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第38話 地球につながる噴出口

地底が続いてますが、もうしばらくお付き合いください。

 おれたちは巨大なアリ塚にも見えるものを見上げた。 

 

 色は全体的に黒ずんでて、かなりの年季を感じさせる。


「噴出口は人間に惹かれるマガハラ大陸の者にとって希望の糸でもあり、人間学における研究対象となっております。ただどれだけ調べ尽くしても、噴出口の仕組みや原理はさっぱりわからんのです」


 ふーん、もしや大陸が出現した頃からあったりしたのかな。

 今はふさがってるのなら、行き来はできないってことか。


 たぶんおれたちの通路の犬小屋みたいなものなんだろう。

 地球とつながるあの犬小屋だって、どんな原理になってるのかさっぱりだもんな。

 

「こっちにいろいろあるわ!」

 

 そこでシャムりんが叫び、声のほうへ近づいていく。

 ただその様子を見て、足がピタリと止まった。

 遠くから盛り上がって見えたのは、まさにごみ(ジャンク)の山だったからだ。


「すげえ······」


 チャウ丸が声をこぼして慎重に近づいていき、おれもそろりと続く。


 たしかにすごいな······おいおいおい、まーじかよ。

 そこに見えたのは――


 ラグビーボール、スキー板、アイロン、コーヒーメーカー、電動自転車のバッテリー、キックボード、ボクシングのグローブ――


 あれって、有名な駅伝の(たすき)だよね?

 学校名はくすんで見えづらいが、たぶんまちがいないだろう。

 あの駅伝、お正月のとき機嫌のいいパパが気前よく家に上げてくれてチラッと見たんだよね。

 

 にしてもどれもこれも、現代の人間界にありそうなものばかりだな。

 なんでこんなところに?


「あの噴出口からあふれ出てきたわけですな」


 それって、噴火みたいに飛び出てきたってこと?


 もしかしたら嗅商王国で見かけた人間界の品々も、こういった噴出口から飛び出てきたものを回収したんじゃないか。


「これらを売ったら、なかなかのオカネになるんじゃない?」と小声でシャムりん。


「でもゴールデンカカオを見つけたほうが、億万長者の近道だな」とチャウ丸。


 キングが近づいてきて言った。

「ヤメーメにはもともと人間界とのルートがいくつもあったと言われております。これもその一つ。だからこそ、どの国もこのあたりを狙っておるわけです」


「でも蔵への入り口はいつも、完全に閉ざしているんですよね?」


「聴覚波の結界も張っております」


 てことは、あのときキングが体育倉庫の前でブツブツ唱えてたのは、結界を解く呪文みたいなものだったってことかな。


 やはりだれもが簡単に侵入できないよう、蔵の鍵だけではないセキュリティが張られていたわけね。


「ただ、ほかの場所からここに潜入することもできなくはないでしょうな。今のところ、そういった痕跡は見つかっておらんわけですが」


 なるほどなぁ······謎すぎるぜ、この大陸······。


「おいタタロオ、ケータイ落ちてるぞ」

「もらっておけば?」


 拾いあげると、たしかにそれは少し傷んでいるが、どう見ても携帯電話だ。

 ただこれってスマホじゃなく、いわゆるガラケーって呼ばれてるやつだよね?

 

 まあせっかくだし、もらっとこっかな。

 

 こうやって触れてみると、なんだかテンションあがるな。

 飼い主のジーコはスマホさえあれば、ほかには何もいらんぜ精神だったもんな。

 まあ地球でのおれも散歩行くのさえ〝しゃらくせえ〟って感じだし、なんだかんだジーコとは似た者同士なのかもね。


「あたしはコレ!」

 シャムりんが手に取ったのはアイロンブラシだ。

 さては髪のお手入れにってわけね?


「これも入れといてよ」とブランドものっぽいバッグも拾いチャウ丸に差し出す。


 おっ、チャウ丸はすでにいろいろ拾って風呂敷に入れてるな。

 さすがガラクタ帝王、抜け目がないぜ。


「わしもよろしいですかな」


 あれっ、キングも何かご興味が?

 

 その手にはDVDのケースがにぎられてある。

 ジャケットに見えるのは、ドラゴン······ああ、カンフー映画かなにかかな。


 キングの表情はどことなくうれしそうだ。

 どうやら地球の作品ソフトには目がないらしい。

 根っからお好きなんでしょうね。


 ヘルツさんが拾ったDVDを風呂敷に収めてから我々は出発。


 道は下りから平坦になったが、ところどころゴツゴツしていて、けっして歩きやすいわけじゃない。


「あれは砂金じゃないか?」と何かに気づいた様子のチャウ丸。

 たしかに視線の先にはキラキラと光るものが。


「ただ、ああいったものはヤメーメではほとんど価値がありません」


 キングは見向きもせずに素通り。


 ふーん、あいかわらずこっちの世界の価値基準がいまいちよくわからんな。

 金の延べ棒だってガラクタ扱いだったし。


 こんだけ砂金が転がってるのを地球の人間が見たら、目の色変えて飛びついてくるんじゃないかな。


 おれだって試しに一度、ラッパーみたいに首からジャラジャラ、ゴールドをぶら下げてみたいもん。

 まあだいぶ似合わんだろうけどね(hey! yo-yo- bow-wow)。 


 あそこに見えるのは黒曜石だな。

 黒曜石は砕くと鋭い刃が得られるから、昔の人はここから採取して武器を作ったのかもね。


「あれはなんですか?」

「おそらく地底人の化石ですよ。ふぉっふぉっ」


 なにがそんなにおかしいのかしらん。

 その不気味な物体におれたちは閉口。

 なんかマガハラ大陸の地下、いろいろ出てくるな。

 もう、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってきてるぞ。

 

 にしても岩の中にめり込んだその姿は、失恋して落ち込む河童みたいで、見てるだけで切なくなるな。


 その後もわけのわからん地下を進むこと、たぶん一時間やそこら。


「ようやく見えてきましたな」とヘルツさんが晴ればれと言った。

 

 おー、やっとですか。

 ここまでだいぶ長かったぜ。

 体育会系の遠足じゃあるまいし、脚だってパンパンだよ。


 おれたちは疲れた顔を上げて前方に目を向ける。


 そして目ん玉がビョンッと飛び出そうになった。


「おおっ!」

「なに?」


 ············おい。

 ······

 こ、こ、これはアカンですぞ。


 おれの心臓はブルリと震えたよ。

 だってそこには超巨大な岩壁がそびえ立ち、それはそれは厳めしい顔をした岩が見えたからだ。


「人間?」

「化け物?」


 たしかに何にでも見えるな。

 世界一でかい鳥の唐揚げだと言われても、妙に納得しそうだもん。

 とにかく顔が怖すぎるんだ。

 どうやったら、あんなに怖い岩を彫ることができるんだ?

 

 するとキングは、さらにおれたちを驚かせることを口にした。


「あれは作り物ではなく、実在した生物なのですよ」


 ま、ま、マジすか············。 


 地底人の巨大化石みたいなこと? 

 あんなでかい顔の生き物がこの世にいるのかよ? 


 そんじょそこらの巨人なんてレベルじゃないぞ。

 顔があのサイズだったら、おそらく全長はタワマン以上じゃないか?


「胴体はあの中に埋まっており、我々の神具を護ってくれているわけです」


 ひえぇぇぇ。

 こりゃ、とんでもない場所に来ちまったな。

 まだちびってないだけ、自分をほめてあげたいくらいだよ。


 おれはビクビクしながら、その大大大巨人の顔の扉へと近づいていったのだった。

納豆に砂糖を入れると美味しいですよね。

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