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【2ー10】異世界といえば野営






「(放置バトルが選択出来ないのですか、条件は何ですか……と)」


 放置バトルを上手く活用できるようになれば、色々と便利になるのではと思っている。


 例えば俺が寝ていても、つまり放置していても勝手に護衛とかが戦闘して稼いでくれるのではないだろうか。



【放置バトルを選択するには、前提として拠点を築いている必要があります】


「拠点……?」


【放置バトルはダンジョン内、一部のフィールド上、及びモンスターポイントの近くで選択出来ます】


 ダンジョン内というのは分かるが、他の二つの意味がよく分からない。



「(……フィールドって何ですか?)」


【モンスターが出現するフィールド、つまり基本は街の外です。そこに拠点、つまり野営地などを設置した場合に選択出来ます】


 なるほど、野営地。あくまで放置できる環境を整える必要があるという事か。


 拠点作って寝ていれば放置とみなされ、バトルが開始される……という感じだろうか?


【他のバトルシステムと同様に、外的要因によりバトルシステムが解除される可能性がありますので、人気がない場所での選択を推奨します】


 人気がない場所って、森の奥とか? 街道沿いとかだと人通りがあるだろうから、強制解除される可能性が高いと。


 では最後にもう一つ、なんだモンスターポイントって。また新たなポイントが出てきたと思ったら、そうではなかった。



【モンスターポイントとは、モンスターが大量に生み出されるポイントの事です】


「なんだそのやべぇポイントは、そんなのあんのかよ」


【モンスターポイントは魔物が大量に湧きますので放置バトルに最適です】


「いやでもそんなやべぇポイントの近くに野営地とかヤバくない?」


 その後も細かい事を質問し、自分の中で分かりやすいように解釈していった。


 まず放置バトルを選択するには拠点の設営が必要である。


 ダンジョン内やフィールド上でも拠点を設営すれば放置バトルが選択出来るが、そもそも魔物が少なければ実入りも少ない。


 モンスターポイント付近であれば実入りが期待できる。しかし当たり前だが危険であると。


 もちろんあくまで放置する必要があるため、俺が拠点を離れたりすると解除される。


 第三者の介入や、放置バトル参加設定者以外が戦闘に参加した場合も解除されると。



「まぁまずはやってみるか……とその前に、お別れだな、黒髪エルフちゃん」


 あと一時間もしないで、エルフちゃんとはお別れだ。


 タイムリミットを待ってもいいが、ここはやはり俺の手で送るべきだろう。


 最後にエルフちゃんの頭を撫で、その美しい顔やスタイルを記憶する。


 再びランダムの奇跡が起こり、再会出来る事を願っているよ……そう思いながら彼女を送った。


 あ、ピンクもお疲れさん、またね。今度は髭剃ってこいよ。




 ――――




「――――この辺りでいいか?」


 新たな護衛を二体召喚し、俺は森の奥深くまて足を伸ばしていた。


 今回のランダムは……まぁハズレだ。なんて言ったって男が二人、せめて性別くらいは交互に生成してほしいよ。


 いつか護衛ハーレムなんていうランダム奇跡が起こるのかね? 全員女性で美人というランダムの奇跡、起こしてみたいな。



「じゃあえっと……赤に白、でいこうか」


 まず一人目、なぜが肌が真っ赤だ。キャラクリでネタキャラでも作ったかのようなあり得ない色である。


 装備は普通。ショートソードに小盾、一般的な兵士って感じだな。


 二人目は逆に肌が白すぎる。雪に紛れたら絶対に発見出来ないレベルで白い、これもネタキャラか。


 しかし装備に期待あり。なんと魔法使いっぽい杖を持っているではないか、魔法が見れるかもしれん。



「さて、じゃあまず野営地の設営……って、野営地ってどうやって設営するんだ?」


 キャンプすらした事ないぞ。流行に乗っておけばよかったと後悔する。


 そういやショップにテントとかが売っていたな。それを思い出した俺はショップを開く。


「え~とテントテント……ん? 野営セット? これでいいじゃん」



【野営セット(N)――――簡易的な野営地を設営出来る。一度だけ使用可能】



 もっと良さげな野営地セットも買えたが、俺一人だけだしと一番安いセットを購入。


 購入後、インベントリに収納された野営セットを具現化させ、設営の準備に取り掛かった。



「なんか、ファンタジー感がないな」


 寝袋、薪、これは火打ち石か? それに小さなコップと鍋が一つずつ。


 寝袋を敷いて、薪をいい感じに設置し火を着けたら完成だ。


 しかし食べ物がないんだが……まさか現地調達? 無理だよ、魚ならまだしも動物なんて捌ける訳がない。


 簡易も簡易、火を起こして寝るだけセットか。



「ま、いいか。飯は我慢してあとは魔物の出現を……ってナイスタイミングだ」


 火を起こしたタイミングでの魔物の出現。普通、動物は火から遠ざかるもんじゃないのかね?


 まぁこっちには好都合なので文句はない。動物と魔物は違うのだろう、多分。



『バトルシステムを選択して下さい』



【ターン制コマンドバトル――――選択可】

【リアルタイムアクションバトル――――選択可】

【タワーディフェンスバトル――――選択不可】

【カードバトル――――選択不可】

【放置バトル――――選択可】



「おぉ、選択できるぞ」


 もちろん放置バトルを選択する。



【戦闘に参加させるメンバーを選択して下さい】


【ヨルヤ】

【護衛A】

【護衛B】



 ……あれ? なんで俺も選択できるんだ?


 俺が戦闘に参加したら放置じゃなくね? がっつりプレイする事になるじゃん。


 まぁとりあえず、俺の選択はやめておこう。なぜ選択できるのかは後で聞くとしようか。



【放置時間を設定して下さい】


【1時間】~【24時間】

【設定なし】



 どうやら時間の設定が必要なようだ。設定なしも行えるようだが、何がどう変わってくるのだろう?


 まぁここらも後で確認と。時間はそうだな……今が夕方といった感じだから、2時間くらいにしとくか?



「……いや、せっかく野営セットも買ったんだし、朝までやってみるか」


 思い切った選択であるが、せっかくなのでキャンプを楽しんでみようと思う。


 早朝までの計算で、放置時間を15時間に設定する。



『放置バトルで戦闘を開始します』


【残りの時間――――14時間59分】



 戦闘開始のアナウンスが流れると、カウントダウンが始まった。


 馴染み深い数字であるが、この世界の一時間は六十分でいいのだろうか? この世界で時計を見た記憶がない。


 まぁここら辺も言語と同じように、異世界人に分かりやすく変換されているのかもいれないが。


 そんな事を考えていると、護衛の二人が森の奥へと入っていった。


 少し離れたり所で戦闘を行ってくれるのはありがたいが、魔法を使うのなら見てみたい。



「後で見に行ってみるか。じゃあ俺は……」


 そこで気づく。俺、いま1人っきりじゃん。


 明かりのない森の奥深く、これからどんどん暗くなる。


 怖い。誰もいなくなったバスを車庫に止めに行く時より怖い。


「……護衛召喚、護衛召喚、護衛召喚」


 限界値まで護衛を召喚する。


 現れた三人の新しい護衛の無表情を見て、俺は安心するのだった。



お読み頂き、ありがとうございます

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