表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎧戦記  作者: 銃弾弾く鎧がみたい
1/5

一話

第一話と言いつつプロローグ兼簡単な歴史紹介です。

歴史紹介については特段みなくても問題ありません。突っ込みどころしかないので。

 とある大森林、降りしきる雪の中で無数の蛸壺が掘られ、縦も横も大人二人分以上もある大きさの全身鎧を身にまとった男たちが談笑に興じていた。


 「鎧の中まで冷たくなってきそうだな」

 「お前は偵察型だから寒くねえだろ。てか迫撃砲どうした」

 「二時間前の砲撃で俺のはもうねえよ。ああ、タバコ吸いてえ」

 「エウゲニー、鎧の外に出るのはやめとけ。同士大尉に見つかったら殺されるぞ」


 だよな、と三人目の男は嘆息し蛸壺の斜面へと背中を預け欠伸をこぼす。

 それをみたエウゲニーと呼ばれた男は誘われるあくびを噛み殺しながら大森林の奥へと視線をやり、口を開いた。


 「足止めはしてるがそろそろ不味いんじゃないか? 退いたほうが」

 「そういうな、我々が今後退すれば作戦が崩れることになる」


 聞き馴染んだ声にまさかと三人が一斉に視線を向けた先には、三人がまとう鎧とはまた違った鎧を着た人物が立っていた。

 三人は思わずと立ち上がって敬礼しようとするが、大尉と呼ばれた人物はそのままで、と手で制した。


 「「「大尉殿!?」」」


 三人が弾かれたように顔を上げた先、目に入っているのは三人が着ている全身鎧とはまた違った鎧。

 グレートヘルム型の兜の目に当たる部分にはスリットが入っており中からは機械的に動くモノアイが覗く。

 鎧はマクシミリアン式の鎧に似ているが寸胴で分厚さが段違いであり、成人男性三人分といったところだろうか。避弾経始を意識した作りになっており、上から見れば丸みを帯びた三角のように見えるだろう。身長は三メートルほどもある。

 そして近代的な装備が所々に飾られ、ふくらはぎ横には履帯までもが取り付けられ。重機関銃をまるで小銃でも持つかのように気軽に持っている。


 「もう少し我慢してもらえるか。もう少しすれば左右の軍が我々を後退させてくれる」


 明るい口調で言う大尉に三人は顔を見合わせた後に、偵察型と呼ばれた比較的小柄で逆関節の鎧を着込んだ兵士が口を開く。


 「ですが同士大尉。噂では左右は総崩れし撤退を始めていると聞きます」

 「左右は我々と違い装甲兵は少ないないからな。多少は大目に見てやれ。しかしこれ以上撤退が続けば我々も退かざるを得んが……と、同士少佐を見なかったか?」


 思い出したように言う大尉の言葉に再び顔を見合わせた三人は首をひねる。


 「お前見たか?」

 「いや、二時間前の砲撃から見てねえな。お前は?」

 「……そういえば被害が多かったあっちの方で兵を見てました」


 三人の言葉に、困ったように肩を落とした大尉はため息を吐き、ふくらはぎ横の履帯を下ろした。

 履帯がしっかりと降りているか地面を踏みしめて確かめた後、モノアイを三人へと移した。


 「分かった……何度も言うが鎧の外には出るなよ。特にエウゲニ、貴様だ」

 「分かっております! 決して出ません!」

 「ははは、エウゲニーにゃ大尉の言葉が一番き――」


 一人が敬礼で答え、もう一人が笑ったその時、口笛のような音が上から響いてきた。


 「砲撃!」


 誰が言ったか、その言葉があちこちから響いてくるのと同時に地面が至るところから爆音と共に土を巻き上げて爆ぜ始めた。


 「全員蛸壺の中に入れ! 終わり次第負傷者がいないかの確認! 機関銃の準備も怠るな! 分かっているとは思うが戦車が出てくるようなら対戦車兵を援護しろ!」

 「大尉! 早く中に入って下さい!」

 「そこに私は入れんだろうが! 良いから入っていろ! 私は少佐を探す! それと盾もしっかり被っておけよ!」


 そう大尉は伝えると履帯を信地回転させ、激しい砲撃の中で雪と土を巻き上げながらどこかへと去っていく。

 それを見送った三人は蛸壺の脇においてあった全長三メートル、横幅二.五メートルの三角に曲がったタワーシールドを持ち頭上に掲げた。


 砲撃が豪雨のごとく降る中を走る大尉は少佐を探し、見たと言われている場所へと木々を避けながら雪を巻き上げ履帯を回す。

 そして、元は白であったであろう、汚れて灰色になって蛸壺から離れようとしている全身鎧を確認し速度を早めた。

 しかし、もう数メートルという所で直上から笛のような音が響き渡る。


 「くっそっが!」


 大尉は灰色の鎧――少佐――へと思いきり体をぶつけ吹き飛ばした。

 瞬間、大尉の後ろに砲弾が着弾。吹き飛ばされた大尉は雪を舞い上げながら腐葉土に落下。とはいえ、衝撃はある程度殺したのみなので中にいる大尉は息ができず、長方形のバックパックからは煙が吹いていた。

 

 「いつ……大尉! 何故このような……今後方に運びます! メフィスキー! 砲撃が終わり次第各中隊長へ伝令! エフセイ中尉が臨時に指揮を執るようにと!」

 「了解いたしました!」


 大尉は薄れゆく意識の中で悪態を吐く、指揮官が前線にいるほうが悪いと、何もなければお前なんぞかばわなかった、お前が死ねば俺のクビが飛ぶんだクソ、と。 


 「何で俺がこんな目に」



 帝歴1905年

 ロマノ帝国、その貧民区から誕生したとある扇動者により革命が起きる。後にフィブラリ革命と呼ばれたこの革命は帝国を打倒せんとしていた。そこで時の皇帝サンドロ二世は議会の設立に勅令を出し、立憲君主制へと移った。そして、市民へと当時普及していた魔導式ラジオにて宗教や言論の自由、集会に結社の自由、更には女性への参政権、経済の自由化、そして後にRI法と呼ばれる様々な自由も認めた事で事態は沈静化--急な勅令による市民の混乱はあったものの--扇動者とその思想に感化された革命家達は海外に逃亡、再起の機会を図ることになる。

 そして中央政府は、独立したがっていた国々を独立させる代わりに君主を帝国の皇帝とすることを条件に出し、それぞれが喜んで飲んだことによって物的同君連合へと変わり、国名もロマノ帝国からロマノ連合国へと名前を変えた。


 女性参政権やRI法は半ばサンドロ二世の強行で行ったため多くの貴族からの反発を受けた。しかし、サンドロ二世は頑なとして譲らなかった。

 これにより皇帝と貴族は更なる溝を生むこととなった。


 もともと、即位した段階で農奴解放やゼムトヴォ――関節政治――などにより市民寄りな政策を打ち出していた後、貴族が食堂を占拠し農民議員が屋外で食べていると聞いたサンドロ二世は激怒し、貴族を屋外へと農民議員を屋内で食べさせるようにした。

 これは軍や警察を使っての監視も行われたために全土で貴族の大反発を招き、皇室の相談役であり僧であったエフィ・スプーチンに諭されたことにより同じ食堂で食べるよう緩和された。これによって最初の溝が生まれたのだった。


 統一歴1912年

 バルカ湖北方にある金鉱でストライキが発生。その鎮圧に軍隊が導入されたが、サンドロ二世が無理を言って共に向かい。止めようとする親衛隊達までも強引に突破して労働者たちの話を聞き、謝罪の言葉とともに立憲君主だということを忘れ劣悪な労働環境を改善すると約束しストライキは収まった。

 そして実際に――立憲主義へと変わったとは言え、変わったばかりなので中央政府もサンドロ二世の言葉を無碍に出来ず。トルーピヨ首相も喜々として頷き――労働時間は15時間から9時間へと変わり、賃金も大幅に上がりよくわからない罰金も撤廃された。

 この労働改善はその土地で形を変えながらもロマノ帝国全土へと広げていった事により、市民は皇帝や中央政府を支持を上げて行くことになる。


 余談ではあるが、1900年のサンドロ二世の即位式では来訪した大群衆が順番待ちの混乱により事故が発生し多くが怪我をおった。その時、サンドロ二世は傷ついた群衆に心を砕き祝賀行事を取りやめ、人員を怪我人の治療へと回している。

 もし、この時何事もなかったように祝賀行事へと参加していればここまでの支持はなかったように思う。


 そして、この年に工業の重工業化が始まる。

 それに伴い帝国東部や極東の開発政策も同時にスタートした。


 帝歴1913年

 ルバト工場飛行機設計部設計家コルスキーが旅客機として四発機であるアグロンニを開発。度重なるテストや初飛行を経て、お披露目式にて首相であるトルーピヨや新しいものが好きであったサンドロ二世は大いに感激し大規模に導入することを決定。

 トルーピヨ首相は元の旅客機としての機能は勿論のこと、広大な国土へと物資を運ぶ輸送機としての稼働も決定し、主要な場所には飛行場を設置し、雪が積もっている場合でも問題ないように除雪車も作られることになる。これによってアグロンニはベリシア鉄道と共にロマノ帝国全土の物資を支える基盤となった。

 そして様々な作業を楽にするべく、隣の帝国が作成していた魔力を使い動く作業用全身鎧を参考に自国で作られた魔力式全身鎧――RB-13――が完成。

 一家に一台というお題目の元、ポスターやチラシ、ラジオなどでも宣伝されたものの市民にしては高価であったのと、使える人間が限られていたので出荷台数は控えめであった。しかし大きな農家や力仕事が多い現場では売れ、重宝され魔力持ちが良い仕事にありつけるなど雇用効果もあった。

 これに目をつけた軍部も多数購入しライセンスを取得、軍事利用の目的でも開発していくことになる。

 しかし、資金不足に陥っていった帝国はブリタニア連邦からきていた協商の提案を飲んだ。そして資源も足りず、物資も不安があったことから皇国と欧米へと援助を求めた。

 それによって生じるであろう不凍港の問題はすでになく。極東にあるトロパブロ不凍港から、物流中継地であるスチークートへの鉄道網はすでに完成しており、上でも述べた輸送機と合わせ運用していく算段となっている。


 そして、それを知らなかったサンドロ二世が私財を投じ大量に購入、ガスマスクを付けた型を危険な労働環境にいる労働者たちへと送った。

 トルーピヨや蔵相であるルゲイ、皇后に止められるも強行突破し住んでいた宮殿を政府へ売り払い、高価な調度品や家財も売却。

 これにより一家は宮殿からトルーピヨ首相が急いで用意した二階一戸建て護衛付きへと移り、平民のような生活へと変貌した。


 これがロマノ帝国全土へと報道されるとサンドロ二世の一家は市民たちからさらなる人気を得、各家にサンドロ二世一家の肖像画が置かれる事態にまで発生。

 この時、第四皇女であるアナが家計の負担を減らすために士官学校へと入学手続きを送り、受理されている。


 帝歴1915年

 いつの間にか帰ってきていた革命家達は労働者がすっかりと様変わりしているのを見てショックを受け、革命を諦めかけたが現政府や皇帝に反感を抱いていた貴族たちに目をつけ甘い言葉で籠絡し貴族たちの支持を受ける形で革命党を起こす。

 革命党は現政権を一切支持せずに扇動者が提起した卯月定立を表明した。 

 政府はこの提起された内容を鼻で笑ったものの、貴族たちが後ろについているのは見過ごせず、行動を監視するため秘密裏に警察を導入。これが後の秘密警察の基盤となった。


 そしてこの年の十月、革命党はクーデターを引き起こした。

 革命党は前々から暴力による革命を主張しており、それに同調した貴族たちの助力もえて決行。兵は主に貴族たちの私兵や派閥、革命家に賛同した者たちから構成されていた。

 ロマノ帝国は赤と白に分かれての内戦へと突入した。


 帝歴1916年

 貴族や革命党を中心に引き起こされた革命は貴族の手引きにより皇帝一家が住む地域と工業地帯へ侵攻。しかし、秘密警察によってその情報を得ていた政府は軍を待機させており、あっけなく鎮圧された。

 だが、革命軍は少数の部隊を万が一のためと秘密裏に別れさせていたため、本隊と軍が戦闘を開始すると同時に少数部隊も目を掻い潜りながら皇居へと接近、護衛と交戦状態に入るものの、護衛は最新式の戦闘用魔力式鎧――MA-1――を装着していたため小銃による弾が通らず鎮圧されたが、決死の覚悟で突破した一人が手榴弾を家へと投げ入れ、爆発。

 この時、小さかったアレクセイ皇太子が地下から抜け出して戦闘の様子を見ており、それに気付いたサンドロ二世はアレクセイ皇太子を連れ戻そうとした所に手榴弾が入ってきたため皇太子を咄嗟に庇い、重症を負ってしまった。

 鎮圧した護衛が急ぎ家へと入り、重症を負っていたサンドロ二世を発見。

 急ぎ病院へと運ばれ、一命は取り留めたものの下半身不随となってしまった。


 このニュースを聞いた首相は勿論、市民や労働者達は怒り狂い、軍へと志願するものが増えに増えてしまい一部拒否をした所、革命軍達を自前の銃や農具で追い回す事態にまで発展。 


 帝国の首都や工業地帯でのクーデターは鎮圧されたが、南部でも起こっていた。賛同したものは貴族以外では革命家の思想に共感した者たちや派閥以外殆どおらず、様々な政治工作はしていたものの、元々貴族が後ろ盾ということでその理想は破綻しており、そして皇帝への人気は絶大であった、それを害した革命党は市民や労働者階級からも白い目で見られていたため兵士が思うように集まらず、逆に勧誘すれば銃を持ち出され背中を撃たれ、農具で殺されたりと散々であった。

 しかし、革命軍は暴力と恐怖で一定数の人員を確保。そして農地も取り上げるなどをしてそれを元に南部で反攻作戦を開始。ミリクア半島まで反攻の軍事作戦を行うことになった。

言いたいことはわかります。

でも私は銃弾弾く鎧が見たい。

誰か書いて

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ