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地獄のバケーションを生き延びる方法  作者: 春屋 寝狐
大人が居ない時には、別荘地へ行ってはいけない
9/31

5

 僕がバドワイザーを取りに行ってから、そんなに経たずにシンディが先に戻ってきた。

 シンディは何事も無かったかのように、マイケルの隣に座り、慣れたように絡み付いていた。

 僕はさっきみた光景を思い出さないように、目を反らした。

 

「さて、腹もいっぱいになった事だし、そろそろ片付けるか」

 

 焼くものも無くなったし、ちょっと眠くなってきたちょうどいい所、でマイケルの一言があり皆で片付ける事にした。

 どれだけ飲んだんだよ。というぐらいバドワイザーの空き缶と肉の入っていたパックのゴミが散乱していたので、僕はごみを集める係になった。

 クレアとシンディは洗い物をまとめ、他の男達はバーベキュー台の片付けだ。

 その頃になってようやくリッキーは外へと出てきた。

 

「あれ、もう片付けてるの?」

「リッキーどこに行ってたんだ?」

 

 マイケルが不快気に聞く。

 片付けもせずに、のんびりしていると思ったのだろう。

 僕はハラハラしているのに、シンディは全く気にせずクレアと楽しそうにしている。

 

「ちょっと飲みすぎたみたいで部屋で休んでた。朝も早かったし、疲れたのかな」

「朝運転も任せちゃったものね。体調悪いなら、部屋で休んでていいわよ。片付けくらいなら私たちで出来るわ」

 

 リッキーの体調を気遣うようにクレアが言う。

 やっぱりクレアは天使だ。

 

「そうなのか?体調悪いなら休んでろ」

「そうさせてもらうよ。悪いな、マイケル。任せた。納屋は鍵開けっ放しにしてあるから」

 

 そう言ってリッキーは部屋へと戻っていった。

 皆で片付けると、片づけはすぐに終わった。

 そして順番にシャワーを浴びる事になった。

 女性達が先に浴びて、マイケル、メイナード、僕、シリルの順番になった。

 順番を待つ間呑みたりないと言ったマイケルは、バドワイザーよりも度数の高い酒を出して、シンディと一緒にソファーで飲み始めた。

 そんなものまで持ち込んでいたのかと驚いた。

 メイナードとシリルは、リッキーが持ってきていたボードゲームをする事にしたようだ。

 僕は二人の対戦を眺めていた。

 ボードゲームはシリルの圧勝だったようで、メイナードが不満そうにしていると、クレアがすぐに帰ってきて洗い物の続きをするというから、僕は手伝う事にした。

 シリルは次はマイケルと対戦している。

 シンディが応援しているが、僕的には洗い物をクレアに任せっきりにしないで手伝えばいいのに。と思った。

 

「ロイ、ありがとう」

「べ、別に。当然だよ。僕たちみんなで使ったんだし」

 

 クレアが洗った皿を受けとり、僕は落とさないように慎重に拭いていく。

 少し距離が近づいた時に、まだ乾ききってない髪から花の匂いがした。

 それだけで二人っきりだという事を思い出して、緊張してしまう。

 

「でも手伝ってくれて本当に助かるわ。ロイって今シリルの家に住んでるのよね。いつまでこっちに居るの?」

「うーん、長くてもバケーションが終わる頃には帰るよ」

「そうなんだ」

 

 クレアが心なしか寂しそうに呟く。

 

「ねえ、帰ってもまた会ってくれる?」

「も、もちろん」

 

 上目使いで問いかけるクレアに、僕は即答した。

 いい雰囲気だな。と思っているとメイナードがお前の番だぞ。と呼びに来たので僕は慌ててシャワーへと向かった。

 ほんとバケーション最高!僕は心の中で叫んだ。

 もしかして僕も、初彼女が出来るかもしれない。

 また会いたいって思ってくれるって事は、クレアだって僕の事を気になってるのかもしれないし。

 いや、あまり大きな期待をもったら違ったとき恥ずかしいぞ。

 冷静になれ、ロイ。

 まだ一緒にいれる時間はいっぱいある。

 今日はまだ初日だ。焦ってはいけない。

 最初は変な田舎町に預けられて不満だったけど、逆に良かったかも。

 気のいい友達もいっぱい出来たし、あっちに居るより青春出来てるかもしれない。

 僕がシャワーから出てくると、リビングには酔ってしまったのか寝ているマイケルと、ボードゲームを一人でいじっているシリル。キッチンにクレアしか居なかった。

 

「シリル、出たよ」

「ああ」

「他の人は?」

「さあ。部屋に戻ったんじゃないか?ロイはオレが戻ってくるまで部屋に行くなよ」

 と告げてからシリルはさっさとシャワーを浴びにいってしまった。

 

 って事はマイケルは居るけど寝てるからノーカンとして、またクレアと二人っきり?

 途端に緊張してきた。

 みると、クレアも少し顔が赤く見える。

 

「えっと、とりあえずゲームでもする?」

「そ、そうね」

 

 何で僕って小心者なんだろう。

 マイケルやリッキーだったら、もっとスマートに誘うんだろうな。

 ため息をつきながら、僕は駒を並べ始めた。

 

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