【2ー43】バドスストーリーエンディング
第2章、最終話です
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あれから奥の部屋から金庫も見つかり、ブラクの悪行は世界警察の知る所となった。
これから色々と調査は入るのだろうが、とりあえずは指名手配犯を匿った事、金品の窃盗、誘拐、違法賭博などなどで関係者は連行されて行った。
ブラクはお終いだ。ブラクがなくなった事で馬車の差し押さえもなくなり、バドス商会の商売に邪魔をする奴もいなくなった。
そして、ハイセル・バドスの真実を知ったフェルナとヒュアーナだが、俺の予想に反して彼女たちは強かった。
「お父さんの事は悲しいし悔しいですが、もう二度と父と同じような被害者が現れなくなったのは、良かったと思います」
「主人は道を間違ってはしまいましたが、全ては私達の事を想っての行動です。その想いを胸に、私達は前を向いて進みます」
そういう母と娘は、父の思い出話をしながら笑い合っていた。
強い母娘である。俺が心配なんかしなくても、彼女達が下を向く事はもうないだろう。
ちなみにだが、ヒュアーナが拐われたのにも関わらず女王様を演じていたのは、フェルナを助けるためだったらしい。
油断させ、隙をついて拘束するつもりだっと。見事成し遂げたのだから流石だ。
まぁ、楽しんでいたようにしか見えなかったけどな。
「一応、礼を言っておこう。情報提供、ご苦労だった」
「他の言い方は出来んのかお前は……というか、それだけか?」
「謝礼などを渡す事は禁じられている。お前が望むなら、表彰を行う事は出来るが?」
「いらねぇよそんなの、それより――――」
コンラードは相変わらずだったが、逆にそれを見ていると安心した。
奴はどうやら結構上の立場の人間だったようで、応援に来た警官達に色々と指示を出していた。
そんなコンラードに俺は約束させた。
「ハイセル・バドスがここで勝った賞金、それを取り戻せないか?」
「不可能だ。ここは届けが出されていない違法な賭場、本来なら遊戯していた者も罰せられる」
「ハイセルはここが違法だと知らなかったんだぞ? それに調べれば分かると思うけど、世界警察の人間が介入したと聞いた。いいのかよそんな汚職」
「……それについては調査する。関わった者は粛清すると約束しよう」
これは後日聞いた話になるのだが、コンラードがこの件についてしっかりと動いてくれたそうだ。
ブラクに賄賂を渡され、ブラクに都合のいいように取り計らったポリスは断罪、まぁどうなったのかは知らん。
だがやはり賞金はなし。その代わり、あの日あったギャンブル自体を無効化するという。
つまりは馬車はもちろん、賭け金としていた金もバドスに戻される事となったそうだ。
「それともう一つ、ダヴィドの件だ」
「……なんだ? 言ってみろ」
「とある人がダヴィドの情報をくれて、そのお陰でダヴィドを見つける事が出来た」
「それがどうした?」
「でもその人は強引にダヴィドに転がり込まれて、不本意に匿う形となってしまったらしい」
「なるほど、言いたい事は分かった。本来は処罰の対象だが……その者が皇女誘拐未遂事件に関わっていないのであれば、俺の権限で不問とする」
ダヴィドを生かしている理由は、色々と情報を聞き出すつもりだからだろう。
そうなれば、世話警察がラリーザに辿り着く可能性は高い。
だから先手を打たせてもらう。身内の不始末を黙っている代わりに、こちらの件も融通しろと。
「じゃあよろしく頼む。色々とありがとうな、コンラード」
「あぁ、ではな」
なんだかんだコンラードには世話になった。今度クルーゼも含めてちゃんと礼をしないといけないな。
ともあれこれで、ラリーザもバドス商会も大丈夫だろう。
馬車も盗まれた金も戻り、ハイセルの賭け金も戻ってくる。
その金で商業ギルドに借金を返せるはずだ。そうすれば路線馬車の運行許可も貰える事だろう。
あとは俺がいなくなった後、どうやっていくかという問題だけなのだが。
――――
「俺には、御者は無理そうっす。アニキの事を隣で見ていて分かりました」
それは色々な事が片付いて、今後の事を話し合いつつ借金完済おめでとうパーティーを行っていた時のベルセルの言葉だ。
なにを言い出すんだコイツはと思った。なんのためにお前を御者見習いにして、同行させていたと思っているんだと。
「もちろん、バドス商会の事はこれからも守っていくぜ? でもそれは、整備士としてだ」
「ベンセル……」
フェルナの顔を見ながらカッコいい事を言うベンセル。
しかしそうなれば、バドス商会は新しい御者を雇わなくてはいけなくなる。
「あの、アニキはやっぱり、辞めるっすか?」
「そう……だな。俺も色々とやってみたい事があるから」
「そうっすか……残念っす」
「ダメだよベンセル。ヨルヤさんはこんな所で終わる人じゃないんだから」
フェルナもヒュアーナも、俺の独立には反対どころかそうするべきだと、背中を押してくれていた。
正直な所、少しは引き留められるかと思っていた。
しかしあの独立を考えていると話した日以来、一度たりとも引き留められた事はなかった。
「ヴェラさんは、やっぱりヨルヤさんですよね?」
「なんか言い方が嫌だけど……そうね、あいつに付いて行くつもり」
「うちはこれから路線馬車運行をメインとするつもりなので、護衛はいらないですからね」
「まぁ、護衛じゃなくても友達でしょ? あたし達」
それはもちろん、そう笑顔で答えるフェルナ。
「でもそうなると、新しい御者が必要よね? 当てはあるのかしら?」
「それは……」
「大丈夫ですよ。御者は……私が務めますから」
そんな事をいきなり言い出したヒュアーナに、全員の目が集まる。
確かにギフトがなくても御者をする事は可能だが、御者ギフト持ちを雇った方がいい気がするが。
「でもヒュアーナさんのギフトって、調教師ですよね?」
「いえ、違いますよ?」
「そうなんですか? 女王様だしてっきり……じゃあジョブギフトは何なんですか?」
「私のジョブギフトは、御者です」
「「「「は……?」」」」
この発言には全員の目が点になった。
ヒュアーナはとても冗談を言っている様子ではないが、本当なのだろうか?
「え……でも女王様……」
「御者は鞭の扱いに長けていますので」
「で、でもお母さん、そんな話は初めて聞いたけど……」
「隠してたからね」
今は亡き夫、ハイセル・バドスのために御者ギフトを授かった事を隠していたという。
ハイセルは御者になりたくてバドス商会を興したが、御者ギフトを授かる事は出来なかった。
それでも、ギフトがなくても一生懸命に働き、見事に事業を成功させた。
そんな中、ヒュアーナが御者ギフトを授かってしまう。
「言えないわよ、あんな楽しそうな夫を見たら」
「まぁ、普通はギフト持ちがいるなら交代するもんね」
「馬が苦手って事にして、極力馬車には乗らないようにしてたわ」
「あ~お父さん、変にプライド高かったもんねぇ」
ハイセル亡き後、商会を存続させようと御者はやっていたらしい。
だがハイセルの不名誉な噂のせいもあり、徐々に仕事はなくなっていった。
そして俺が商会に訪れた頃には、御者の仕事なんて完全になくなっていたと。
御者が出来ないのであれば、他の仕事をしてでも商会を守らなくてはならない。
そこで選んだのが、そこそこ実入りもよく微妙に御者ギフトを活かせる女王様だと。
「でもそういう事なら、バドス商会は何の問題もありませんね」
「えぇ。ヨルヤさんは安心して、やりたい事をなさって下さい」
御者に調教師に整備士。人材は揃っており、馬車もあるし馬も手配済み。
まさかここまで上手く行くとは思ってなかったが、ゲーム化ストーリーだからなぁ。
「ヨルヤさん。本当に、本っ当にありがとうございましたっ!」
「ありがとうございました。あなたのお陰で、私達は救われました」
初めてここに来た時、この二人はどんな顔をしていたっけ?
不安、悲哀、絶望。そういった負の感情が渦巻いていたように思う。
そんなものはもうない。それは彼女達の希望に満ちた表情が物語っていた。
「でも最初は苦労しそうね? こいつが滅茶苦茶な運転で馬車を走らせたから」
「あはは。路線馬車ですので大丈夫だと思いますよ」
「街中には速度規制がありますし、スピードを重視している方はいませんから」
「そっか。逆にこいつがいなくなって良かったかもね? こいつが路線走らせたらポリスに捕まるわ」
なんて笑い合う美人三人を眺める男二人。
ほんと心から思うのは、その笑顔を失わせるような事にならなくて良かったという事。
これからもその笑顔を絶やさずに、バドス物語を歩んで行ってほしい。
「じゃあもう一回乾杯しようぜ! え~と、アキニと……」
「バドス商会とヨルヤの明るい未来にぃ?」
「「「「かんぱ~いっ!!」」」」
「ちょっそれは俺が言おうと……まぁいいか、かんぱ~い!」
これからもずっと、バドスのストーリーは続いていく。
そして俺も、俺の新しい物語を紡いでいくんだ。
『ストーリークリアーを確認しました』
【ストーリー――――バドス商会の夢】
【クリアー報酬――――100GP、成長材(SR)、レベルアップポイント】
【レベルアップ――――22→27】
いやマジで!? 破格すぎる、まぁ頑張ったもんなぁ。
『ハッピーエンディングを確認しました』
【ハッピーエンドボーナス――――100GP、10名声ポイント、ショップ引換券(SR)、ヒロイン化】
いやいやこちらも破格!? この感じだとやっぱりバッドエンドがあったのか……良かったハッピーエンドで。
いやそれより、ヒロイン化とはなんだ?
『ヒロインリストにヒュアーナ・バドス、フェルナ・バドスを追加しますか?』
【はい】
【いいえ】
……いやいや、未亡人ルートに寝取りルート? それはいいわ……。
この関係を壊したくない。ベンセルには勝てる気しかしないけど、可哀想だ。
それに気のせいか、隣に座るヴェラが睨んでいるような……まさか見えてねぇよな?
→【いいえ】
さて、この後も色々とあったのだが割愛させてもらおう。
なにはともあれストーリーエンド。最高の形で終わらせる事が出来たのは本当に良かった。
さぁ、俺のメインストーリーは、これからどうなって行くんだろうな。
いや、それを考える前に酒盛りだな。今日は飲むぜぇ!!
――――the next bashastop is ~どう見ても御者人生の始まりじゃん……~
お読み頂き、ありがとうございました
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次章の執筆に手間取っているため、ここで完結設定とさせて頂きます
書き続ける予定ではありますので、お待ち頂ければ嬉しいです
ありがとうございました




