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 次の日ムスッとしたシリルに、まだ日が出ていない朝早く起こされ、車に乗せられた。

 そのまま寝てしまって目が覚めたら、そこは海だった。

 日は少し出ているが、まだ早いからかサーファーがまばらに居るだけだった。

 

「海」

「ああ、そうだな。」

 

 シリルは眩しそうに外を見ている。

 車はしばらく走ってから駐車場に止まった。

 

「水着は?」

「ある訳ないよ。何で海に行くんだったら教えてくれなかったの?」

 

 何の説明もされないまま車に放り込まれたんだ。

 何も持ってきている訳がない。

 ベンさんは車からテキパキと荷物を下ろしている。

 

「じゃあ売店で買ってこい」

 

 僕はシリルにお金を押し付けられてから車から降りた。仕方ないので、そのまま売店へと行く。

 朝早いが、チラホラとあいてる売店の1つに入り、縞柄の水着を買う。

 シンプルなのがこれしかないって、一体何なんだ。

 戻ってくると大量の荷物を抱えたベンさんと、麦わら帽子を被りクーラーボックスを持ったシリルが居た。

 そして、無言で歩き始める。

 僕はついていくしかない。

 

「一体何をするの?」

「釣りだよ。父さんの唯一の趣味なんだ。時々連れていかれる」

 

 へえ、ベンさんってあまり話した事ないし、いつも家に居るし良く分からないんだよね。

 

「ねえ、ベンさんって普段何してるの?」

「聞きたい?」

 

 シリルがニヤリと笑う。

 絶対ろくでもない。

 一生懸命に首を振った。

 残念とシリルが呟いたのが聞こえた。僕だって学習するのだ。無駄な事は聞かない。これがこの狂った町で平和に生きる為の一番の秘訣なのだ。

 砂浜まで歩いていくと、ベンさんが持っていた荷物を下ろし、ゴムボートに空気を入れて膨らませ始める。

 

「え、沖に行くの?」

 

 ゴムボート自体は五人も乗れそうな程大きいけど、少し不安だ。

 何せ僕は泳げないのだから。

 シリルは慣れたようにベンさんが膨らませたゴムボートに乗り、僕も不安を覚えながらも乗る。

 ベンさんが何かを操作するとゴムボートは勢いよく発進し、砂浜がどんどん遠ざかっていく。

 

「凄い勢いで離れてくけど」

「離れないと、魚が居ないだろ」

「そうだけど……」

 

 僕が泳ぐ事が出来ないと言いあぐねている間にも、ゴムボートはどんどん進んでいく。

 

「もしかして、お前泳げないの?」

 

 図星をさされて、僕は思わず黙ってしまう。

 シリルがクスクスとバカにするように笑った。

 

「お前、何も出来ないのな」

「そ、そんな事ないよ」

 

 ゲームの腕だったら負けないのに。

 それより、シリルは外に居るのにも関わらずあんまり不機嫌ではない。

 むしろ上機嫌だ。

 そっちの方が怖い。

 また何か起こるんじゃないだろうか?

 

「ねえ、今回は何も起こらないよね?」

「お、やっと警戒し始めたか」

「茶化さないでよ」

 

 この二週間で僕は何回も命の危険を感じた。

 ギリギリの所で助かっているのは、シリルのおかげなんだろうが、シリルだった僕と同じ年の学生だ。

 守るとは言ってくれたけど、不安なのは変わらない。

 

「父さんが居れば大抵どうにかなる」

 

 シリルが年相応に笑うから、僕も何だか考えこんでいるのが馬鹿らしくなってきた。

 友達と海に行くなんて初めてだし、やっとバケーションらしくなってきた気がする。

 

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