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鎧戦記  作者: 銃弾弾く鎧がみたい
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五話

(削除する覚悟)完了


練兵過程も前世で見た鬼軍曹のマネで順調にこなし、いよいよ卒業。

 まだ9歳だと言うのに訓練学校の予備大尉から装甲中尉となり、装甲小隊12人を束ねる立場となった。

 俺を卒業させるかについての議論もあったようだが、内戦が予想よりも長引いているという事で卒業となったわけだ。コミー共に災いあれ。

 アナ皇女殿下は軍学校へと進学なされた。持つべきは権力というのが分かるというもの。


 俺は小隊員12人を与えられ、難なく掌握。小隊を掌握する過程は、特段珍しいことでもなく、実力主義な連合兵士に力を見せつけ、飴と鞭を使い分けることによって掌握。貴族出の奴らの掌握はまだ未熟だが仕方あるまい。

 そして我ら小隊は未だ反乱軍の抵抗が続く南部へと着任することとなった。実戦というやつだ。

 まさか前線に送られるとは、最高じゃないか。


 「大尉から連絡! 敵塹壕を速やかに突破せよと!」

 「塹壕に600秒の砲撃を要請! 偵察型も工兵と協力し迫撃砲を叩き込んでやれ!」

 「中尉! 敵が塹壕から出てきました!」

 「迫撃砲は砲撃が止み次第止め歩兵を援護するため重機関銃にて移動弾幕射撃! 突撃兵と対戦車兵は俺に続け! 砲撃が止み次第塹壕を突破する! ヴコル少尉は分隊を率いて俺の横に来い!」

 「了解です! 第一分隊集合!」


 血と硝煙漂う戦場からこんにちは。

 俺の装甲が弾を弾く音を聞きながら準備砲撃の後に進軍。

 敵は時代遅れの小銃しか持っていない上、大砲も此方の偵察兵の活躍により場所が割れ、此方の砲撃により破壊されている。そして敵の装甲兵は此方の対戦車兵の50ミリ砲の狙撃によって破壊されており、後は雑兵のみだ。凝った戦術など必要ではない。

 履帯を下ろし、俺を中心として魚鱗のような陣形を組み敵の塹壕へまっすぐに。

 俺の横には同じような陣を組んで突撃する俺によく従ってくれるヴコル少尉がいる。


 敵が撃ってくる弾は全てが効かず、そのすべてが跳ね返される。顔を恐怖に染めて投げてくる手榴弾も片手でキャッチし投げ返す。出てきた敵は此方の12.7重機関銃でばらばらにし、念の為塹壕へと射撃をしながら突っ込み、塹壕を制圧。

 逃げ出す敵を後ろから撃ち、漏れた敵を追おうとする隊員を止める。

 まだ一つの塹壕を突破したに過ぎない。後ろにはまだまだ塹壕があり、その中に敵が控えているし、対戦車砲が構えられているかもしれない。なのでやることと言えば逃げている敵を背後から撃つくらいだ。敵の迫撃砲が生きていれば前へと進んだかもしれないが、破壊されている。

 それに、命令はここの奪取だ。


 「今が好機です! 攻めましょう!」

 「目的は達した。それに、突き進んで囲まれても知らんぞ」

 「ですが……!」


 ち、装甲兵特有の満身ほど面倒なものはない。

 自分は弾を受けても問題ない。これを着てさえいれば不死身。

 なんて思い上がった思考は隊を危険に晒す。一人の無能で全員が巻き添えを食うのだ。


 「では貴様一人で行ってくるがいい。ああ、その際にはその鎧は置いていけよ?」

 「……チッ、留まります」

 「懸命だ」


 特に貴族出身は思い上がりが大きいように思う。

 市民出も勿論思い上がるフシはあるが、貴族よりは少ない。それにこいつらは奴らを殺すときに邪魔になるだろう。

 ……少し特別任務でも与えてやるか。



 :隊員


 今日の攻勢が終わり、同じ貴族出身の連中と飯を取る。

 市民連中と飯を取るなんてとんでもない。市民と飯を取る奇特なやつもいるようだが、同じ隊だという事だけでも業腹だと言うのに飯までも同じ。これが不味いったらない。まるで家畜の餌でもくているかのようだ。

 うちの小隊長も市民出だ。これが鼻持ちならない。

 農民と同じような扱いをし、敵が敗走しているというのに後ろから撃つだけ。

 追撃し、次の陣地を攻略したほうが良いだろうに。歩兵の到着を待つまでもない。我ら装甲兵が突撃すれば、ただの歩兵など取るに足らない。


 「貴様ら、特別任務だ」


 そうやって中尉の悪口で盛り上がっていると、気配もなく後ろから声がかけられ、驚いた。しかも今日捕らえた捕虜も一人連れて。

 しかし、特別任務とはなんだろうか。

 

 「何、上層部が貴様ら貴族を重用すると決めてな。これから夜襲を始める」


 にわかに色めき立つ仲間たち。それもそうだ、やっと俺達の価値に気づいたか。

 遅いくらいだがまあ良い。参加してやろうではないか。


 「それでは行くぞ。小銃とその他装備だけ持っていく」

 

 鎧は、着ないのだろうか。

 あれがなければすぐに死んでしまう。


 「貴様らができないのならば問題ない。上に報告するだけだ」


 舐められている。

 そう感じた俺達は立ち上がり各々準備を始めた。

 背嚢を背負い、小銃も中尉から渡されたものを受け取り準備が完了。

 満月の中、誰にも見られないよう陣地を離れ、猿轡を噛まされている捕虜を連れた中尉を先頭に森へと分け入っていく。


 「中尉殿、その捕虜は?」

 「ああ、案内係だ」


 不審に思いながらも一応は納得し、再び進む。

 十分は歩いただろうか。その時、中尉が振り返り、おもむろに陣地へと戻り始めた。

 怖気づいたか?


 「いやな、無線機を忘れてな。悪いな」


 無線? ち、本当に市民というのは。


 「少し待っていろ」


 そうして俺達から数メートル離れた所で、連れていた捕虜を撃ち殺した。そして振り返り、拳銃を俺達に向け、一人の頭を吹き飛ばした。

 なん……なんだと?


 「馬鹿な奴らは制御しやすくて助かる。特に貴様らのような連中は特にな」


 騙したのか貴様!

 だが何故味方の俺達を殺す!

 気でも狂ったか!


 「わからないのか? それならば死んで考えろ」


 罵詈雑言を吐き散らしたものの、奴は満月の元、薄ら笑いを浮かべるのみ。

 また一人撃たれ、俺と残ったもうひとりはこの悪魔に小銃を向け引き金を引くが、軽い金属音が虚しく響くだけ。


 「あっはっはっはっは! 貴様らは本当に馬鹿だな! 実弾入りを渡すと思っていたのか? こいつはおめでたい!」


 もうひとり射殺された所で、俺はかなわないと判断し、その場に止まり両手を上げた。

 これからは従順に従う! だから殺さないでほしい!


 「今更わかったところでもう遅い。しかし、貴族もこうなると哀れだな。笑えてくる」


 それにこの状況をどう説明するつもりなんだ。

 俺の助けがなければ言い逃れはできんぞ!


 「何のために捕虜を連れてきたと思う。このためだよ。貴様らは反乱軍に寝返るため捕虜の一人を連れていき、俺が見つけ投降をすすめるが反抗。仕方なく全員射殺。そういう筋書きだ――奴らを殺すのに邪魔なものはいらん」


 ふざけるな! 魔女に人狼にでも変えられたか!


 「最近良くその名を耳にするな。まあいい」


 薄ら笑いを浮かべ、無感情な目で此方を見下ろすその姿は間違いない。

 人間から人狼へと変えられた怪物、ヴルドラク。ああ、神よ。



 :ソコロフ


 万事順調。

 不穏分子はすべて処理し陣地へと戻り一芝居うって報告書を作成。提出。

 怪しげな目で見られたものの問題ない。捕虜は俺が秘密裏に隠していたし、管理も杜撰で人数も多かったからばれない。バレないようにした。

 これで枕を高くして眠れるというものだ。


 そして、翌日からは戦線を押し上げ続け。半月もするとコミー共をミクリア半島へと押し込めた。敵軍が赤軍であるからして、武器の供与は本来どこも行わないはずなのだが、どうやら内戦を長引かせたい勢力がいるらしく、連邦製、合衆国製と思われる武器や鎧が見つかっている。

 おいおい、どちらも我が連合と取引をしているではないか。一体全体どうしたというのか。海の向こうから取ってきたとでも言うのかな?


 赤軍にとっては猫の手も借りたい事態であり、どうにかしたいだろうがこの戦局で左右するであろう重要な通過地点であるシシュヴァー湾とペレコプ地峡はほぼほぼ抑えており、奴らはもう通過できない。とはいってもすべてを制圧したわけではないので油断はできないのだが。


 この日、俺達小隊は巡回を命じられており、いつもの巡回ルートを通っていた時、先行していた偵察兵の一人が慌てて帰ってくるものだからどうしたのかと問うと、恐らくは大隊規模の敵の大勢力を発見したとのことだった。


 

 「大隊本部へと連絡! 敵の反攻勢力見ゆ! 歩兵大隊規模が浸透中! 撤退の許可を求めると!」

 「リょ、了解しました!」


 急ぎ大隊へと連絡をとっているこの偵察兵はヤコ伍長といい、貴族の中でも珍しい市民派で、よく少隊員たちと楽しそうに喋っているのを見かける。女のような男で、いつもおどおどとしている。

 

 「そんな! 撤退できなければ我々は犬死するだけです! 大尉! 大尉!」


 ああ、報告を聞かなくても分かる。

 撤退は許可できんのだろう。


 「なんと?」

 「て、撤退は許可できない。即応部隊到着まできゅ、900秒は耐えろと」

 「そうか。では、精々遅滞戦闘に務めるとしよう」


 その報告に我ら小隊員12名は悲しみに暮れるものがほとんどであった。

 それもそうだろう。小隊と大隊、どちらが勝つ? ランチェスターの法則を引っ張り出すまでもなく明らかであり、覆らない。だが、それは数の差であり、武器の差はまだ拮抗はせずとも負けてはいない。

 それはイコール負けるということなのだがな。

 明らかに動揺して意味不明な思考になっているのを自覚する中、落ち着くために小隊へと声をかける。


 「小隊諸君。ここでもし撤退すれば軍法会議にかけられ銃殺が決まる。だが、ここで戦えば名誉の戦死となる」


 名誉が何だというのだ。

 生きていなければ何の意味もありはしない。

 俺の口からこんな言葉が出るとは、全くもって笑えるではないか。

 だが、彼奴等に一矢報いれるというのならそれもそれでいいだろう。


 「ふは、だが同士諸君、嘆くことはない。諸君にはこの私がついている。それに信じる仲間もだ。諸君らの大多数は死ぬであろうが、少数は生きて帰れる。私が保証しよう。全く、今日は死ぬには良い日ではないか」


 死ぬのに良い日なんてない。そんな意味を込めた皮肉。

 どうやら、こんな演説にもなっていない演説でもやる気は見せ始めている。

 どうにか、戦闘はできそうだ。この国の兵士はとにかく愛国心が強い。

 さてはて、どうするか。


 「それでは戦闘配置だ。ツァーリの尖兵たる我らの力を見せつけるぞ!」

 『ウラァァァァアアアアァァ!!』

 「同志諸君! 縦深陣地を形成! 敵を寄せ付けぬよう、部隊が到着するまで弾幕を張るぞ! 弾が切れれば近接戦へと移行! ナイフ持ちはナイフで、パイルバンカーは一度射出したら槍として扱え!」


 素早く縦深陣地を形成し、ヘルムに搭載されている三倍望遠がおよそ1キロメートル先まで迫っている敵軍を発見。それに向けて対戦車兵の50ミリ砲が吼えた。


 「最初は徹甲弾を使っていけ! それが切れれば榴弾! 奴らは散兵などせん!」


 ろくな将軍がいない向こうは、此方が寡兵であると見て取っているので素早く撃破したいだろう。だから人海戦術によっての突撃を敢行してくる。

 だから偵察兵が持っている迫撃砲が刺さる。

 砲弾自体そこまでないためすぐに終わるが、それまでに敵の足は少しでも止められる。

 そして此方の偵察兵は熟練。素早く腰についている迫撃砲を設置、位置を調整し見事に敵の前線に着弾させてくれる。

 本当に、ここで死なせるのは惜しい。


 重機関銃、大砲が火を吹き、空からは火薬の雨を降らせる。

 それでも敵の進撃は止まらない。13人を相手にすでに何百人と倒されようと止まることを知らない。


 「銃身が焼け付くまで撃ち続けろ! どうせ向こうに弾薬は持っていけん!」

 「中尉! 迫撃砲弾が切れました!」

 「対戦車兵の影に隠れて左右を軽機関銃で狙え!」


 弾が鎧を叩くのをどこか遠くに聞きながら撃ち続ける。

 銃身が融点を超え、火が立ち上り焼け落ちようと持ち手の木が燃えようとも気にしない。

 これが複雑な機構の重機関銃ならば壊れていたが、これは簡素で丈夫なロマノ連合製。弾が切れる迄撃ち続けられた。


 「中尉! 弾が切れました!」

 「此方もです! 誰か余ってないか!」

 「砲弾も底をつきました!」


 聞こえてくる弾切れの大合唱。

 俺の分の弾も全て撃ち尽くし、もう近接専用のパイルバンカーとナイフしかない。

 いよいよ年貢の納め時が近づいてきた。まあ、どこに何を収めるかなどわからないのだが。


 「さて同志諸君。楽しい楽しい近接戦と行くぞ。履帯を回してひき肉にしてやれ、ナイフでミンチにしてやれ、パイルバンカーで串刺しにしてやれ。我らがツァーリの威光を示す時。近接装備以外は置いていけ、重いままではカリノフ橋は渡れんぞ。さぁ、突撃だ」

 『ウラァァァァアアアア!!!』


 総員履帯を下ろし、突撃。

 俺が先頭に立ち、向かってくる鉛玉最初に接敵。銃をアホ面で構えていた男に金属の塊がぶつかる。

 すると吹き飛ぶ。簡単なことであった。後はパイルバンカーを一人の敵に射出し串刺しにした後は敵を放り捨て、槍として扱い、近接用ナイフも装備しての二刀流で敵を突き殺し、斬り殺し、刺し殺す。

 

 「同志! お先に!」

 「ああ! 先に渡っていろ!」


 囲まれ、魔力循環装置が壊されかかったヴコル少尉が対戦車手榴弾を炸裂させた。

 轟音とともに肉片が飛び散り、装甲も飛び散る。

 それが3回繰り返された後、背中に背負う循環装置を壊されまいと10人で円を描くように背中合わせになって襲い来る敵を退かせる。

 

 「1時方向! 対戦車砲!」


 視線を向ければ、たしかに準備しているのが見えた。

 だが、此方に群がっている敵も同時に巻き込む様子だ。

 射線の先は、ヤコか。



 :ヤコ


 最初見た時は可愛い子供だな、何でこんな戦地に、位の印象。

 でも、戦闘を重ねるにつれてその子供が、ひどく冷静で頼りになる上官だと気づくのにそう時間はかからなかった。

 そして公平な人、貴族も平民もなく平等に接する。

 でも、ただ一つだけ公平ではなかったとするならば、それは馬鹿な貴族連中に対して。


 「おいヤコ、平民臭いのと食事するよりこっち来いよ」


 こういう奴ら。

 僕は貴族でももう没落寸前だから平民と大差なくて、昔から遊び相手は平民の子供ばかりだったから貴族という認識も薄い。

 だからこういうのを見ると滅茶苦茶ムカつく。しかも平然と平民出の小隊員の前で言うから更に。


 「今どきそんなの気にするの? 遅れてるし、僕は貴族なんて意識はない」

 「ははは、そうか。どうやら人気取りに忙しいらしい。あの子供にも尻尾振ってるのか?」

 「何だって?」


 つい、頭に血が上ってにらみつけると、ニヤニヤしながら取り巻き達と近づいてきた。

 僕も立ち上がって近づく。ボコボコになっても知ったことか。

 後ろにいた平民の仲間も立ち上がって近づいてきている。

 

 「何をしている」


 その時、鈴のような、凛とした声が響いた。

 声の先を見てみると、睨み合っている僕たちを呆れた様子で見ている中尉がいた。


 「おや、中尉殿。中尉殿も人気取りに?」

 「何を言っているか知らんが、また別々に食事をとる気か」

 「そうですが?」

 「私の目の前でそんな事はさせん。大人しくテーブルにつけ。つく気がないなら外で食べていろ無能共」

 「なんだと? このガキ」


 馬鹿がそういった瞬間、中尉は腰の拳銃を抜き放ちその馬鹿の足元へと発砲した。

 流石にびっくりして、後ろに下がってしまったのは普通だと思う。


 「上官を侮辱したな? 略式で銃殺とする」


 嘘だと思うのだけれど、この中尉の目はいつも本気で。冗談を言ったところは数回しかないと思う。

 銃殺は流石に極端にすぎると思うけど。でも、胸がすっとした。

 

 「じょ、冗談です同志中尉」

 「では外で食べておけ」

 「り、了解です」


 馬鹿たちが敬礼を返したのを見ると満足そうにうなずいて拳銃を仕舞い、あるきさるその背中を見送った。

 その時に、この人ならばどこまでもついていけると確信した。



 「1時方向! 対戦車砲!」


 でも、僕の人生はここまでと知った時、怖いと思うと同時に、中尉ともっと先を歩きたかったという悔しさだった。


 「お先に失礼します。同志」


 だから後ろから蹴られて、転がった時は驚いた。

 死んでいないし、どこも穴が空いていないから。でも、慌てて振り返ってみると、中尉の踝から先が装甲を撒き散らしながらばらばらになって、巨体が倒れた。

 それをゆっくりとした世界の中で眺め、無意識に名前を呼んだ。


 「ミール中尉!」

 「構うな! 早く起きて応戦しろ!」


 ハッとして、循環装置を狙っていた敵をナイフで刺し殺して中尉のもとまで戻る。


 「中尉を中心にしろ! 援軍までもう少しだ!」

 「構うなと言っただろう! 戦える!」


 確かに足先は循環スーツが通っていない分動けるけど!

 と、中尉は構わず不安定になりながらも起き上がって武器を振るい始めた。

 本当にこの人は不器用だけど優しくて、公平で、頼りになる。まるで狼の群れの長のように。


 「同志を救出しろ! 突撃!」


 やっと援軍も来たみたいだ。

 どうやら、僕らは助かったようだ。

 安堵に包まれて、ほっと息を吐きそうになった。


 「もう一射来ます!」


 でも、それは敵の対戦車弾が中尉に命中するまでの話。




 :ソコロフ


 ヤコを体が勝手に動いて助けた後は、バランスが取れない中で援軍が来るまで奮闘した。

 やっと援軍が来たと思えば、俺を狙っての一射。咄嗟に腕を十字にするクロスアームブロックで体の中心を守ったが、砲弾は体にめり込み、その衝撃で俺は気絶した。

 

 


 ふ、と目を覚ますと白い天井が最初に見えて。

 つい、生きていると知って安心してポツリと呟いた。


 「知らない天井だ」


 天井を見れば言いたくなるワードナンバーワンだろう。


 「起きられました!」


 おや、ナースさんがいた様子。

 恥ずかしい呟きを聞かれはしたが、まあ問題ない。

 今なら空も飛べそうな気分だ。なんせ生きている。五体も無事。

 子供体型で良かったー!

 今なら神に感謝――



 「ミール・ソコロフ装甲中尉。貴君は反乱軍との戦闘において満身創痍となりながらも極めて重要な要所を守り、敵を多数打ち破ったことにより敵大隊の進行を阻止した。これによってほまれ高く、第一号である銀盾防衛勲章を贈呈するものであり、銀狼の二つ名も送るものとする。おめでとう」



 ――できそうもない。



 完全にエース扱いのそれではないか! なんだ二つ名とは! 銀狼とはなんだ! 背中がムズムズする! 他の小隊員はどうした!

(頭が)もう限界なの

誰か書いて

フルプレートアーマーはいいぞフルプレートアーマーはいいぞフルプレートアーマーはいいぞ


カリノフ橋とはこっちで言う三途の川みたいなものです。

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