第11話 初の抗争勃発
仕事がたてこみましたが、タタロオとがんばります!
紺碧の空の下に見えたのは、轟々と燃えさかる真っ赤な炎だ。
そしてどこからともなく民の声。
「敵が攻め込んできたぞー!」
そこらじゅう、蜘蛛の子を散らしたように狼狽えて逃げる民の姿。
おいおいおい、マジかよ、OMGだな。
あんなでかい炎、近所で起きた火事以来、久々見たぞ。
燃えているのは雑木林か······。
「なにごとだ?」と後ろからチャウ丸。
すると店のマスターが言った。
「嗅商王国の奴らだよ」
ああ、隣接する国のことか。
視線をずらすと木下闇にいくつもの姿がうっすら見えた。
「アイツらは盗賊だ」
声のほうを振り返ると、さっき店で一緒になったクマ顔の男だった。
と、盗賊て······これまた野蛮な。
アカン、これはアカンぞ!
「こんなの、茶飯事さ」
案外落ち着いた様子のシカ顔の男。
そういやリナも、マガハラ大陸では領地の奪い合いが起こってると言ってたっけ。
えー、やだなあ、争いごと。
おれは生まれてこの方、ろくすっぽ喧嘩さえしたことないんですからね。
散歩のときすれ違うイヌに吠えることはあるけど、白状すると、たんにビビってるだけだし。
「こういう場合、いつもどうしてんの?」
「まあ、ふつうは逃げますよね」
そうだよね、痛い思いなんかしたくないもんね。
ほんと尻尾を巻いて逃げ出したいところだよ。
そこで、となりからチャウ丸がぼそり。
「こうなりゃ、戦うしかないだろうな」
「本気で言ってんの?」
「アイツらは容赦ないから、やめといたほうがいいですぜ」と言い残して、店のマスターはササッと離れて行った。
うーん、まいったなぁ······。
すでにおれの頭の中で警戒アラートがファンファン鳴り響いている。
とりあえずそろりと移動すると、敵の姿がはっきり見えた。
十名ほどいる蛮族たちは、ここの民と似ていてどれもケモノっぽい顔をしている。
ただコスプレ村のヤメーメとはちがい、格好はわりと統一感があるみたいだな。
そこで蛮族の一人がこっちに気づいて叫んだ。
「余は武田信玄であるっ!」
······ん、なんだ? イタい人?
「奴らも人間界に憧れがあるんです」とクマ顔が解説。
なるほどね······。
でもだからといって武将を名乗っちゃうなんて、チュウボウじゃねえかよ。
するとさらに、ほかの者たちの声が飛んでくる。
「余は長宗我部元親であるっ!」
「余は関羽であるっ!」
「余は徳冨蘆花であるっ!」
うわわっ、コイツらも成り切っちゃってるよ······。
しかも最後のは文豪じゃなかったっけ?
武将系で統一しているわけじゃないんだな。
ほんと、あちゃーって感じだよ。
そのくせ、振り上げてるでかい刃物が、やたらおっかないからね。
刃渡り、何億センチだよって。
と、そこで文豪を名乗る敵が近づいてきて、顔をしかめた。
「まさか······に、人間ではないか············?」
あきらかに怖じ気づいてるのがわかる。
そうか、コイツらも人間に憧れてるから、見ただけで圧倒されてるわけね。
「もちろんそうよ」とここぞとばかりにシャムりん。
勇気ある発言に、黒いレオタード姿が映えるぜ。
敵たちは集まりだし、なにやらヒソヒソ話をはじめた。
そしてその中の一人がチャウ丸を見て言った。
「な······なぬ、おぬしは······な、ナポレオンではないのか······?」
······ナポレオン? どういうこと???
「そしてそのレディーは三蔵法師」
そのあと敵たちはバッと一斉におれのほうを見る。
「となれば、おぬしは、エンペラー珍念······なのか」
エッ? ダレ? おれだけなんか違うくね? しかもチンネンて······。
そこでこっち側にいるクマ顔の男が衝撃顔で言った。
「えっ、そうなんですか?」
「マガハラ大陸を制した伝説の三人組······」とシカ顔も続く。
「三人で百の軍隊を一掃し、三日で大陸を統治したというあの恐るべし······」
ん? え? は? なんか妙なことになってきてません?
············
······
微妙な沈黙のあと、チャウ丸が口を開いた。
「ああ、そうだぜ。余はナポレオンである!」
なななぁぁぁぁ、言っちゃったよ······。
「おおっ!」と、どよめきが起こり、敵たちがさらに気圧されたのがわかる。
しかもヤメーメのクマ顔とシカ顔もあきらかに慄いている。
「我々は学がないから知らねえが、まさかあなた方がそんなに偉い方達だったとは······とんだご無礼をしてしまいました」
おいおいおい、これだいじょうぶかよ······。
なにかと勘違いしてますよね。
伝説の三人組? ぜってぇ違うと思うけど。
こっちの世界に来たばっかなのに、どうやって功成り名遂げることができるんだよ。
と、そこでとなりから威厳のある声。
「まあ、だれにでも間違いはある。面を上げい」
チャウ丸ぅ〜、すっかり成り切ってるじゃないかよぉぉぉ。
シャムりんもさっきより、どことな〜くドヤ顔なのは気のせいか。
じゃあ、おれも成り切ったほうがいいのかな。
でもチンネンだよ?
どれだけすごい存在か知らないけどさぁ············ねえ?
それともおれのイヌ的センスのほうがズレてて、この世界では武者小路や西園寺ばりにカッコいい響きの名前なのか?
気づいたら蛮族は恐れをなしたのか立ち去っていた。
「あなた方であれば、あそこにいる魔物たちも容易に一掃できるはず。どうぞよろしくお願いします」
そう言ってクマ顔とシカ顔もそそくさと離れて行った。
たしかに蛮族の代わりに、妙にでかい化け物が何匹か見え、猛々しく咆哮をあげている。
おいおい、あんなのゲームでしか見たことないぞ。
ゴブリンみたいな敵MOBタイプでなく、ザ・ケモノって感じだ。
その場に残された三人。
あんなのやっつけろなんて、どだい無理な相談てなもんすよ。
さあて、どうしたものかねえ······。
なんか展開してきました。




