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第32話 恋の予感······?

お待ちかね?の回です(個人的に)

 翌日、犬小屋から暗闇を通ってマガハラ大陸にある宿屋の物置部屋へ。

 もちろんふたたびおれたちは、異世界仕様の人間様の姿だ。


 犬小屋を通過して一旦イヌの姿になっても、服の格好はそのままキープみたいだね(例の「ちんねんティーシャツ」です)。


「やっぱこのカラダのほうが気分上がるな」

「同感ね」

「まさしく」


 一度、人間の姿を覚えてしまったら、どんな動物だって中毒で抜け出せなくなるんじゃないかな。

 これぞ人間中毒(ヒューマンジャンキー)

 それくらい、この手も脚も愛おしく感じるからね。


「ただもっと上腕筋をつけないとな。そうだな、あんな感じがいいな。ほら米国で知事もやってたマッチョの映画俳優がいただろ? なんだったかな、シュワッとビネガーみたいな名前だったと思うが、タタロオわかる?」


「うーん······」


 その人ってたしか腕相撲の映画にも出てなかったっけ······シルバニア・タタローン?······いや、そっちは違うマッチョか······うーん、いったいぜんたい、わっかんない。

 ジーコの脳とのフュージョンで、記憶もだいぶスクランブルしてるらしい。


「あたしは目元をもっと華やかにしたいわ。黒目を大きくできないかしら」


 シャムりんは部屋の鏡を見ながらブラシで睫毛をいじり、こう続ける。


「タタロオ、あのお城にステキな王子様はいないの?」


「お年をめした王様しか知らないよ」


 シャムりんは何も答えず、チャウ丸が言った。


「いよいよヤメーメのお宝拝見だな。その前にここ出たら腹を満たしとこうぜ。まだこっちのメシをしっかり堪能してないからな」


 たしかに異世界グルメは楽しんでおきたいところだね。


 そしておれたちは階段をおりて一階へ。

 宿の支払いに行ったら、カンポさんからこう言われた。


嗅商(きゅうしょう)の輩をコテンパンに退治したことは、お聞きしてますぞ」


 いやいや、カンポさん、そりゃ言い過ぎですって。

 ほんとこういう時は、どんな顔をすればいいかわかんなくなるわ。


「ヤメーメの未来はあなた方に懸かっていると言っても言い過ぎではない。ほんとは偉大なるあなた方から御代金を頂戴するのは畏れ多いのですが······」


「いえいえ、もちろん払いますよ」


 むしろ払わせてください、という気分だ。

 たいしたこともしてないのに、胡座(あぐら)はかきたくないからね。


 宿代を渡してカンポさんと離れ、宿を出発しようとしたとき、後ろから声をかけられた。


「タタロオさん」


 振り返ると、宿屋の娘のリナだ。

 あれ? そんな呼び方されてたっけ。


 澄んだブルーの瞳を向けるリナは、おれにすっと近づいてから言った。


「からだは無理してない?」


「うん、まあ」


 陽光が蜂蜜色の髪の毛をキラリと照らし、彼女はこう続ける。


「まさかあなたが伝説のマガハラ三銃士のエンペラー珍念様だったなんて知らなかったから」

 

 なんだかリナはモジモジしている。

 もちろんこんな様子のリナを見たのははじめてだ。


 どうやらリナも、あのとんでもな噂を耳にしたらしい。

 だからこんな不自然な態度になってしまってるのかな。

 しかもチラッとおれのティーシャツの文字見てたし(はずかし)。


 おれは前みたいにふつうに接したいけど、あの噂を聞いたとなれば、それもむずかしいのかな。

 こうなると困っちゃうんだよね。

 

「これまでヤメーメは他国からの襲撃に怯えて暮らしてきたけど、あなたがいるならもう安心ね。できればずっとここに泊まっていてほしいくらい」


「うん、これからもお世話になるよ」


「今日もみなさんでお出かけ?」

 リナは宿の玄関先にいるふたりに顔を向け、髪が揺れてほのかに薫る。


「ああ、この村けっこうたのしいからね」

「今度わたしも連れて行ってよ」と言われ、おれはうなずく。


 リナの様子からも、ふだんはお手伝いばかりでリフレッシュできてないんだろう。

 たまには気晴らしにパーッとやんないと、気分もささくれちゃうもんね。

 こっちの世界にカラオケとかゲーセンがあれば、またちょっとはちがうんだろうけど(あるはずないか)。


 おれが行こうとしたとき、リナが何かを差し出した。 


「はいこれ。気をつけて行ってきてください」


 それはどうやら手づくりの御守りらしい。


 おれはありがたく受け取り、先に行っていたふたりと合流。

 そこでシャムりんがサラッと言った。


「あの子、あなたにホの字みたいね」

 

 ???


「これだからニブいイヌは困るのよね。ちょっとした女子のしぐさでわかるものよ。今日は髪の毛もいつもと違ったし、(つや)めいた声だったじゃない。やったじゃんタタロオ、恋の予感ね」


 ············硬直カチン

 おれはなんとも言えず。

 ············

 ······

 まさかそんな······。

 あのかわいらしいリナが、お、お、おれなんかに?

 ······そんなことがあり得るのかな。

 

 異性のことに関してニブいのは認めるが、それはジーコの脳も影響していると思ってるんだけど。


 恋の予感ねえ······


 じゃあ、さっきのは()()()()()()()()()()ってこと?

 いや、ないっしょ?

 ダメダメ、そんな、アカンですよ。


 考えだすと、なんだか胸のあたりがソワソワするな。

 これも人間が持つ色とりどりの心の動きなんだろう。


(おいっジーコよ! なんかおれたち、モテてるかもしんないぞ!)


 なんて共有する脳に語りかけても、もちろん反応があるわけがない。


 いずれにせよ、ジーコにとって未体験ゾーン。

 まあおれも惚れた腫れたの恋愛事情は、スワヒリ語の不規則動詞の活用くらいによくわからんからな。


 守備範囲ではないことをあれこれ考えたとて取り越し苦労になりそうなので、ひとまずこのことは棚上げしとこう。

 妙な勘違いをして撃沈したら、それこそ立ち直れそうにないし。

 

 ということで、おれはリナからもらった御守りをポケットに収めた。

 やっぱり御守りは(あだ)やおろそかにできんよね、感謝感謝だ。


「いよいよヤメーメの蔵が開帳だな。どんなお宝を拝めることやら」


 声がはずむチャウ丸。

 そうだね、おれも気持ちを切り替えよっと。


 待ちに待ったヤメーメの宝物(ほうもつ)が眠る蔵に行くわけだし、こいつは楽しみになってきたな!

シルバニア・タタローンは、タタロオ、自分の名前に引っぱられてますよね笑

タタロオが着ているティーシャツは28話にあります。

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