第24話 鍵を追え!マウヤケ草原を爆走
なろうで書いてる作家さん方のモチベはほんとすごい。
馬車に乗り込む前にあたりを探したが、どこではぐれたのやら、ウサ坊主は見あたらなかった。
「だいじょうぶかしら」
「おいらたちよりはこの辺に詳しいだろうし、なんとかなるだろ。モタモタしてたらスメル元帥を逃がしてしまうぞ」
馬車に乗っているあいだも注意深くまわりを見たが、やはりウサ坊主の姿はない。
ウサさん、スミマセン!
無事の幸運を祈ってます!
嗅商王国の町を出ると、馬車は一気に加速した。
「このペースなら追いつけるかもしれないわ」
「チャウ丸、どう? 匂いの気配ある?」
「うーん。風のせいでわかりづれえな。でもヤメーメに向かっているのはまちがいない。よーし、とばせ! とばせぇ!」
ただ――
ギギィィィィィ。
快調な走りだった馬が、とつぜん急ブレーキ。
からだが慣性の法則で前方へ吹っ飛びそうになるのを必死で耐える。
「おい、どうしたんだよ?」と前をのぞき見るチャウ丸。
もちろん馬は無言だ。
今さらながらこの馬車、御者もいなかったな。
けっきょく駄馬は千鳥足のサラリーマンみたいにふらついたあと走るのをやめてしまい、草原のど真ん中で座り込んでしまった。
「ったくなんだよ、高い金払ったのに、これじゃ詐欺じゃねえかよ」
「また長い距離を歩いたら、足がダイコンになっちゃうわ」
とぼとぼと何もない草原を歩いていると、後ろのほうから覚えのある声が。
「おーい!」
振り返ると――。
おおっ、ウサさんやないかーい!
ハア、ハア、ハア······息を整えるウサ坊主。
「置いていくなんて、ひどいです(ぐすっ)」
「すまん。これでもけっこう探したんだけどな」
チャウ丸は頭をポリポリやってる。
ともあれ、ウサさん、無事でよかったわ。
「馬車を借りたんですか?」
おそらくここに来るまでの途中で見かけたのだろう。
「ポンコツだったけどね」
そして四人そろったおれたちは、ふたたびヤメーメの村へ向けて歩きはじめた。
川を渡ったあたりで、ウサ坊主が言った。
「なんだか行きとは様子がちがいますね」
「そお?」
それほど変わらないように思うんだけど。
「じつはこのあたりは香族がけっこう出るんです」と深刻そうに言うウサ坊主。
「それって味方なの?」
「時と場合によりけりです。まあ山賊みたいなものでしょうか」
なんだよそれ、怖いじゃないですか。
おそらく以前ヤメーメに乗り込んできた蛮族のたぐいなんだろう。
そう思ってたら、まもなくして前方から黒い大群が接近してくるのが見えた。
「あれは?」
「敵ですね」
「ずいぶんあっさり言うねえ」とチャウ丸。
マジか、ほんとに予告どおりじゃないかよ。
その姿がどんどんあらわになってきたんだから、気の小さいおれの心臓はケトルドラムほどにドンドコだ。
あんな多勢でも、見た目だけ大げさな張り子の虎だったらいいんですけどね。
「あらあら、化け物のオンパレードかい」
チャウ丸も言うように、ゾンビ風のケモノもいれば、全身に包帯を巻いたミイラ獣もいる。
スキーのジャンプ台みたいに顎が突き出た者もいるが、どれもこれも獣人だから、やはり嗅商王国の連中なんだろうな。
なんだアレ?
年老いたチーターみたいなのが、ヘンなのに乗って何かを叫んでるぞ。
「われらは上杉軍だぁ!」
でたよ、以前のヤツらと同様の人間界かぶれ······。
「やだ、後ろからも集団が来たわよ」
「あれは毛利軍と伊達軍ですね。だてに徒党を組んでるわけじゃありません」
ウサさん、そういう言葉あそび、いらないっスヨ。
もう、ここは戦国時代かっての。
どちらの集団も馬車を改造したような巨大な戦車風の乗り物を操り、獣人×20はいるのがわかる。
その乗り物といったら、つつましい一家であればなんとか暮らせそうなくらいにデカいのだから、草原に浮かぶ戦艦のようにも見える。
そしていかにもチンパンジーっぽいヤツが、先頭で家紋を真似た旗を振ってやがる。
チンパンジーは他の猿を殺して食べるというが、アイツも見るからに野蛮そうだな。
すると何かがこっちに目がけて飛んできた。
ドォーーンッッ!!
バシャャーーン!!
············
「あれはスメル攻撃です」
「するめ攻撃?」
「匂いの魔力で仕掛けてくるんです」
事実、それは巨大なイカの足にしか見えず、乗り物から伸びて地面をひっきりなしに打っている。
スメルってより、まさにスルメじゃないか。
ちょ、ちょ、ちょ、待て待て!
ドッスン、バッタンと地鳴りがすごい。
あんなのに打たれたらミミズ腫れじゃすまねえぞ、一発でアウトだ。
なんとか一矢報いたいところだが、どうも手が出せねえ。
「こっちも魔術で応戦すっか」
と、そこでチャウ丸が武術の達人ばりに両足を広げたポーズ。
その両手には、なにやら物騒な銃身のあるもの。
バンバンバンバン――
おお、機関銃そっくりじゃないか。
でもそれってべつに魔術ではないよね?
と思ってたら、千個のフラッシュが同時に焚かれたくらいまぶしい光が放射状に広がり、その光弾が敵陣の乗り物を連続的に攻撃した。
すっげえ、弾が生きてるみてえだ!
さらなる連射により、上杉軍(自称)の乗り物は破壊。
香族たちが草原に高々と吹っ飛んだ。
しかも今度はシャムりんがレオタードの手ぬぐいをひるがえしながら妖艶に回転。
その遠心力によるものか、地面の草がぶわっと揺れ、次の瞬間には毛利軍の上空から光の雨が降り注いだ。
ガガガガガガンッー―
ど、どーなってんだよ?
「セクシーボンバヘッドセブンよ」
すごいネーミングだが自前か? シックスもあるの?
まあ、毛利軍の香族も阿鼻叫喚の様子だから、こうなったらなんでもいいぜ!
「さあ、こっちです」
ウサ坊主が声をあげ、おれたちは岩場のほうへ。
そのあいだもダイオウイカみたいな改造車から、スルメの鞭が地面をバシバシ叩いてくる。
「あれは嗅商王国きっての戦闘魔車で、あの鞭には嗅魔力が施されていて、城壁を一撃で壊すくらいの破壊力があると思います」
ガチでアカンやつやん!
たぶん改造車に魔力を注いだ代物なんだろうな。
「むほぉぉぉぉぉ!」
「ぶりゃゃゃゃゃ!」
「ぎゃばぁぁぁぁ!」
大勢の香族たちから届くうなり声。
次の瞬間、すぐそばでドォォーンッ!!
ラクダ色のものすごい煙があがり、視界が一気に閉ざされた。
「あれは臭い玉です。当たったら最後です」
「どう最後なんだよ?」チャウ丸の声は裏返っている。
「服に強烈な臭いが染み込み、それにより嗅魔エネルギーのエントロピー増大で揮発性低分子の結びつきが弱くなることで全身の細胞を粉々に切断し、最後は分解されて土に還ることになります」
丁寧なご説明ありがとうございます。
でもウサさんや、それって最悪すぎますよね。
今年死んだら来年は死なないでいいって言ったのはシェイクスピアだっけ?
なんにせよ、魔の匂いに細胞をぶった斬られて死ぬなんて、ぜったいにDon’tですよ。
そんな煙がそこかしこでバンバンあがっている。
あんなの、よけて逃げれるのかよ。
「しかも聴毒も起きはじめました!」
······ああはいはい、脳をむしばむ植物ね······正式な成分は覚えてませんよ。
耳をふさぐんでしたっけ? そんな余裕ないんですけど。
「ぐえっ、鼻が曲がりそうだ」
「鼻がもげそう」
たぶんこの植物は進化の方向性をしくじった大バカ者なんだろうな。
臭すぎて、食べたものがすべて出てきそうだ。
オエッ、口に何か入ったぞ!
ペッペッ! もぉ、サイアクだよ!
そこで――
な、なんだ、この音は――
それは地面から湧き出るように鳴り響き、鼓膜を生ぬるく包み込む――
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪
마음 약해서해각 チャチモッテッテー 잡지 못했네돌아 トラソドクウサァラー 그 사람 혼자 남으니 쓸 ホンジャラノニィ 허생각 ウニョレリレェ 얼약해각 ネィマン 길을 앞 ホチョラレヨォ 려생못네돌아생각잡지
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪
支離滅裂なメロディーの連なりに、頭が一気に乱れてきた。
しかも敵の魔車が巨大な鞭をどんどん振りおろしてくる。
ただ図体がデカいからか、動きがじゃっかん鈍いのが弱点だ。
「一気に駆け抜けましょう。村に近づけば、聴覚波の結界で侵入を防ぐことができます!」
結界がどんな仕組みになっているかはわからんが、死に物狂いでダッシュだ。
おれたちは二キロほどの距離を、なりふりかまわず走った。
イヌだった頃は走るのは苦手じゃなかったはずだが、すでに肺がぶっ潰れそうだ。
心臓だって、華やかにでんぐり返りそうだよ。
気息奄々でようやく村の柵を越えたところで、「ここならもう、だいじょうぶでしょう」とウサ坊主が言った。
こっちはちっともだいじょうぶじゃないですぞ――ゲホッ。
途中からずっとチャウ丸に担がれていたシャムりんは、余裕の表情で鏡をのぞいて髪の毛を整え、服に何かを吹きかけている。
「なにそれ?」
「消臭スプレーよ」(消臭用品でおなじみの某社名がドン!)
ねえさん、えーの、持ってるやないの。
けっきょくおれもスプレーを貸してもらい、服についた腐臭を必死で落とした。
ったく、スーツについた臭いを落とす飲み会帰りのリーマンかよって。
そしておれたちは、よせばいいのに懲りずにスメル元帥を探しに行くわけだ。
タバコのにおいとか、めちゃつきますよね笑。最近めっきりですけど。




