第28話 服を新調しノーエフ商会へ(挿絵あり)
今日はひさびさ日曜日休みなので午前中に更新。
《出禁の書》をバーのマスターに返して一息ついたあと、おれたちは店を出て解体屋(「ノーエフ商会」という名前だ)に行くことにした。
蔵の鍵を取り戻した報告に行く前に、とりあえずキングから預かっているマジックボックスを空にしておいたほうがいいだろうということになったのだ。
村の通りを歩いていても、あっちこっちで声をかけられるんだから、スポーツの世界大会で結果を出して帰国した選手みたいだな。
なんだか身に余る気分だよ。
「前よりヤメーメに活気が出てきたんじゃないか?」
チャウ丸が言うとおり、それはまちがいないだろう。
伝説の三銃士の噂の影響が、良い形で出ているのかもしれない。
なんにせよ、元気がなかった人の活力が湧いてくる姿を見るのは気持ちがいいものだね。
ただ、彼らの格好は相変わらずいっとるな。
メガネの探偵漫画のキャラだったり、有名戦士ものだったり······うっ、あのトラ柄、露出すげえな(『うるさいヒトら』だったっけ?)。
たしかこのコスプレは、以前地球に流れ込んできた作品のソフトに影響されたものって話だったが、そのソフトは今どこにあるんだ?
ここより洗練した嗅商王国には、あんな奇抜な格好はひとりもいなかったもんな。
そこは嗅商を見習ってもいいのではとも思うが、まあこれもヤメーメの個性なんだし、好きなものを爆走してもらえばいいか。
すると服屋の主人がイタチ顔の半笑いで近づいてきた。
「嗅商に乗り込んで敵を一掃したなんて、さすがはチンネン様」
「タタロオでいいよ」
んもうっ、どんな噂を聞きつけたのやらだ。
「この前は却下されましたので、今回はタタロオ様のご注文どおりに仕上げましたよ」
注文? なんのことだ?
そこで服屋は袋から取り出したものをバッと広げた。
ううっ、また手づくりティーシャツか······。
しかもこれって······。
まさか世界的にも超有名な戦闘漫画のキャラの······じゃないよね?
しかも、ちんねん······。
もちろんおれが伝説の三銃士の「エンペラー珍念」だと思い込んでのことだろう。
服屋のデザイン解説によると、おれが使う秘術の噂をもとに聴覚を駆使して浮かんできた像を形にしたのだとか。
なるほど······とはならないが、まあ、うん······(汗)、って感じだ。
なんかおれ、飼い主がフンを処理する姿を眺めるときみたいな目つきになってない?
そもそもおれの〝コカン魔殺砲〟は、名前が似た超有名戦士が使う技とはまったくの別物だし、あくまでふと連想してしまう程度のものですからね。
そんな連想さえも、本場の方々にはほんと申し訳ないと思っているんですから。
まあおれなんかがこっそり類似名の技を発動したところで、一ミクロンも地球のだれかに影響を与えることはないだろうけど、礼儀の問題としてね。
「タタロオ、いいじゃない。着替えたら?」
「いいかげんリーマンみたいな格好も飽きただろ?」
ふたりに言われ、自分の服に目を向ける。
たしかに営業で先方の失礼にならない程度の格好だもんな。
とか考えてたらチャウ丸にシャツを脱がされ、着せ替え人形みたいにティーシャツを着ることに。
「この絵柄はようわからんが、似合う似合う」
袖なしライダースを着こなすチャウ丸様に褒められたのだから、きっといいこともあるだろう。
おれは自分の格好をじっと見る。
うーん······やっぱり名前がねえ······。
これじゃ自ら三銃士の名前を宣伝してるようなもんじゃないか。
まあワイシャツは走り回ってボロボロになったし、不都合があればまた着替えればいいもんな。
シャムりんとちがいおれは何着ても着映えしないが、気分転換ということで前向きに考えることにするか。
服屋にはいちおう礼を言い(注文はしてませんよ)、ステキなデザインのシャツをこれ以上作らないよう丁寧に釘をさしたところで、おれたちは解体屋の「ノーエフ商会」へ。
すると到着するや、パンチパーマの店の主人がひと言。
「百の魔物をほとんど一瞬で制したそうですね」
どうやらこの国の民は、噂を肥大化させるのが三度のメシより好きみたいだね。
ったく世間の口に戸は立てられないっていうか、噂の伝染っぷりにはまいっちゃうよね。
そうなると、三銃士や伝説の大陸の話も、噂を盛りまくったんじゃないかと疑わしくなるもんだ。
前と同じ要領で、ティッシュ箱みたいなマジックボックスから魔物を出していく。
原寸大で出てきた死骸の姿に、主人のノーエフさんはようやくプロの目になって仕事に取りかかる。
「ルンサフロッグですか。Bランクの魔物をいとも簡単に仕留めるとは、さすがでございます」
いとも簡単って······
まるで現場を見たかのような言い方だが、こっちは死にそうでしたよ?
けっきょくルンサフロッグの肉がヤメー4枚、外殻が3枚、アンダーヘアみたいな毛髪が2枚になった。
解体もろもろはもちろん任せるとして、おれたちは銅貨を受け取ったその足で両替所の「質屋オフスプ」へ。
やはりここの主人も興奮して最初は何言ってるかわからなかったが(「三銃士様、○£△$☆♯□♭◇」)、嗅商王国で売り損ねた腕時計を出したらようやく平静に戻った。
嗅商で価値なしと突っぱねられたから、ここで挽回しときたいところだ。
「1ヤメーですね」
んだよ、ここでもたいしたことないじゃんかよ。
時計の刻印を読むと〈オメカ〉と書かれてあるが、これってブランドもんじゃなかったっけ?
そこでシャムりんが嘆き声をもらした。
「あーあ、こんなになっちゃった」
彼女がポーチから出したのは、以前おれがあげたお姫様の人形。
たしかに新品のときに比べれば、いくらか生地がほころんでいる。
たぶん動き回ったことでいろいろぶつけて、傷んでしまったのだろう。
「売っちゃえば?」とおれが言っても、シャムりんは渋い顔だ。
そこで興味を示した両替商のオフスプさんが、人形をつぶさに調べる。
「こ、これはすごいですぞ······こちらは嗅商の品ですか?」
もともとの私物だと説明したら、オフスプさんは「もしや······」と口にして「少しお預かりしてもいいでしょうか」と言ってから店の奥に引っ込んだ。
しばらくして戻ってくると、青ざめ顔で述べた。
「これにはとてつもない魔力が宿っているみたいです」
「えっ、そうなの?」
どうもテーマパークの地下に溢れる魔波を通過したことで、特殊な力を取り込んだのではないかとのこと。
あるいはチャウ丸の風呂敷みたいに、犬小屋を通過したときに特殊な力が宿ったことも考えられる。
「だったら、いくらになるんだい?」と期待する顔のチャウ丸。
「これは売らないわ」とシャムりんは人形を引っ込める。
彼女の様子からも、たぶん心底気に入っているのだろう。
魔力が宿ったからというのもあるだろうけど、物を大事にするシャムりん、ステキっす。
ついでに嗅商王国の貨幣も両替してもらい、ここであらためて所持金を整理したら、三人で300ヤメーほどになった。
日本円で三十万円くらいだから、たぶん地球でいろいろ買えるよね?(ジャーキーとかフリスビーとかカミカミボールとか)。
ヤメーメの物価でもなんとかなる額だろうし、これでしばらくやっていくか。
人間だったら別々で管理するところだろうけど、ふたりとも散財派だと自覚してて、管理はおれに任せると言ってくれてるので、おれが国の歳入と歳出を調整する財務省みたいな役割を担っていくわけだ。
ジーコはお年玉が手元から離れるのを嫌って銀行に預けず、机の鍵の引き出しに保管してるくらいだし、お金に敏感な性格をおれも引き継いでるのかな。
ということで、おれたちは城へ向かってみることにした。
蔵の鍵を渡せば、ようやくキングも安心するだろうからね。
魔物のルンサフロッグと、ベ○ザブロック、なんか似てますね、、(たまたまです)。
あとティーシャツは当番組のホームページで販売しています(冗談です)。




