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第3話 地球で飼い主とご対面

これがタタロオの暮らしぶりです。

 犬小屋から顔を出したおれの姿はやっぱりイヌだ。


 どうやら物置部屋から犬小屋までの暗闇を四つんばいで進んでいるとき、知らず知らずに戻っているらしい。

 なにそれって感じだけどね。 

 

 そんなおれの(アジト)はたとえ真冬でも屋外だし、ほとんど放し飼い状態さ。

 ひもだってつけられてないから、狭い庭の中をわりと自由に動けるのはまあいいんだがね。

 

 村山家にいるのはパパとママと高校生のジーコの三人で、サザ○さんの家みたいな平屋で暮らしてて、おれはその従犬(ペット)

 話によると、幼少期にジーコがイヌを飼いたいとねだり、パパが知人から産まれたてのおれを引き取って、共に暮らすようになったらしい。

 あたぼうだが、おれにはその記憶はないので、トーチャン、カーチャンの顔は知らんわけだ。

 まあイヌの世界じゃわりとアルアルなんだけどね。


 〈人間が親を選べないのと同じように、イヌがどんな飼い主にめぐり会うかもガチャで決まる〉


 当たり外れを判断するのは、自分しだいなのも同じだ。

 で、おれはどうなのよ? って話だが、じつはようわからん。

 

 犬小屋の前に見えるのは、プレートにのった村山家の残りメシだ。

 日替わり残りメシは、村山家の伝家の宝刀だからね。

 こんな御飯(おまんま)にありつけるだけでも、おれの境遇は当たりなのかな。

 ないものねだりも見苦しいし、そこは謙虚でありたいよね。


 どれどれ――おっと鳥の手羽先があるじゃないか。

 しかも二本も! 


 イヌに鳥の骨はよくないってどっかで聞いたことがあるが、村山家はそんなのおかまいなしで、おれもふだん気にせず食ってる。

 イヌを飼いたいと言いだしたジーコも、メシなんて適当でいいっしょ? って無頓着(むとんちゃく)なんだよね。


 まあおれも豪華なメシなんか噂でしか知らないし、タレの染み込んだ残りメシでじゅうぶん満足してるんだけど。

 日本は何百年も前から質素倹約を善とする精神が根づいてるらしいし、なんつーか、おれも見栄を張るより、質素なほうが気楽で好きなんだよね。

 ただ最近は物価高でみんなヒイヒイ言ってるって聞くから、おれの食費で迷惑もかけたくない。

 

 ということでムシャムシャムシャ――


 ふう、やっぱうめえわぁ。

 オーガニックの高級ドッグフードなんて洒落(シャレ)たもんはゴメンだぜ。

 なぜならおれはロックなイヌだからな、なんてね。


 たんに残飯しかもらえない哀れな飼い犬にすぎないんすわ。

 王室で飼われるイヌとまでは言わないが、おれもちっとはスポットライトを浴びてみたいもんだ。


 〈ぜいたくは言わん、ほんのちょびっとまわりから大事にされたいだけなのさ〉


 その感じ、わかってもらえるかな?

 って、まあグチってもしかたないから、もっと現実的にならないとな。

 リナは地球の物だったら何でも換金できるって言ってたし、とりあえずこの鳥の骨を持って行くか。


 すると家のほうから、おれのご主人と言えよう飼い主のジーコがやって来た。

 高校の制服を着てるし、学校から帰ってきたばかりか。


「タタロオ、新居はどうだい?」

「くうん」


 ちっ。やっぱりイヌの姿に戻ったから、言葉が出てこないみたいだ。

 ほんとは

 “ジーコよ、この犬小屋おかしくないか?”

 って言いたいところなんだがね。


「これは俺の傑作だからな」とジーコは暢気(のんき)に屋根をポンポンやってる。


 ったく、どこがだよ。

 とんでもない世界につながってるぞ、と叫びたいくらいさ。


「散歩に行こうぜ」と言われたが、まだこっちはメシ食ったばかりだぜ?

 でも文句さえ出てきてくれないんだから、なんか哀しいよね······グスン(涙)。



 そして首にひもをつけられて、しぶしぶ路上へ出ることに。

 それでいつものとおり、折れ線グラフみたいにあっちこっちにマーキングってわけだ。

 べつに好きでやってるわけじゃないが、これをやらないと調子が出ないからね。


 にしても、リナって少女と話してるときも感じたことだが、どうもあの犬小屋を通過したことで、明らかに知識が増えた気がするんだよな。


 しかもイヌの姿に戻っても、人間界に関する知識が維持されてるみたいだもんな。

 人間の言葉だって、降って湧くように頭に浮かんでくる。


 そこで、しまりのないジーコの顔を見ていて、ふと(ひらめ)くものがあった。


  ――もしかして、犬小屋を建てたジーコの知識が頭に入ってきたんじゃないか――


 どうもおれはあのマガハラ大陸とやらを、ラノベの異世界的な感覚で見てしまうのだが、それってたぶんジーコの知識によるものなんじゃないのかな。

 だってジーコはアニメとゲームが大好きだし、ふだんからラノベばかり読んでるからね。

 今も手にスマホを持ってぽちぽちやってる(歩きスマホはあかんぞー、ワンッ)。


 当然だが、ラノベやスマホなんて知識は、モロにイヌだった頃はなかったもんな。

 ジーコは歴史に関しては生一本(きいっぽん)で異様に好きだから、人間の歴史にまつわる知識も入り込んできてるんだろう。


 ――うん、考えれば考えるほど、そうとしか思えんな。


 てことはイヌのおれの脳と、人間のジーコの脳がフュージョンしたってことか。

 だとしたら、すんげえな。


 〈まさか脳がフュージョンしたことで超イヌ的パワーを発揮する······〉


 なんてことはないよね。


 血統書付きのゴリゴリのエリートだったらまだしも、おれはチャリの泥よけバリにみじめな雑種だし。

 そしてジーコはモテない学生さんだ。


 〈そうかそうか。あっちの世界に行ったら変化する人間の姿は、ジーコがベースになっているわけね〉


 真相はともかく、我ながらナイス推測だ。


 たしかになーんかジーコの考えみたいなものも、うっすらと感じ取れるんだよな。

 欲求不満というか、満たされなさみたいな感じ?


 まあジーコは彼女がいるはずもない帰宅部だし、毎日が充実してるってタイプじゃないもんな。

 できれば別嬪(べっぴん)な彼女持ちのリア充美男子(イケメン)のほうがよかったが、まあ文句は言えまい。

 おれもへぼイヌだから、分をわきまえないとね。

 人間の姿になれただけ万々歳ということにしとこう。

 

 そんなジーコがじっとおれの顔を見て、「今日、調子わるいの?」と聞いてきた。

 ああ、絶不調だぜ。

 だってついさっきまで異世界にまぎれ込んでたんだからな! 

 といった説明も、もちろんできない。


 いろいろ考えごとしているから、いつもと違う感じが伝わったのかもな。

 ほんとは草むらを無邪気に走り回りたいもんだが、変に知識が増えたせいで余計な悩みまで抱え込んでしまったわけだ。


 てことはジーコもふだん、こんな感じでクヨクヨ考えたり悩んだりしてるってことか。


 〈ジーコよ、あんたのからだになってみて、よーくわかったよ〉


 これまでずいぶん孤独で、人生に退()()してて、いろんなことに()()()()してたんだな。


 人生は真帆片帆(まほかたほ)で、いいときとわるいときがあるみたいだから、めげずに元気だしていこーぜ。

 おれがジーコの分まであっちの世界で思いっきり楽しんでやるからな!

 

 ついテンションがあがって「ファオーンッ」と吠えたところで、「調子わるいみたいだし帰ろっか」と家へ戻ることになった。

 んだよ、せっかく気分のエンジンがかかってきたってのによ。


 まあ、おれもいろいろ考えすぎて脳の神経がショートしてるみたいだし、下手の考え休むに似たりで、ジーコの知識を得たからって調子に乗らないほうがいい。

 

 ということで、まだ黄昏時(たそがれどき)だが犬小屋の中でひと眠りだ。

 でもすぐに目が覚めちゃって、ここにいても退屈だし、おれはふたたび犬小屋の奥へ進んであっちの世界へ向かったわけだ。

 

 〈だってマガハラ大陸がどうなってるか、やっぱり気になるじゃない?〉

 

 人間様の脳は因果関係を認識する能力が進化し、予測する力に磨きがかかったというが、そんな高尚な脳でもマガハラ大陸のことはまったく予測がつかんからね。


 なんつったって、未知なる大陸のことを考えるだけでワクワクするもんなあ。

 人間が持つ好奇心、いとおかしだわ。


 まずはヤメーメ王国のキングとやらに会ってみるとしますか!

この前、カラスとケンカする子犬を見かけました笑

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