第16話 ヤメーメ王国の変神(?)
誰にも読んでもらえないだろうと思っていただけに······みなさん、ありがとうございます!
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「戦闘の神ってなに?」
チャウ丸がクマ顔の大工の後ろから声をかける。
「ヤメーメで古くから祀られている偉大なお方です」
ふーん······戦いの神なら、日本で言えば八幡神みたいなことか。
たしかにテレビなんかでも、ジャングルの少数民族を訪ねると、独自の文化や信仰があったりするもんね。
ジーコは昔からテレビを見るのも好きだったみたいだし、いろんな知識がこの脳にインプットされてるのがわかるぜ。
チャウ丸がぶっ壊した納屋を横目に見ながら、一同は茂みの中を進んでいく。
すると開けた場所に巨木が見えた。
そこでは、何人かの民がゆらゆらとからだを揺らしながら拝んでいるではないか。
海底のワカメみたいな動きだが、アレどんな意味あんの?
クマ顔の大工が近づいていくと民の顔に驚きの色が広がったから、たぶん伝説の三銃士様のお出ましだとでも説明したんだろう。
あんなにうやうやしい目を向けられると、こっちだって恐縮しちゃうぜ。
そこでクマ顔の大工が振り返った。
「さあ、どうぞ。我らを守護する聴神様です」
人だかりをかきわけて進んだ先の大木では、ボロいアウトドア用の椅子に座った何か――。
サボテン? にも見えるが、干し上がったじいさんにも見える。
しかも、ミミ············デカっ!
顔に巨大なワンタンがへばりついてるみたいじゃないか。
「動いてるよな?」と目を細めるチャウ丸。
「もちろんですよ」とクマ顔。
えっ、生きた神様?
てっきり仏像的なものを拝んでいるのかと思ってたんだけど。
そんな干し上がったじいさんとバッチリ目が合ってしまった。
「苦しゅうない、近う寄れ」
ゲゲゲッ、しゃべったぞ······。
どうすんべ? と一瞬だけチャウ丸と目を合わせたあと、先におれが前に出る。
正面から見ると、それはほんとに干したダイコンに目鼻がついているって感じだった。
削って砂糖しょうゆで和えたらうまそうだな。
言わずもがな、こんな生物は地球にはいない。
年輪は一年に一枚ずつ増えるが、それをこのじいさんの顔のしわで言うなら五百歳はいってるな。
すると聴神様がそのシワシワの口を開いた。
「なんかくれ」
············ん?
「しょっぱいのがいいのお。しょっぱいのはないかね?」
············おれたち、たかられてないか?
そこでチャウ丸が風呂敷から、瓶詰めにした梅ぼしを取り出す。
おー、ちょうどいいもん、持ってんなあ。
それを差し出す前に、干からびたタマネギみたいな皮の腕がにゅーっと伸びてきた。
そして瓶をこじあけて、梅ぼしを口に放り込むじいさん。
「くぇぇぇぇ、しょっぱいのぉぉぉ」
その顔はなんだか満足げだ。そしてひと言。
「ブサイクちゃん、調子に乗らずキングに従いなさい」
しっしっ、と手で払われたのでそのまま退散。
キッツゥ、なんやねん、アイツ!
おれたちは呆然と顔を見合わせるのみだ。
“アイツ、ブサイクって言ったよな”みたいな目をしているチャウ丸。
そらそうだ、何者なのか知らんが、初対面の相手に無礼ですぞ。
「ま、そういうことです」とクマ顔の大工。
ど、どういうことだよ!
「聴神様は、もともと大木だったと言われています」
???????
「正確には、神様というより半分は今も植物で、古木からあのお姿になられたのだとか。すなわち聴神様の声は大陸の声なのです」
······つまり半神半木ってこと??
昔の日本人は巨石や巨岩に神が宿るとし、ご神体として祀ったが、そのたぐいと解釈していいのか。
でも戦闘の神というくらいだから、きっと強力な加護でこの村を見守ってきたのだろう。
そうとでも解釈せんと、オチの甘い四コマ漫画みたいにどうもスッキリせんよ。
おれはイヌからヒトの姿になったが、この世界では木から爺さんになることもあるのか?
謎だ······頭の中の糸があやとりみたいに激しく絡まってきたから考えないようにしよう。
狐につままれたような気分でクマ顔の後ろを歩いているとき、チャウ丸が言った。
「前から感じていたんだが、この村の民、やたら耳がいいと思わないか?」
「そお?」
でもすぐに思い出した。
「あっ、そういえば出禁の書にヤメーメは聴覚を重んじるって書いてあったな。この前の酒場でも、小さな声で対話してたのに、話を聞かれてたよね」
「てことは······つまりさっきのじいさんは戦闘を司り、さらに聴覚信仰も担う二刀流の変人てわけか」
変人······まあ変神ね。
「人間は二万ヘルツしか聞けないけど、猫は六万ヘルツまで聞けるのよ」と得意げなシャムりん。
じゃあこの村の民も、猫ほどの聴覚を持ってるってこともありえるな。
そういやキングの名前はヘルツさんだったような気もするけど、それも関係あんのかな。
バーの前まで戻ると、マスターが近寄ってきて言った。
「お渡ししていた《出禁の書》は、こちらでお預かりしておいてもよろしいですか?」
ああ、このバーに置いてあったものだもんね。
もっといろいろ読み込みたかったが、この村にコピー機はないだろうから、また必要なときに読ませてもらえばいっか。
◆◇◆◇
翌日、仕留めた魔物を回収して売りに行くことにした。
村の民にも手伝ってもらい解体屋へ持っていくと、店の主人は目を丸くして驚いていた。
そりゃそうだよね、噂の三銃士がじっさいに仕留めた魔物の死骸を運んできたんだもん。
てっきり国の衰退とともに解体屋も廃れたものと思っていたけど、たまに自らすすんで魔物討伐に出向く酔狂な者がいるため解体技術はまだ残っているらしい。
命を落とすこともあるっていうから、よほどの物好きなんだろうな。
ともあれ、今は他国のみが魔物の討伐を行っているという話だ。
そして計六体の魔物の死骸を見ながら主人は言った。
「これはCランクの魔物のチャクラグリズリーですな。いやあ、しかし見事なものです······」
主人と民のやりとりでわかったのだが、Cランクの魔物は騎士10人でやっと倒せるレベルなのだそう。
今はヤメーメに騎士はいないみたいだから、一般的な見解だと思われる。
そして見事な職人技の手さばきでどんどん解体していく主人。
肝心の具体的な内訳だが、チャクラグリズリーの骨はヤメー3枚、素材となる皮と牙でヤメー3枚、肉は4枚。
チャクラグリズリーの頸骨は打楽器の原料になるらしく(この世界にも音楽があるんだね)、肉は食用として貴重で、とりわけ舌は高級食材なんだそう。
皮は靴や服の素材として用いられ、牙は砕いてさまざまな薬の精製に使われる。
少しだけ皮に触れたが、三年前から売れ残ったアイスクリームほどに固い。
て、ジーコはそんなアイス食ったことあんのかよ? ま、いーや。
これらの品はすべて、このあと村で流通することになるのだろう。
そこで主人が算盤をはじく。
「しめてヤメー60枚ですな」
おおっ、マジか!
こいつは高く売れたな。
前に地球のごみを売って得た分と合わせると、ヤメー220枚ほどになった。
ヤメーは50枚で大銅貨になるので、換えてもらいまとめてチャウ丸の風呂敷に収めておく。
よくわからんが、ちょっとした小金持ちじゃないか?
とはいえ、ここで浮かれたら早晩にも赤貧確定だろう。
お金は貴重だから大切にしないとね、節約大事!
むかし電線を歩く猫を見たことがあります。




