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第三話 旅が始まり

4. 初日(令和四年6月10日)


 はじまりは、天気が微妙。当初の予定では、筆者がスーツケース二つ引き()って病院まで行き、母を拾ってそのまま駅に(病院から駅までは、徒歩一分)。けど、雨が降っていたら、スーツケース二つ引き摺ったら傘を差すことが出来ない。なら、まず車で病院に行き、スーツケースをロビーに置かせてもらって車を戻し、その後徒歩で改めて病院に行く?

 というか、そんな面倒なことをするくらいなら、車で病院に行き、母を拾い、駅まで行って、スーツケースと母をそこで降ろし、筆者は車を戻してから改めて徒歩で駅に行けばいいのでは? という話になり。母の透析終了時間まで、時間帯別天気予報と、降雨レーダーと、現実の空を見ながら対応を考えた。

 そして案の定、その時間帯は、雨。まぁ小雨だから、気にしないでもいいか?っていう程度だったけど、旅のはじまりに雨に濡れて、結果風邪をひいたというのは馬鹿らしいから、車で母を迎えに行き、駅で降ろして改めて筆者は駅まで。そして東京駅まで。


 東京駅では、軽く腹を満たしておこうとエキナカの寿司屋に。そこで、驚愕の事実が!

 寿司を食べたら、筆者の口の中が痛い!

 どうやら口内炎。風邪の初期症状のようだ。

 だが、こんな風邪程度で今回の旅行にケチ付けるなんて、プライドが許さん! とばかりに、気にせずに寿司を頬張り。……あ、寿司は本当に美味しかったです。


 それから、サンライズの入線待ち。

 さて、サンライズの乗客にとっては、入線前からひとつのイベントがある。それは、シャワーカードの購入だ。

 シャワーカードの券売機。これは、シャワーのタンク容量の関係上、20枚しか発券しない。だから当然、早い者勝ちになる。だから、券売機のある4号車に、その列が出来る。

 けど、券売機直近の乗車口は、実は3号車にある。その為、4号車の乗車口から券売機の所に辿り着いた時には、既に券売機前の行列が、3号車乗車口を越えてホームにまで至っていた。

 仕方がなく、その列に並び直したところ。……筆者の三人前で、カードはSale End。残念ながら、購入不可能だった。


 失意の中、予約していた寝台へ。B寝台シングル。思ったほど狭くはなかった。が、(西行きの列車に対して)右側の部屋。海も、日の出も見えない。これは次回に際する要検討。西行きは(みなみ)側、東行きは(みなみ)側の方が当然、景色が()いはずなんだから。


 ところで、夜行列車は現在、この「サンライズ出雲・瀬戸」を除いて全て廃止されている。臨時の観光列車を除いて。その理由は。

 ……保線・管理の都合もあるけれど、それとは別に。

 「夜に眠って、朝起きたら目的地」というのが、夜行列車のひとつのメリット。だけど、現代人の贅沢に慣れた感覚では、「プライベートが無く、騒音がひどく、振動がひどい夜行列車では、リラックス出来ない」という問題があった。それを解決する為には、かなりの設備投資が必要で、だから営業側も採算ラインに乗せられず。

 そうして残った『サンライズ瀬戸・出雲』号は、だから騒音も気にならず振動もまた無視出来る程度の環境だった。

 具体的には、騒音はともかく振動は、小さな揺れを消す為に大きなゆったりとした揺れになり、けれどそれはフェリーの揺れほど大きな周期ではない、という感じ。三半規管が敏感なら酔うかもしれないけれど、フェリーで酔うかもしれないという程度なら心配する必要はないという程度。


 ただ、サンライズの場合は問題はそこではなかった。

 深夜の、通過駅。「あ、豊橋」「あ、刈谷」「もう京都? ならもうすぐ大阪か」と、何気に楽しみが多くて、全然寝られない(笑)。結局寝たのは深夜2時過ぎ。そしてアラームは午前5時。まぁこれも、夜行列車の楽しみということで。


5. 二日目(令和四年6月11日)


 二日目。高松駅到着直前。いきなり母が、やらかした。

 全然寝られなかったからと、午前3時頃に導眠剤を服用したのだそうだ。

 結果、朝7時半頃高松到着の直前に、母はしっかり熟睡していた。

 携帯電話を鳴らしても起きず、ドアをノックして、ようやく目が醒めたのは、到着の10分前。慌てて準備をして。その結果、列車内に忘れ物をしてしまったようだ。

 ……今回の『サンライズ瀬戸』号は、琴平までの延伸運転。それもあり、高松には約30分程度停車する。それを理解していれば、慌てずに忘れ物がないかどうかの確認も出来ただろうけれど、私にとっても琴平方面の発車時刻についての正確な知識が無かったから、結果()かしてしまい。……まぁ、あまり重要なものではなかったから、仕方がないとしよう。


 高松では、当初の予定通りうどんを食べて。ちなみに私の口内炎は、一晩経ってかなり落ち着いていた。だから遠慮なくうどんを掻き込んで。讃岐の、コシの強いうどんは、小玉で充分食べ応えがあり。堪能してからは、レンタカー屋に。

 今日は、レンタカーで出雲まで走る予定。だから乗り捨て前提で、出雲市駅前にも営業所がある「オリックスレンタカー」を選択していた。


 のに、実際に見せに行ってみると、「……予約がありません」。

 え? 何故? と思って見直してみると、行った先は「バジェットレンタカー 高松駅前店」だった。

 「ごめんなさい、店を間違えました」と言って、改めてオリックスレンタカーの営業所に行ったところ。

 「どうやら予約されているのは、高松駅前店のようですけど、うちは高松駅前西の丸(・・・)店です」と。……ここでもなかった(涙)。

 改めて、駅前店の場所を確認して、そちらで。


 なんか出足でケチが付いたような気もするけれど、気にせずに車に乗って、一路西へ。

 目指すは道後温泉。

 母は、道後温泉を「坊ちゃん温泉」(夏目漱石)と認識していた。けれど、道後温泉は〝日本最古の湯治場〟。聖徳太子も湯治したことがあるのだという。

 で、そういう認識の齟齬は、事実の齟齬に通じる。

 母は、道後温泉に以前来たことがあるのだという。だから「道後温泉本館」を「温泉旅館」と認識していた。けど、「道後温泉本館」は「道後温泉旅館(・・)本館」じゃない。卑俗化して表現するのなら、あくまでも「公衆浴場の元祖」でしかないのだから。


 これは、〝湯治〟の認識の差に起因する。

 〝湯治〟というと、多くの人は、長期滞在出来る温泉旅館を認識する。

 このイメージのひとつの理由は、江戸の銭湯だろう。湯に浸かり、酒を喫し、そのままそこで雑魚寝する。

 それが「湯治」というイメージと重なり、治療の為に湯に浸かり、薬膳料理を口にし、そしてその宿で起居する、と。

 けど、戦国時代以前の湯治は、温泉場に勝手に居所を構え、或いは前人が起居したあばら家を引き継ぎ、湯に浸かる。湯治者を相手にする為に商人が寄り付き、だから(いち)が立ち、街が整備される。

 対して現在の日本では、「所有者がいない土地」は(原則)存在しない。だから温泉などは、そこを所有する旅館が管理し、或いは管理した土地から温泉が湧き出た、というのが普通だ。

 だから「温泉」と「旅館」はセットになる。それが普通。

 だけど道後温泉は、温泉があり、その周りに集落が形成され、それを支える為に(いち)が立ち、結果街が出来たという土地なのだから。


 それはともかく、道後温泉本館。残念ながら現在(令和四年6月)は、設備保存工事の真っ最中でラッピングされていた。使える湯も、男女ひとつずつ。だから仕方なく(?)別館の「飛鳥の湯」を選択した。こちらも趣きのある温泉銭湯だった。


 湯を堪能した後、鯛めしを食し、その後一路北に。

 けど、雨足はどんどん強くなり。


 〝しまなみ海道〟は、雨雲と霧に沈み。

 でも後になって(負け惜しみがてら)思い返したら、晴れていたら逆に目移りして、余計疲れてしまったかも。


 本州に入り、〝やまなみ街道〟(高速尾道道・松江道)では、雨は気にならなくなり、いつの間にか止んでいた。そして、出雲に入り。


 出雲の宿として選んだのは、「月夜のうさぎ」。実は、ここに来るのは二度目。以前は約六年前で、この宿が開業した直後だった。まぁそれはともかく、ちょうど母の誕生日が近いということで、「バースデープラン」を選択したところ、過剰なほどのサービスをしてもらえた。


 そして、ツアータイトルの〝夕食〟。

 いや、美味しかったよ。バイキング形式だから何度かお替りさせてもらったし。

 透析中で食事制限されている母も気にせずお替り(二巡目)に突撃していたし。


 でも、さ。


 これをツアータイトルにするのは、ちょっと格が不足しているんじゃないの? ……「郷土料理」と呼べるものはなかったし。

(3,447文字:2022/06/13初稿 2022/06/14投稿予約 2022/06/17 14:00掲載 2022/06/18誤字修正)

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