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鎧戦記  作者: 銃弾弾く鎧がみたい
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三話

反応があれな場合に備えて消す準備はできてます。

 士官学校、演習場。そこで事件は起きた。

 最初に気付いたのは監督官だったが、演習場は広く銃声が絶えず鳴り響いているため、遅れてしまった。

 気づけた要因としては悲痛な叫び声につられ、演習場が静まっていったことだろう。助けを乞うような、そんな悲鳴。

 その出処を見て監督官は驚いた、鎧の頭がなくなり、次は人間の頭部がある全身鎧の胸部へと対装甲兵用パイルバンカーを射出していたのだ。


 中の人間は死んだかと思われたが、未だ声を上げているのでギリギリのところで止めたのだろう。

 だとしても狂っているが。


 とにかく止めねばなるまい。

 今は少将閣下が視察できているのだ。滑稽な所を見られて立場が危うくなるなど冗談ではない。

 止めるべく声を張り上げようとした矢先、件の少将閣下が此方を手で制した。


 「最後まで見てみようではないか」

 「……は」


 


 入学して俺は座学成績をトップで駆け抜け、実技に関しても最初は苦労しながらも上がっていき、予備少尉まで半年で駆け上がった。


 そこで学生での小隊を任されたのだが、少数の人間が俺を舐め、命令に従わないばかりか反抗的な態度に侮辱を何度も繰り返す。

 他の小隊員もそれを窘めず笑ってみたいたことから同罪だ。

 やはり仏の顔もという言葉がある通り、仏の顔を殴打した奴らに我慢の限界にきた俺は演習場でぶちかました。


 「今回、我々はアナ予備大尉率いる中隊との模擬戦闘を行う。フィールドは平野。此方は防御側となり、一定数時間目標を守れば此方側の勝利となる。質問は」


 俺は今回対戦車兵のため装甲は分厚く、武装は14式追加装甲――タワーシールド――にペイントボール入りの50ミリ対戦車砲。予備には火薬をうっかり取るのを忘れていつでも発射可能な対戦車兵用パイルバンカーに12.7ミリ重機関銃。

 しかし、魔導鎧に乗り込んでいるので身長は大体一緒で同じ目線で話ができるのはありがたい。首が痛くならないからな。


 「はい、質問よろしいでしょうか予備少尉殿?」


 やる気のない挙手で質問をしてきたのはドナート予備准尉。

 こいつやこいつの取り巻きが主に命令違反を行う。貴族の子弟だか知らんが随分と偉そうに。今の所貴様らは反乱分子なのだぞ。


 「構わん」

 「敵は数や速度を活かして横列での突撃を敢行してくると予想できますがどうするので?」

 「偵察型もか?」

 「そうですが?」


 ……何? 数を生かしての突撃? 迫撃砲を持った偵察型も一緒に? それでは後方からの火力支援もないではないか。 しかも横列だと? いつの時代を生きているのだこいつは。

 ……こいつは馬鹿なのか? おちょくっているのか?


 「それは……更に具体的に言えばどのような突撃が予想される」

 「は? 今言った通りでしかありませんが」

 

 そうか、馬鹿なのか。軍事的リソースを前線に全て使うと。ただ前進して撃ってくるだけだと。

 戦列歩兵の時代はもうとうに通り越しているのだぞ。ウジ虫が。

 いや、しかし今の時代を思えば電撃戦は勿論、縦深攻撃や縦深防御、それによる機動防御も考えられていない時代だ。塹壕の中で敵が突撃してくるのを待つか此方が先に突撃するか。

 だがしかし後方からの火力援護は十分にあったはずだ。それを考えに入れていないとはウジ虫以下のようだ。

 

 

 「もし相手がそのように攻めてくるのならば、こちらは鶴翼陣を狭めた縦に深い陣地を展開する。左右の部隊の対策のため機動遊撃部隊を編成。陣地は左右中央には突撃兵を配置し。後方左右には火力支援として対戦車兵や」

 「ぷは、ははははは」


 説明してやろうという時に、質問してきた男が吹き出して笑う。

 やはり子供、勉強ができるだけ、意味のない作戦を平然という、予備少尉になったのもなにかしたのだと言い始めた。

 それにつられ周囲までもが笑い始めるので、しょうがなく火薬入りのパイルバンカーを構え、カメラが搭載されている魔導鎧の頭部を吹き飛ばし、人間の頭が存在する部位である胸へとその先端を突きつけた。

 今まで十回ほど馬鹿にされ、集合時間を10分も過ぎて現れるなど。笑って返していたが、学んだ。

 飴だけではだめなのだと。強烈な鞭がなければだめなのだと。


 「何度命令違反を繰り返した? 何度私に、上官に反抗的な態度をとった? 答えろ」

 「ひ、ひ……覚えて、ない」

 「何だと? 覚えていない? 命令違反だけではなくその回数さえ覚えていないのか。お前は何だ? 本当に同じ人間か?」

 「に、人間だ、この狂人……!」

 「ほう、人間と言い張るか。ならばどれ、上官への侮辱や反抗の厳罰ついでに血の色を見てやろう」 

 「やめなさい! 何をしているのですか!」


 更に鞭をくれてやろうと腕に力を入れ杭を入れ込もうとした矢先、対戦車兵の装甲をさらに分厚くし白色が特徴の専用機が俺の腕を掴んだ。

 皇女でありながら奇特にも軍隊へと入った変わり者。銀髪黒目で大体が振り向くであろう美貌の持ち主。第四皇女様であらせられるアナ・ニコラエバ・ロマノだ。


 「これは、第四皇女殿」

 「今は第四皇女ではありません。予備大尉で貴方の上官です。ミール・ソコロフ予備中尉」

 「失礼しました……この者が何度も命令違反を繰り返し、小官を侮辱。上官を侮辱、反抗するので体に覚えさせようとしたのであります」

 「だとしても、やりすぎです。他に方法はあったでしょう」

 「は、短慮に過ぎました。誠に申し訳ありません」

 「そこのあなたも、ミール予備少尉のことを年齢で下に見たのでしょうが。ここでは実力が全てです。年下に命令されるのが嫌であれば今すぐここを……軍をやめることです」

 「も、申し訳ありませんアナ予備大尉殿」


 おとなしく腕をおろし、皇女様のありがたいお話を聞き反省。はしない。


 その後、始末書を欠かされたが問題なく終わり。次の日の最初は座学だ。




 楽しい楽しい座学の時間。

 魔力、それの基本、応用。魔導鎧の基礎について。


 魔力というのは昔から認知されていたものの無い人間もおり、何に使うかは全くもって分からなかっが最近になり隣国の帝国科学者が電気に変わる代物として発見し、論文を発表した。要は無害な大容量生体電気ということらしい。火気厳禁と思われるが、使用を意識しない限りは問題ない。

 その論文に伴い世界でどうやって使うかの研究が行われ、最初は作業補助の強化外骨格が作られ、それに目をつけた世界の軍部たちが遅いか早いかの違いで兵器化に成功。俺達は兵器の生体電池というわけだ。


 魔力量とは、簡単な話で大きいのと小さいのどちらがより入るか、それだけの話しである。大は小を兼ねるということだ。

 なので、手短に割愛され次には魔力を鎧についている魔力循環装置へとどれくらい注ぐかの話になってくる。

 今量産されている鎧は――装置へと循環させる魔力量を一律で0から100へと規定し――歩きながらの戦闘では30の魔力を注がねばならず、走りながらでは50の魔力を、履帯を使用する場合には60から100を。まあ、鉄の塊を動かすのだから当然といえば当然だが。

 勿論、消費すればなくなる為乱用は出来ない。なくなった場合は良くて気絶、悪くて昏睡状態にまで入る。

 だが消費されるものというものは補充されるもので、補充される魔力は200を上限にして、多いもので一日で150、少ないものでは50となる。

 なので戦力の均一化のため、魔力量や補充魔力量に応じて装甲兵の中でも兵科が決められる。多いものは突撃兵か重い兵器を扱う対戦車兵。少ないものは偵察兵へと割り振られる。


 今はまだ初期型のため魔力循環効率が悪いものの、改良型は更に効率を良くするため注ぐ魔力を少なく出来るため、オプションパーツの追加も検討されている。

 だが、新型装備だけに割高で、今の所初期型の循環装置で頑張らねばならないようだ。

 装甲の部分は魔力を使った合金製で、前世で言うAK47の弾薬7.62ミリ弾は容易く弾く。それでも次期主力戦車よりはまだ安くすむのだが、問題は魔力循環装置に、それをめぐる配線にそれを保護するためのスーツ――総じて循環スーツ――これらが高い。

 だから最悪鎧は壊れてもいいが中まで弾が入れば、配線が切れて動かなくなり、循環装置が暴走を起こし壊れてしまう。しかし利点もあって、使い回せるというのがある。


 鎧の構造としては簡単に言ってしまえば外側から、鎧、魔力浸透フィルタ、循環スーツとなる。

 なので、装甲がだめになれば循環スーツを引っ張り出し、次の鎧へと入れ直せばそれで終りとなる。つまりは循環スーツが生きていれば何度でも再利用可能でき、熟練した兵士が死に難くなり、戦闘に復帰するのも早い。利点が多いのだ。

 だが一体型というものもあり、それは着脱式に比べて反応速度や魔力の伝達率に明らかな差がある。コスト度外視で見れば明らかに一体型のほうが良いだろうが、此方は主に指揮官用だろう。


 今現在先進国が戦車や航空機と同様にこぞって開発競争を繰り広げている。

 

 我々帝国は魔導鎧先進国に名を連ねているが、トップを走るのは勿論の事隣国、ロム帝国。

 どうやらマッドでサイエンティズムな輩が多いようで次々と新型を開発している。向こうは複雑で超高性能。此方は簡素で高性能を目指しているようだ。


 「では、装甲兵の有効的な運用方法を考え、レポートに纏めて来ること」


 レポートか。その単語を聞いただけで気が滅入るが、上に気に入られるため持ちうる限りの知識をレポートにまとめようではないか。

 


 

 さて、後の授業はすべて物理や数学、語学となっている。

 これらはすべて学習対象でありすべての点数によっても階級は上下するため気を抜けない。


 社会学に関して言えば、目からウロコの話ではなかった。

 どうもこの世界は第一次大戦がベースのようで、世界列強が水面下でバチバチと火花を散らしているが、表面上は皆仲良くしているので水面で泳ぐ白鳥のような様相を呈している。


 我が帝国とブリタニア連邦は協商を結んでおり(今の所危ういが)ロム帝国隣のガリア共和国とは軍事同盟を結んでいる。

 そしてなんと、我が帝国は奇跡的にも南下政策は行っておらず、内々で頑張りましょうねという富国政策を打ち出し、天然資源の探査や東部、極東の開発に乗り出した挙げ句シベリア鉄道を伸ばしに伸ばしまくって全土へと物資を行き渡らせている。勿論輸送機もフル稼働だ。

 そして皇国や合衆国とは貿易協定が結ばれている。それにより我が国は資本主義寄りにもなってきている。

 しかし我が帝国の財政は火の車。貿易や協商で稼いでいるが新型の魔導鎧に戦車や航空機の研究開発。歩兵装備の改善も。

 蔵相であるルゲイ・ウィットが頑張っているらしいが火にスポイトの水をかけているくらいだ。

 もし、ブリタニア連邦との協商も打ち切られれば火の車に油を注ぎ、焼け落ちること請け合いだ。

 


 だが、情報収集をしている過程でどうにも、我が連合とロム帝国で同盟を締結させようとしている動きがあるようだ。我が連合国境に張り付いているロム帝国兵士もハリボテとの噂もある。本当かどうかは定かではないが。

 まあ、海の向こう側と取引するよりかは地続きのお隣と甘い関係になったほうが良いだろう。

 もしそうなったとしても領土通過や軍事技術や疑心暗鬼もあるだろう。二重帝国にでもならない限りはそう簡単に実現はできない。

 そしてまずは中での戦争を終わらせなければ話にもならない。

 


 我が帝国に関して言えば、皇帝のウルトラCにより赤の津波は少しはどうにかなり、お国柄の派閥争いも絶大なる人気を得ている皇帝の存命によって沈静化しているが、それでも抑えきれずに反乱軍共に加勢している派閥もある。

 しかし、トルーピヨ首相という皇帝大好きおじさんが水面下で他の派閥をゆっくりと確実に吸収していっているようで、ラジオで聞こえてくるのは党からの離党だ。

 ただ、帝政に戻るような気配はなく、皇帝はラジオで陽気な調子で度々立憲と参政権の自由を謳っている。それで良いのか。立憲だぞ。


 そんなこんな、割と平和な日常で士官学校生活は過ぎていき。

 新入生の練兵に加え、南部での捕虜銃殺を行うこととなった。

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