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8.滅亡

 ドタドタドタドタという音とともに敵が姿を見せる。

 その数およそ.......50ほど。


 先程まで戦っていた私やルイス、王宮から急いで駆けつけてくれたらしいアリアナだけでは人数的にも体力的にもきつい状況だ。


 だが、やるしかない。


「俺が先に突っ切ります。セレネとアリアナはついてきてください。」

「わかったわ。気を付けて。」

「セレーネフィア様のことはわたくしにお任せください。あなたはとにかく敵を倒してください。」


 簡単な確認ののち、すぐそこまで来ている敵兵へと突っ込む。


 ルイスは、剣を巧みに扱い敵を次々と倒している。

 アリアナも私と同様に短剣を使い、ルイスほどではないが一人ひとり確実に仕留めている。


 私も負けてられないわ!


 私も今までにないど必死に剣をふるった。

 だがそれでも、一斉に切りかかってこられるとさすがに対処しきれずに腕や足、背中など、いたるところに傷ができてきた。

 最初のうちは致命傷にはならないような攻撃にも対処していたが、もうそこまで手を回せずになってきたのだ。


 もう立っているだけでもつらい状況だが、本能的に体は動き続けていた......



 そして、気が付くとあたりに敵は見当たらなかった。こちらへ向かってきた敵は倒したのか、撤退したのか.......まあ、そんなことはどうでもいい。


 急に力が抜け、その場に座り込んだ。ここが戦場になっていなければそのまま倒れこんでしまっていたかもしれない。


「セレーネフィア様、大丈夫ですか?」


 だるい体を声の方へ向けると、いくつもの傷をつっくったアリアナがいた。


「大丈夫。アリアナこそ傷だらけじゃない。」


 お互いもうぼろぼろ。ここに敵が来たらろくに抵抗できないだろう。


 もうおしまいかな......なんてらしくないことを考えてしまう自分がいる。


 力を振り絞って立ち上がり、あたりを見渡す。


「ルイスは......あっちね。合流しましょう。」


 遠くから見たルイスもいたるところに傷を作っているのが分かった。


 でも、無事でよかった......


 まだ、助かった状況とは言えないなかだが、自然とそう感じた。


「ルイスー!大丈夫?」


 壁に体を預けていたルイスが私の姿を見て、笑みを浮かべた。


「俺は平気です。セレネは無事で......危ない!」


 突然ルイスが、叫んだ。


 え......?


 振り返ると、そこにはちょうど弓を放ったらしい兵がいた。慌ててよけようとするが、連戦の疲労や傷のせいでうまく動けない。

 普通なら一瞬で的を貫く弓が、今はなぜかスローモーションで見えた。


 もう、だめ......


 と思ったとき、突然目の前にアリアナが現れた。

 え......?

 私と目が合うと、私を安心させるような優しい笑みを浮かべた。


 はっ!と、私が目を見開いたとき、グザッ!と嫌な音が聞こえて、アリアナが、崩れ落ちた。

 背中には私を庇って矢が刺さっていた。


「あ、アリ、ア、ナ?」


 前で悲鳴が上がる。矢を射た男がルイスの投擲によって倒れていた。が、今の私にはそんなことは見えていなかった。


「アリアナ!アリアナ!しっかりして!目を開けて!」

「セレネ!アリアナは!?」

「ダメ!反応しないわ!」


 必死に二人で呼びかけると、うっすらと目を開けた。


「アリアナ!」

「セ、レーネ、フィア、さま。お逃げ、くだ、ブハッ、さい。どうか、生き、て......」


 それだけ言い残すと、本当に目を閉じてしまった。


 アリアナが死んだ?ありあながしんだ。アリアナが、死んだ。


 そう認識するのに時間がかかった。が、認識してしまった。


「あ、ああ、あああああああーーーーーー!」


 もうなにも考えられなかった。アリアナが死んだ。それだけが私の頭の中を回っていた。アリアナが浮かべた最後の笑みが離れない。


「くっ!セレネ逃げますよ!」


 そう聞こえると、腕を引っ張られた。抵抗する気にもなれず、半ば引っ張られる形でふらふらと走る。


「セレネ!しっかりしてください!捕まりたいんですか!?」

「ルイス......アリアナが......アリアナが......」

「アリアナに言われたでしょう!?生きて、と!彼女の最後の言葉をお忘れですか!?」


 そうだ......アリアナは最後、生きて、とそういった。

 どうして忘れていたのだろう......

 ごめんなさい、アリアナ。あなたの死を無駄にするところだったわ。


「ごめんなさい、ルイス。わたくしがどうかしていました。」

「ふっ、よかったです......さあ、逃げますよ!貴方様が生きている限り、この国は再建できます。」


 途中で敵からもらった(奪ったともいう)馬の前に私、後ろにルイスが座って、当初の予定通り外壁門へ向かい、脱出を急ぐ。


「しっかり捕まっていてくださいね!」

「わかっているわ!」


 もちろん途中で敵に遭遇したりするが、馬に乗っている私たちはそんなのお構いなしに、走り抜けている。途中で何人も跳ね飛ばしているが、仕方がない。


「見えました!一気に突っ切ります!」


 門には今まで遭遇してきた人数とは比べ物にならないほどの人数が確認できる。一度でも速度を緩めたら、格好の的になるだろう。


 スピードをさらに上げ、猛スピードで突っ込む。周りは敵だらけ、こちらは馬に捕まることで精一杯だが、当然相手は攻撃してくるわけで、矢や槍などとにかく攻撃を受ける。


 が、そんなことに構っていられず、まだ門の終わりはまだか、という思いだけが私の中にあった。

 数秒が何時間もあるように感じられた時だった。


 が、終わりは必ずやってくる。パッと視界が広がり、抜けたということがわかった。


 助かった.......


 と、思ったのは一瞬だけだった。


「ルイス!」


 ドサッという音と、後ろの気配がなくなるの感じ、振り返ると、そこには腕に深手を負い、動けないルイスが落馬していた。慌てて手綱をつかみ、ルイスを助けるべく戻る。


「行ってください!俺はもうだめです......必ず生きて、お幸せになってください!」


 次々と私に放たれる矢。それがルイスを助けにいけないと物語っている。


 ルイスを助けたい......その思いは変わらない。だが......


「ルイス!あなたも生きて、わたくしの元へ帰ってきなさい!」


 私の気持ちとは裏腹に、ルイスを見捨てるという選択肢を取ったのだ。

 まるで、アリアナがそうさせたように......

 そう思わないと私の心は壊れてしまいそうだった。


 けれど、それが最善の選択であったことに間違いはない。私は王族、いつも守られる存在。そんなことはもうとっくに理解している。

 アリアナも、ルイスも、みんな私のことを守ろうとしてくれた。

 それを、私が裏切ってはいけない。


 そう自分に言い聞かせて、心にふたをし、必死に馬を走らせる。振り返りたいが、グッと我慢して、自分が助かることだけに集中する。


 涙と大切な人たちを残して、私は闇に紛れたーーー




 この日はのちに『悪夢の一夜』と呼ばれることになる。

 王宮で働くものは毒で数日動けなかったことを除けばほぼ無傷。だが、王女セレーネフィアと王子ルウェリンレイは行方不明、王ベネディクトと王妃フローレンシアは死亡し、事実上フォルトゥーナ王国は滅亡するという悲惨な結果に終わったーーー




第一章ももうすぐおしまいです!

裏舞台を二つほどははさんで次の章に入る予定です!

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