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第21話 めおとチックな魔物と戦闘

乙女座の人はムダを嫌うので恋愛に慎重。

「おいアイツら、ヤバそうじゃないか?」


 どうやらチャウ丸もバッチリ前方の魔物をとらえたみたいだね。

 数匹いるアチラさんも、こっちに気づいたのがわかった。


 あーあ、万事休すだ。

 バンジーしながら急須ごと茶をガブ飲みしたい気分だよ、ほんと。


 そこでウサ坊主が口を開く。


「ご存知かもしれませんが、あれはメオトチックジャッカ(夫婦ふうの獣)ルですね。大むかしに魔波が宿ったことで凶暴化した固有種と聞きます」

 もちろんあんな生き物は初めて見たが、大きさはテレビなんかで見るジャッカルとそう変わらない。 


 2体ずつまとまってるのは、仲睦まじいご夫婦だから?


 ジャッカルはイヌ科ということもあり、親戚のおじさんの孫みたいな微妙な親近感を感じるから不思議だ。

 ほとんどの哺乳類は百万年程度で絶滅するらしいが、魔を宿した生き物の生存能力はいかほどなんだろうね。


「とりあえずやっつけておきますか?」とウサ坊主。

 

 お〜い、簡単に言うなよなー。

 おれたちのことを伝説の三銃士だと思い込んでるから“この程度ならチョロいでしょ”ってことなのかい?

 

 こんな時は即刻、三銃士の勘違いを正したくなるものだが、時すでに遅しだよね。


 敵と会ったが百年目、逃げ切るのはむずかしそうだ。


「おいらが出るまでもないな」

「あたしは歩き疲れてるわ」


 おいおい、ふたりとも戦う気ゼロじゃんかよ。

 そりゃ、おれだってやりたくないよ。


「さあさあ」と酒でも勧める感じでウサ坊主に言われたところで、メオトチックジャッカルが数匹、こっちに近づいてきた。


「早くしないと、仕掛けてくるぞ」 


 あいあい、わかりましたよ。

 へっぴり腰になってるのが自分でもわかるが、敵は見るからに獰猛そうだし、イヌっぽくて親近感があるとはいえ情け容赦は無用で気を強く持たないとな。


 で、えーっと······例のヤツを逆から唱えるんだったよね。

 おれは《出禁の書》の説明にあったとおり木枝を拾い、ドキドキしながら照準を一匹に合わせると、勇を鼓して枝を振りおろした。


「ウポッサマンカコ!!!」


 ······あれ? 反応なくない? 


「おい、真面目にやれよ」

「珍念様、しっかり!」

 いや、ウサ坊主さん、おれはタタロオですから。


 そこで牙むき出しのジャッカルが急接近してきた。

 うわ、めっちゃすばやいっ!


「ウポッサ――」


 ドゥヴァッ!


 おっ、おいっ、何が起こった?


 見ると、すぐそばで魔のジャッカルが痙攣(けいれん)しながら倒れている。


 そしてチャウ丸の銃口から煙を吹くピストル。


 さらに接近してきた別のジャッカルに、シャムりんが手をかざす。


 次の瞬間、ヒュィィィィーッと妙な声をあげて宙に吹っ飛ぶ魔のジャッカル。

 

 すっご············。

 

 いいなあ、シャムりんは無詠唱でいけるんだね。

 ズルいよ、ズルいよ。

 おれなんて逆側から叫ぶんだよ?

 

 おれたちがソロリと踏み出すと、ほかのジャッカルたちはビビったのか草葉の中に消えていった。


「これ、どうする? 売れるかな」と眉を曲げながらチャウ丸。


 目の前にあるのは、死骸 without ドロップアイテムてところだ。


 以前、村で聞いた話だと、たまに魔物からドロップアイテムを得ることもあるらしい。

 まさにゲームみたいだなと思うのも、もちろんジーコのフィクション経験値によるものだ。

 

 ただ死んでるとはいえ、ぶっとい足の二匹の動物を町まで運ぶのは無理があるぞ。

 チャウ丸の風呂敷にも入るサイズじゃないもんな。

 

 そこでウサ坊主が言った。

「じつはキングからこれを預かってきておりましてね――」

 

 袋から取り出したのは、ボックスティッシュくらいの紙の箱。

 

 ていうか、ボックスティッシュだよね?

 

 半透明のセロファンついてるし。

 両側に〝折りたたんでね〟の穴あるし。


「ヤメーメに伝わる魔道具で、マジックボックスです」


 魔道具······マジすか。

 ウサ坊主の説明によると、魔道具とはこの大陸にある魔波をエネルギー転換して意図的に宿すか、超自然的な力で宿るかして、特殊な機能がそなわったものらしい。 

 てことは、人間界に憧れて手に入れたか作ったボックスティッシュに、魔の力が宿ったってことかな?

 

 その箱は、やや使い込まれた感があるが、手入れは行きとどいて清潔感はある。


 で、これに入れるってこと?

 サイズ感が全然ちがうけど、こんなデカいものをどうやって?――


 備え付けの細長い棒も渡されたが、それ以上の説明はなし。

 たぶんウサ坊主も使い方は知らないのだろう。


「指揮棒なんじゃないの?」


 なんで魔物の死骸を前に棒を振って演奏するんだよ?

 チャウ丸のとんちんかんな発言は無視して、頭を働かせる。


 うーん······突ついてみっか――ツンツン。


 ······何も起こらず。 


 試しに棒の先をマジックボックスと呼ばれる箱の中にあててみた――

 

 と、次の瞬間には、メオトチックジャッカルの姿がなくなっているではないか!

 

 えっ、えっ、えっ······ウッソだあ? 

 

 まさかパソコンでファイルをフォルダに移動したみたいに、箱に入ったってこと?


「すごぉい!」

「まさにマジックじゃないかよ!」


 おれは仰天しながら、もう一匹にも同じ動作をやってみる。

 

 すると魔物がパッと消えた。

 おおっ······やっぱり箱の中に入ってるってことか。


「これならいくらでも運べるな」


 マジックボックスの重量も変わってないから、たしかに持ち運びも便利だ。

 ただ手持ちだと邪魔なので、これはチャウ丸の風呂敷に入れといてもらうことにする。


「いやあ、キングも気が利くねえ」とチャウ丸。


 こんな貴重なものを授けてくれたということは、それなりには信用してくれてるってことなんだろう。

 

 あるいはおれたちにこの品を渡して、扱い方で善悪を評価するリトマス試験紙的な意味合いがあるのかも·····と考えるのは穿(うが)ちすぎか。

 なんにせよ、授かりものは大切に扱うに越したことがないよね。

 

 仕留めた魔物を収めたマジックボックスを手にしたおれたち。

 ふたたび歩き出したら、まもなくして遠くに町が見えてきた。


「あそこが嗅商(きゅうしょう)王国です」とウサ坊主。

「ずいぶん栄えてるんだな」


 たしかにヤメーメ王国と比べるまでもなく、町が発展しているのが遠目でもわかる。


 嗅覚信仰をもつ王国か······。


 ヤメーメは聴覚を信仰してるわけだから、宗教戦争みたいな側面もあったりしないのかな。


「おいしいものでも食べてショッピングをたのしみましょ♪」


 いいなあ、シャムりんの女子っぽさ。

 おれももっと肩の力を抜かないとな。


「嗅商の者たちの人間への憧れは、我々以上かもしれませんね。そのぶん貪欲と言いますか、気を抜けない相手でもありますので、慎重に情報を集めていきましょう」


「ところであなたは行ったことがあるんだよね?」

「過去に一度だけ」


 おいおい、だいじょうぶかよ。

 でも代表して同行に選ばれるくらいだから、きっとヤメーメの民の多くは行ったこともないのだろう。

 この前、嗅商の蛮族と衝突したばっかだし、町に入るや袋だたき(リンチ)を浴びるなんてことはないよね?


 どこか観光気分のチャウ丸とシャムりんの後ろを歩きながら「とにかく無理はしないようにしよう」というおれの声は、むなしく風に運ばれた。


 そしていよいよ近づいてきた嗅商王国。

 ウサ坊主も言っていたように、ここは慎重に情報を収集していかないとな。

 ヤバかったらダッシュで逃げるべし!


 おれたちは、にぎやかな雰囲気が漂う嗅商王国に踏み入れていったのだった。


どなたかクシャミを止めるコツご存知ですか、、、ブシュンッ!

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