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6.お店巡り

 先程の洋服店から少し歩いたあたりに目的のお店がある。そろそろ、お店が見えてくるだろうというあたりで知り合いの姿が見えた。おーい!と言いながら笑顔で走ってくるのをみて、自然と笑顔になった......のは彼を知っている私とルイスだけで、ロザリアとエリーナはこんな風に接してくる人は初めてなのか、顔がこわばり、二人の護衛は警戒態勢に入っているのだが。


 私の周りが変な雰囲気になっているのに気づき、訝しがりながらも声をかけてきた。


「久しぶりだな、セレネ。」

「久しぶり、ジョゼフ。ここで何してるの?」

「ああ、買い出しに行ってたんだよ。父さんに頼まれてさ。」


 そういいながら、買ったばかりの商品が入った袋を掲げた。続けて周りの人達を見渡して、この人たち誰?、といった風に視線を向けてきた。


 みんなを紹介しようと思い、振り返るとルイスを除いたみんながまるで未確認生物にでも会ったかのように、目を丸くして驚いている。


 いくら私が砕けた話し方をしたからって、そこまで驚かなくてもいいじゃない.....


「この人たちはわたしの友達とその護衛の人だよ。」

「へえ、そうなのか......はじめまして。俺はジョゼフ。よろしくな!」

「わたし?はロザリアと申します。こちらこそよろしくお願いします。」

「エリーナです。これからよろしく。」


 ロザリーとエリーナの護衛はそれぞれ、ケイ、ロイドと名乗った。


「それで、セレネたちはどこ行くんだ?」

「とりあえず、いろいろなお店へいくつもり。」

「ふうん、じゃあ後でうちの店に来いよ!何か出してやっからさ!」

「ジョゼフさんはレストランとかで働いていらっしゃるの?」


 傍観をしていたロザリアだったが気になったのか質問した。


「いや、両親がやってる宿屋なんだけどたまに手伝わされてるってだけだ......俺のことはジョゼフでいいぞ?そんな丁寧にはなさなくていいし。」


 ジョゼフの両親は宿屋をやっており、質素ながらも部屋や料理の質が良く、この辺りでは人気の宿屋となっている。宿に泊まらずに食事だけしていく客も多いくらいだ。


「そうなの......なら後でジョゼフの店に行きましょうか?リーナはどう?」

「わたしも興味があります。じゃあ後でジョゼフの店に行くね。」


 エリーナも興味があるようなのでひと通り店を見た後に向かうことにした。そのころには日も暮れているだろうということで夕食はジョゼフの店でとることになった。


「じゃあジョゼフ、またあとでね。」

「ああ、待ってる。」


 そういってジョゼフと別れた。




「ふう、セレネ、わたくしの言葉遣い変に思われてしまったでしょうか?」


 ロザリアが不安げな面持ちでつぶやくように訪ねてきた。少し丁寧に、いや、結構丁寧に話してしまったことを気にしているのだろう。


「そうね......確かに丁寧さが抜けていなかったけれど、問題ないはずよ。」


 ジョゼフには私のことを商人の娘だと認識している。初めて商業街に来た時に一緒だったお父様が商人だと名乗っていたので、必然的にそうなった。そのため、ジョゼフから聞かれなかったが、ロザリアとエリーナのことも商人の娘だと認識しているはずである。護衛がいることを不審に思ったそぶりはなかったので、私とルイスのような関係だと解釈したのだろう。

 だから、二人が丁寧な言葉遣いで話しても、さすが商人の娘!と思われるにとどまる......と思いたい。


 そのことを伝えると少しばかり表情を緩めた。


「それならよいのですが......」

「さっきも言ったけれど、そんなに気にしなくても大丈夫よ。そんなことよりも楽しみましょう。せっかく来たのだから。」

「セレネ様の言う通りです、楽しみましょう!あのお店など覗いてみませんか?」


 こうして次々に目についたお店に入っては買い、入っては買いを繰り返す。


 雑貨店に入れば......


「セレネ様!こちらの手鏡がとてもきれいですよ!」

「ほんとね!この色はリーナの雰囲気によく合うわ!」

「この手鏡色違いであるみたいですよ。せっかくなのでお揃いで買いません?」

「「買います!」」

「これも......」

「あれも素敵で......」


 といった具合に、小物やアクセサリーなどを次々と買い(男性陣は荷物持ち)、


 屋台を見れば......


「あの綿菓子おいしそうね!」

「あちらの飴細工もきれいですよ!」

「全部おいしそうで、選べないですね!」

「なら、一つ買ってみんなで少しずつ食べない?」


 その案が採用されて、六人で少しずつ食べていくといった風になり(男性陣はひどく恐縮していた)、


 気づけばもう夕時で、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 一通り見て回ったのでそろそろジョゼフの店へと向かうことにした。


 買い物の余韻に浸りながら歩いていると、『宿屋 紫翠』という看板が見えた。ここがジョゼフの店である。


 扉を開けるとカラーンーと乾いた音がなった。


「いらっしゃ......あ、セレネちゃんにルイス君じゃない!久しぶりね。」


 そういって出迎えてくれたのはこの宿屋の女将であり、ジョゼフの母であるミラである。


「お久しぶりです、ミラさん。大勢で押しかけてしまってすみません。」

「いいのよ~。たくさんお友達を連れてきてくれてうれしいわ!.....宿屋 紫翠の女将をしているミラです。来てくれてうれしいわ。ジョゼフは向こうにいるから呼んでくるわね。どこか適当に座ってて。」


 扉の前で突っ立ているのも邪魔なので席に座る。

 ちなみに邪魔といえば、先ほど買った品々は持ってくると大変な量になるのでまとめて送ってもらうことにして、ここへ来る前に運送業者の所へ持って行った。


 ミラさんに注文し、出してもらったお水を飲んでいると、エプロン姿のジョゼフがやったきた。


「わりぃ、待たせたな。」

「気にしないで。忙しそうならこっちに構わなくてもいいよ?」

「それは大丈夫。父さんと母さんから一緒に食事するように言われたからさ。もう少しで料理ができるはずだからもう少し待っててな。」


 そういってジョセフはまた手伝いに戻り、しばらくして「おまたせ!」と言って料理を持って来た。


 そこからは、無礼講という雰囲気でルイスやケイ、ロイドも混じって会話を楽しんでいた。

 貴族であるルイスはともかく、お嬢様と同席するなんて!という感じを醸し出していた平民であるケイとロイドを心配していたが、慣れてきたのかだんだんと臆することなく楽しめているようだ。


「......そんなことがあるなんて......迷惑な人たちね。」

「ああ、あの時はほんとに恐怖したよ.......おっさんたちが俺に絡んできたときには、ぼこぼこにされる未来しかなくてヤバいって感じだったな。ルイスさんが助けてくれなかったらどうなっていたか......」


 ロザリアとジョゼフは私とルイスが初めてこの店に来た時について話していた。ロザリアについて聞かれると答えられないので、巧みな話術で、ジョゼフの情報だけ聞けるように会話していた。さすが侯爵令嬢である。


「......他にはどんなことをなさっていらっしゃるの?」

「そうですね......セレネはダンスや刺繍から乗馬や剣技までこなします。公務中は堂々とした面持ちで行い、今日のようなお忍びに行かれるのは守る側としては困りますが、私は国民と対等に話そうとするセレネに尊敬しているのですよ。」


 エリーナとルイスはなぜか私について話している。もちろんジョゼフやほかの客に聞こえないように、だ。

 けれど、聞こえてしまっている私が恥ずかしくなってきたので、誤魔化すためケイとロイドに意識を向けた。


「二人とも今日は付き合ってくれて、助かったわ。ありがとう。」


 そういうと二人は、少し焦ったような困ったような表情を浮かべた。


「いえっ!仕事なのでどうってことありません!」

「むしろ、おう......お嬢様と言葉を交わすことができるなど夢のようです。」


 王女様とでも言おうとしたのだろうが、少しためらってお嬢様と言い換えてくれた。


「ならよかった。何か困ったことがあれば私に相談してね。力になるから。」



 普段話さないような組み合わせで話したことで、お互い親睦を深められたようだった。


 そんなこんなで、今日は終わ......()()()()()


お読みいただきありがとうございました!

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