージョンしたことで、さらに磨きがかかったのかもね。


 そこでタンニシの兵が炎の矢を放ってきた。

 それが地面の草を燃やし、ボワッと一気に火が広がった。


 かまわずチャウ丸とシャムりんは魔術で応戦。

 ふたりからどんどん飛びだす光線の渦。


 ここはおれも〝コカン魔殺砲〟の連射だ。


「ウッポサマンカコッ! ウッポサマンカコッ!」 


 まぐれ当たりで、何体かの魔物を仕留めることができた。

 

 そこでおれはサッとガラケーをかざす。

 画面に映し出されたものによると、そばで倒れている海老茶色の干したトカゲっぽいものは、デンパリザード(波蜥蜴)というBランクの魔物らしい。

 

 すぐにチャウ丸が気づいてマジックボックスに回収してくれた。

 でも敵の数はちっとも減ってやしない。


「なんかマズくない?」


 ああ、マズいよ、マズすぎますよ。

 ピンチの連続すぎて、ピンチレベル100で子どもにバカ売れの図鑑に載れるかもね。


 怒号が飛び交うなか、土埃がバッと広がった。


「キャッ!」


 喧噪の間を縫って届いてきたのは、シャムりんの叫び声。

 おれは敵も気にせず駆け寄り、彼女の様子を確認。

 

 どうやら敵兵から攻撃を受けたらしく、腕が傷ついている。

 顔をしかめて、つらそうだ。

 てっめぇ、軍人のくせに、かよわい女子になんてことしやがるんだ!

 

 と言っても勝てる気がしないので、おれは迷わずしゃがんで彼女をおぶり、煙と熱気に包まれるなか、あたりを見渡す。

 前にはタンニシ兵と魔物、振り返ればスパイスアント(香辛虫)がうじゃうじゃいるし、どこに逃げればいいんだ?


 そのときだ。


 バファッッッッッ!

 

 強い熱風が巻き起こると同時に、敵兵たちが一斉に吹っ飛んだ。


 えっえっえっ、なんで?


 見るとすぐそばで、キングが忍者みたいに両手の指をかさね、長い山羊ひげが優雅に揺れている。


 なんだなんだなんだ――


 もしかして忍法? 妖術?


 キングの周囲2メートル圏内で、鮮やかな赤の光弾が地面から高速で上空へ飛来。


 なおも剣や斧が宙を舞い、光弾が炸裂したわけでもないのに敵兵たちがバタバタと倒れている。


 すげえ、攻撃せずして倒す合気道の妖術版みてえだ――


「きっとキングは本物の魔聴士(まちょうし)なのよ」と耳元でシャムりん。


 そうか、あなたこそ、聴力を自在に操るすごいお方だったんですね。

 こりゃキング様の爪の垢を煎じて飲まないとだな。

 

 さらにキングは口から霧のような息をフーッと吐き、それがどんどん広がり、やがては大きな半透明の壁となって敵兵たちへ迫った。

 

 オオオッ、口から壁を生み出してるじゃないか!


 ファンタジーゲームの魔術師さながらだよ。

 

 キングの驚くべき妖術のような壁で敵側と遮断され、敵兵たちから襲われるのを回避できている。


 そのスキにおれたちは壁沿いを走った。


「聴覚の壁がもつのは、しばしのあいだ」とキング。


 そうなんですね、じゃあ遠く彼方まで逃げまっしょ!

 

 にしても、すごい敵兵の数だ。

 走っている間も、半透明の壁の先から大勢で迫って来ているのがわかるぜ。 


 やはり「探知能力」で察したように、百はゆうにいるかもしれんな。


 しかも壁のこちら側にはさまざまな種の魔物の姿。

  

 チャウ丸はバイオレンス映画で見る警察に追われる銀行強盗ばりに、犬銃を発砲しながら走っている。

 時おり弾が魔物に命中し、敵は吹っ飛んで壁に衝突しズルズルとずり落ちる。


 だいぶ走ったところで、建造物が見えてきた。


 そこまで着くと、おれたちは息を整えながら立ち止まる。

 それは石の台座で、くさび型文字のようなものがごにょごにょ書かれてある。

 正面には真ん中に薄い亀裂の入った石の壁。

 しかも幾何学模様の中にベロの形の刻印がなされてある。


 これって、あのポピュラーなバンドのロゴっぽくない?


「タンニシ王国の祭壇じゃろう」とキング。


 なるほど、ここはそんなに神聖な場所なんですね。


「味覚を信仰するタンニシ王国ならではかの」


 そしてキングは文字に顔を近づけて、やおら読み上げた。


【踏み出さぬ者は、未来永劫、味わいを失す】


 場が静まり返ったところで、さらにキング。


「どうやら祭壇は扉になっているようじゃな」


「じゃあ、合い言葉ですね!」


 返事も待たずにチャウ丸が得意げに叫ぶ。


「ダイエーホークスッ!」


 ちーん······


 斎蔵の扉では成功したが、今回の扉は無言。


 耳を澄ますと、向こうのほうから迫ってくる気配を感じた。


 たぶん妖術による壁の効力が切れて、敵兵たちがいっせいに近づいてきたのだろう。


「ちょいと、急いだほうがよかろうね」


 そしてキングは扉の前に立ち、両腕を天に掲げた。

 ヤギ耳がピクリと動き、場の空気が止まった。


 キングは祭壇の扉に向かってなにやらブツブツ言ってるが、それは聴こえない。

 特殊な呪文かなにかだろうか。


 そこでゴゴゴゴッと轟音が鳴り、縦に入っていたベロの刻印の亀裂が少しずつひらかれた。

  

 やった!

 さすがはキング様です!


「行きますぞ」


 キングがすき間から入り、おれたちもすぐあとに続く。

 一瞬だけ振り返ると、大勢の敵兵が剣を振りかぶり向かって来ているのが見えた。 

 

 やべえ、扉よすぐに閉まってくれ!!

 

 おれの願いが通じたのか(そんなはずないか)、くぐり抜けるとすぐに扉がゴゴゴと動きだした。 


 そのときだ――


 地面に強い震動が起きた。

 それは続けざまに地を揺らし、シャムりんがおれの腕にしがみつく。

 そして一陣の風が吹くや周囲にサーッと暗闇が広がり、やがてその中から不気味な光がぼわんと姿を現した。


 そこで信じ難いことが起こった。


 すき間のすぐそばまで迫っていたタンニシ兵たちが、断末魔の叫びをあげたのだ。


「ギャァァァァァ」


 そして訪れる禍々しく不穏な静寂。


「やはりおったかの······」


 ぼそりと言ったキングの声は、すぐにいびつな空気に飲み込まれる。


「だれがですか?」


 一瞬とも永遠とも取れる沈黙のあと、キングは言った。


「スメル元帥(げんすい)の登場じゃよ」

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