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32.試験までーー

大変お待たせいたしました!

 アルフォンジーク王とその側近、エリオスティードとその側近たちが退出するのを見届けてから、私は指示に従ってまた元の控室に戻ってきた。


 と、とりあえずはなんとかなった……か?


 変なことを口走らなかったかとか、自分の言動を振り返っているとふいに訪問者を告げるノックが聞こえた。

 私は座っていた椅子から立ち上がり、相手を迎えた。


「謁見お疲れ様。」


 訪問者はエリオスティード、ディランバート、フレディアンと、あともう1人?


「恐れ入ります、殿下。」


 知らない人がいるため、ここではあまり馴れ馴れしくしない方がいいと思ったのだが、どうやら正解だったらしい。エリオスティードは特に何も言わず、一緒にいる侍女に視線を向けながら言った。


「先に用事を済ませてしまおうか。」


 スッと進み出てくると、その侍女はもっていた箱を差し出してきた。

 これは受け取っていいのか、一応エリオスティードに確認を込めて視線を向けると、頷かれたので受けとった。


「それがさっき言ってた大金貨3枚だ。武器を整えるなり、生活用品を買うなり好きに使うといいよ。」


 金銭は正直に言って、裏でこそこそするときにも使ってしまっていたので、底を突きかけていたため有難かった。


「君はもう父上の元へ戻って構わない。無事に届けたと伝えてくれ。」


 エリオスティードが声をかけると、彼女は一礼して戻っていった。


 エリオスティードが届け人の役目を担っていたのかと思っていたが、どうやら違っていたようだ。

 先程の侍女がその役目を担っていたらしい。


 にもかかわず、忙しい彼らがわざわざ私の所へ来てくれるとは、何か別の用事でもあるのだろうか?


 とりあえず立ったままだったことを思い出し、席へと誘導する。箱はテーブルの上に置かせてもらい、部屋の隅にあったワゴンを使い、人数分の紅茶を用意する。

 これくらいはフォルトゥーナにいたときにも、練習したことがあるので造作ない。


 そっと彼らの前にカップを置けば、銀のスプーンで数回かき混ぜてから飲んでくれた。


「んっ、おいしい!セシルは何でもできるんだね。」

「母から教わりましたから……でも、僕にだってできないことはたくさんありますよ。」


 少し大げさのような気もするが、褒められて悪い気は起らない。


 不思議だな……こうやってエリオスティードと話していると、ココロが自然とゆるんでいくなんて。


 ……って、いけないいけない!ここは『敵国』なんだから!


 一瞬緩みかけたかを、すぐさまキリッとした表情に切り替える。


「王都について早々、ここまで来てもらって、ごめん。」

「いえ、こんなところに来ることができて、とても光栄でした。」

「いいんだよ?本音を言っても?」

「言えるわけないでしょう?セシルが王宮で王に対して面倒くさいなんて。」

「……僕、そんなこと言いましたか?」

「言ってない……が、顔に出ていたぞ。馬車の中で、だがな。ああ、いや、王宮についてからはそんな素振りは見らなかったがな。」


 ディランバートの言葉にぎょっとする私を見てか、王宮での失敗は見られなかったと付け加えてくれた。


 盗賊騒ぎが終わって、気を抜きすぎていたのかもしれない。

 要反省だな。


「それで、父上……陛下の言っていた騎士団への入団のことなんだけど……」


『父上』ではなく『陛下』と呼んだことで、私は背筋を伸ばした。


 曰く、私は2週間後に行われる入団試験を受けること。これについては周りの人に私の実力を見せつけるために参加する目的があるので、全力を出すように言われた。


 曰く、一人で出歩かないこと。私はまだ騎士ではないし、王宮で働いているわけではないから、一人でうろうろしていると最悪不審者とみなされてしまうそう。


 ただ、誰かと一緒ならば大丈夫らしい。買い物や、剣の練習をするときなどは声をかけるように言われた。


「まあそれくらいかな。何かあれば俺にすぐに言って。」


 要件を済ませると、3人は去って行った。


 恐らく帰ってきたばかりでいろいろやるべきことがあるのだろう。


 なら、わざわざここに来なくてもいいのに……そう思う私の心とは反対に、口元は緩んでいたのだった――






「セシル様、緊張はしていませんか?」

「問題ないよ、ミア。今までありがとう。」

「いいえ、私は役目を全うしただけですから……試験、頑張ってくださいね。」

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ。」


 ミアは試験までの2週間、私付きの侍女としてずっと付き添ってくれていた侍女である。


 私が試験を受けるにあたり、問題になったのは試験までの間の2週間、どこで過ごすのかということだった。

 当然私は王宮に滞在する予定はなく、そうそうに王都内の宿を取るつもりだったのだが……


『お部屋の方にご案内いたします。』

『……え?』

『え?』


 思わず聞き返してしまった私はこの時の侍女……ミアと二人そろって首を傾げてしまった。


 なんでも今の私は客人扱いの用で、こちらの都合で王都まで来てもらったのに、王宮から放り出すなんてまねはもってのほかだと言われた。


 しかし、客室に平民が止まることは想定されていないので、必然的に貴族用の煌びやかな部屋を借りるということで……当然世話係も付けられることとなる。特に私の場合は案内係としても必要だからなおさらだ。


 それを聞いて青ざめたのは仕方がないだろう。まさかこんな扱いになるとは……


 部屋でも気を抜けないのか……そううなだれた私だった。だが、その心配は杞憂に終わった。


『私も平民ですから、ずっとそばにいられうことの息苦しさは分かりますわ。ですから、御用があるときだけこちらのベルでお呼びください。』


 ずっとそばにいられるのは嫌なのだろうと、私の暗い表情を見てそう判断したらしいミアが言ってくれたのだ。


 食事の準備や洗濯物の片づけ、案内などはもちろんしてくれるが、貴族にとっては常識的な着衣の手伝いや入浴補助などは私の好きにさせてくれている。


 おかげで私の秘密は守られている。


 こうした気遣いもさることながら、言動まできれいなミアは本当に優秀だと思う。だからこそ、平民でありながら侍女という役職に就けているのだろう。普通なら使用人どまりで、雑用しかできないという人も多いだろうに。


 ミアについてはこんなところだろうか。


 こんな回想をしている間に試験会場となっている王宮内にある騎士団の訓練場についたようだ。


 王宮ではやることがほとんどないので、ずっと鍛錬をしていた。

 コンディションはばっちりなはず。


 さあ、行こうか――







次回の更新もまた遅くなると思います......

すみません。


それでも見てくれている方、本当にありがとうございます!

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