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第12話 思いもよらぬ能力

「あれは人間のゲームなんかで見る魔物にそっくりだな」


 チャウ丸も言うように、クマとツチブタを掛け合わせたような化け物や、オーロックスみたいなのが何体も見える。


 あんなの上野や旭山の動物園にはいない。

 ジーコの脳をもってしても、どんな動物図鑑にも載ってないからな。


 となれば消去法的に化け物だ。

 そして化け物はおしなべて危険というのが相場だ。

 たぶんキングも言ってた魔物なんだろう。


 よくないですぞ、こーいうの。

 ほら、生物の命って、空蝉(うつせみ)みたいに(はかな)いじゃない?

 みんな、限られた(ライフ)は大事にしないと。

 事なかれ主義のジーコのなごりで「逃げよっか」と口を開きかけたそのとき、チャウ丸がゴソゴソと何かを取り出した。


「どうやらコイツが火を吹くときが来たようだな」


 チャウさん、なんでニヤついてるの? しかもそれって――

 次の瞬間――


 バンバンッ!!!


 空中のハエをつかめそうなほど速いチャウ丸の動作に、目を丸くするおれ。

 そして、したり顔のチャウ丸が述べる。


「へへ。ひと呼んで犬銃(ドッグガン)さ。鉄パイプに釘を細工してちょろっとアレンジしたんだ」

「ま、まじすか······」


 まさか地球でガラクタを使って銃を作ってたってこと? 

 もう、どんだけぇ〜。手が器用すぎでしょ······とんでもねえな、このイヌ。ガンスミスじゃん。


 しかも、ひと呼んでって、人間がそんなこと言ってるのか? 

 おれもジーコもそんな銃、知らんぞ。


「ただ発砲したのは今回がはじめてだけどな。なんかイメージしてた威力とはぜんぜん違うみたいだ。魔力でも宿ったか?」


 そりゃそうだろうよ。

 おもちゃの銃って感じじゃなかったし、さっきの銃弾でグリズリー風の魔物が一匹、倒れ伏せてるからね。

 イヌの手づくり銃であんな殺傷力はあり得ないっしょ?


「じゃあ、あたしも」


 えっ、えっ、シャムりんも何かいっちゃうわけ?


 そこで太極拳のような妖艶な動きのあと、シャムりんは「ハッ!」と叫び、手を勢いよく前に突き出した。


 すると手のひらから、それこそ漫画みたいな鋭い光線が放たれたではないか!

 

 おいおいおい、どうなってるんだよ―― 

 

 謎の光線により、魔物が一匹吹っ飛んでいった。


「もしやと思って、人間の姿になったとき、ひそかに試してたのよ。ほら、フュージョンすると特殊能力が身につくって言うじゃない?」


 そういや以前キングがそんなこと言ってた気もするけど、特殊能力ってまさかこのことかよ?


 でもたしかにシャムりんの手から何か出てたもんな。

 こんな華奢(きゃしゃ)なカラダであんなエグいビームが出たんだから、わんわんパニックだよ。


 もしかするとほんとに人間の肉体を得たことで特殊な化学融合が起き、魔力が宿ったなんてこともあるのかも。  

 あるいはこの世界に来たことで霊験あらたかなパワーを浴びて、瞬時に独自の進化を遂げたとか。


 ということは――


 ふたりもおれのほうを期待する目で見ている。


 これって、いっといたほうがいいんでしょうか······?


 さあさあ、みたいな目で見るふたりの圧に背中を押され、おれは勇気をしぼり出してシャムりんと同じことをやってみた。


「ハッ!」


 シーン············


「どんまいタタロオ」


 だよね? なにも起こってないよね? 

 おれこそ、イタい奴みたいじゃなかった?

 

 やさしいシャムりんは、おれの恥辱を見てなかったことにして、引き続き謎の光線を放っている。

 もちろんこっちは大成功だ。

 いいなあ、いいなあ――。


 チャウ丸も鉄砲撃ちを再開して、またしても魔物に命中。

 ギュゥゥゥゥゥゥンと苦しげな声を上げ、酔っぱらったクマみたいにふらつく魔物。


 そこで後ろから気配を感じた。敵か――?


 見るとバーのマスターだった。

 ただ次の発言。


「お恥ずかしながら、あなた方が伝説のマガハラ三銃士だとはつゆ知らず······」

 

 ······は? ん? ああ、例の噂のアレね。

 ぜったいに勘違いですから、そんなに頭を下げないでくださいよ。


 マスターはチャウ丸とシャムりんが戦う勇ましい様子を見てからおれに顔を向けた。


「ということは、あなた様がエンペラー珍念殿ですね」


 ······少なくともナポレオンには見えなかったのだろうね······。 

 場の空気から、おれは肯定も否定もせず、くちびるを結んでおく。


「じつはこのようなものがございまして――」


 マスターが何かを差し出した。本?


「ヤメーメに伝わる《出禁の書》です。この中に伝説の三銃士に関する記述が載ってありますので、何かのお役に立つのではないかと思いまして」


 なんでそんな大事なものがバーに置いてあるんだよ。

 まあ、いろいろ事情があるんでしょうね。


「へえ、おもしろそ。見せてよ」

 煙を吐いたピストルを持ったチャウ丸が返事も待たずに手を伸ばした。


 おれも顔を近づける――

 

 表紙は傷んでるし、ずいぶん古い書籍みたいだな。


「おおっ、すげえ! なんかいろいろ載ってんぞ」


 チャウ丸が開いたページを覗き見ると、こうあった。



【マガハラ大陸及び三銃士に関する研究レポート


 三銃士はありとあらゆる技を身につけ、マガハラ大陸の天下泰平のために多大なる貢献をかさねてきた。ここでは三銃士が使いこなすとされる技の調査結果を報告する。


〈秘術 其ノ壱〉

 ハドー拳(hadoken)


〈Ⅰ〉使用法――】



 なんか、ガチっぽい感じがするな。

 三銃士の噂をもとに誰かが研究した報告書のようなものか。


「これを見れば、珍念も何か出るんじゃない?」とシャムりん。

「その呼び方やめて」すぐさま返す。

 マスターはキョトン顔だ。

 いやいや、だからみなさん勘違いですよ。


「もちろんあなた方だからこそ、お見せしました。どうか他国には漏らさぬよう、くれぐれも内聞にお願いします。ではわたくしはこれで――」


 魔物の残党がこっちに迫るのを確認したマスターは、本を残して小走りで離れて行った。


 ヤメーメに伝わる出禁の書かあ······。

 これは期待できるぞ。できるのか?


 えーい、おれも何かカッコいい技を出したいぜ!


プロレス界にも三銃士がいたのだとか······

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