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More Candy!

作者: 朔月


――――――――ハロウィンで賑わう街の表通りに隠れて、誰の目も届かぬ路地裏に2つの影。


「ぁ、あのっ…お、オカシッ……『お菓子』を、ください……」


具合が悪そうに胸を押さえた青年が怪しげな男に声をかけ、手に握った封筒を差し出す。

窶れた顔つきをよく観察してみると、まだ微かにあどけなさが見て取れる。

肩を上下させる青年は余裕のない表情で必死に男を見つめている。


そんな青年を冷めた目で一瞥したのち、差し出された封筒を受け取り中身をチラと確認してから男は口の端を吊り上げ、ただ一言口にした。




「よいハロウィンを…」




男は小さくラッピングされた『お菓子』を、煙草をふかしながら青年の手の平に乗せる。

煙の向こうに覗く男の瞳は暗く澱んでいた。


その瞳に映るのは、嬉しそうに笑みを浮かべる顔とは対照的に、澱んだ瞳で『お菓子』を貪る生きる屍。

誰にも知られぬ亡者達の逢瀬も、男が燻らす煙のように、街の喧騒と乾いた風に掻き消されてゆく。


されどまだ、祭りは始まったばかりだとでも言うかのように、賑やかな表通りとは対照的に、夜の闇が彼らの瞳のようにその濃さを深めてゆく。


彼等の澱んだ瞳も、表通りに溢れる数多の仮装に紛れ、今日だけは明るい街に姿を晒すのだろう。





すれ違う亡者に誰一人として気付かぬまま。



今年も夏は長引きましたね。

猛暑から一転、いきなり肌寒くなって私は風邪をひきました。

皆様も体調にはお気をつけください。




さて

夏は猛暑、冬は極寒。そんな季節に挟まれている束の間のひと時たるこの秋に、収穫のお祭りがございます。

それがハロウィンです。


そんなハロウィンにはもう一つ、悪霊や死者の霊があの世から帰ってくるお祭り、という側面がございますね。

そんな悪霊達から身を守る為に、人々は様々な仮装をする様になったのだとか…。


しかし昨今は、そんな宗教的な意味合いは薄れつつあり、季節を代表するただの大きなイベントとして消費されております。


例えばの話ですが、その様な宗教観を忘れてしまった我々現代人は、街に溢れかえる様々な仮装の中に紛れて、この世ならざる存在がすぐそばに居たとしても、きっと誰も気が付かないのだろうなぁと、この季節になると毎年思います。

私もあまりその手の話は現実の事としては受け止めていませんね。

ジャンルとしては好きなのですけどね。


今回の「More Candy!」はそこまでファンタジーではございませんが、大半の人にとっては日常のすぐ裏側にこんな暗い世界があると知ったらどうでしょうか?

夏の余韻、ではございませんがほんの少しばかりは背が冷えるのでは無いでしょうか。


大きな催しは様々な非日常が隠れやすいかっこうの舞台です。こんな風景がどこかにはあるのかもなぁ、と妄想しながら書きました。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

皆様はくれぐれも健全なお菓子をいただいてくださいね。イタズラは程々に笑

それでは、一足早いですが皆様…





「よいハロウィンを…」

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