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31.謁見

昨日は投稿できず、すみません!

今後週1投稿が厳しくなりそうなので、月1か、もしかしたらそれ以上更新が遅れてしまうかもしれません。

ですが、投稿は続けるつもりなので、これからも応援していただけたらと思います。


大変ご迷惑をおかけいたします。

 こんなきれいな服にまた袖を通す日が来るなんて……


 私は部屋をぐるっと見回した。

 煌びやかな調度品の数々、重厚な絨毯、繊細な装飾品、一糸乱れぬ働きをする侍従や侍女、使用人たち……


 すべて私が失ったものだった――


 ここはアガートラーム王国王城である。

 王に謁見すべく、王都エシュリーゼを通り過ぎ、王宮までやってきたのであった……




 準備を整えた私は、一際豪華な扉……この前に立つものを部屋に入る前から威圧感を与える扉の前にいた。


 そう、謁見の間だ。その中に入る時を今か今かと待っていた。

 これから何が待ち受けているのかと、緊張で心臓がバクバクしている。


 普通ならば、この国のトップに会うのだから当たり前だろうと思うだろう。


 しかし、私の場合は違う。


 なぜなら、彼女はこの国アガートラーム王国に滅ぼされたフォルトゥーナ王国の王女なのだから。


 これから会うのは国王だ。私も王族だったことを踏まえても向こうのほうが上。こちらの正体を隠し通すことができるのか、それが一番気がかりなことだった。


 もちろん表情には出さない……と言いたいところだが、ここで緊張を出さないのは逆に不自然な気がするので、あくまでも自然な表情を心がける。


「どうぞお入りください。」


 扉の両脇にいた騎士からそう告げられた私は、いよいよ謁見の対面の時を迎えた。



 真っ先に目に入ったのは、玉座まで続く重厚な絨毯が引かれた長い道。その最奥にある数段の階段の上には玉座があり、王が座っているのが見えた。


 その隣に王子であるエリオスティードが立っている。


 そういえば、あんまり意識したことがなかったけれど、こうしてきちんと正装した”王子様な”エリオスティードはまさに理想の王子様といった風貌だ。


 つまり、すごくかっこいい……


 そのエリオスティードについていけるディランバートもフレディアンも美青年だということだ。


 はは、そんな中に私が混じっていたら、さぞ周りから浮いて見えていたのだろうな……


 っと、話がそれた。


 階段の途中、普通の階段より一段が広めに作られているその場所に、おそらく宰相と思わしき人物が立っていた。


 さらにその下。段のすぐ下の絨毯の両脇には王に危険が及んだ際、すぐに対処できるように騎士が数名控えている。

 ちなみにディランバートはその騎士たちに交じっていた。


 フレディアンの姿は見えないが、恐らく玉座の後ろにある控室にいるのだろう。


 天井は普通の部屋の三個分の高さがあるのではないだろうか。揺れるたびにきらきらと輝くシャンデリア。広すぎるスペースに備え付けられている調度品は値がつけられないほどの代物。


 さすが、城の顔といったところか。


 もちろんフォルトゥーナ王国のものと似ているが違う点が一つ――武具が多いことだ。


 置物や絵画などの芸術品が少なく、それを補う形で県や鎧が飾られていた。


 ――アガートラーム王国らしいというべきか。


 完全に扉が開かれるのを待ってから、一歩一歩、できるだけ優雅に堂々と踏み出していった。


 親しい間柄ならまだしも、初対面で、許しも出ていない段階で目線を合わせるのは失礼な行為となってしまうため、少し視線を下げながら歩みを進める。


 そして、絨毯の切れ目のところでゆっくりと体を下げ、片膝をつき、右手はその膝の上に、左手は地面について、跪く。


(……と、ここまでの動作は事前に教えられていたものだ。もちろん知っていたのだが、知らない体を取った。)


 両側を騎士たちに挟まれた形となるので、居心地の悪さは否めない。


「……面を上げよ。」


 その言葉を言われて、私は初めて王を直視することができた。


 王らしく煌びやかな衣装を身に着け、冠を付けている髪はエリオスティードと同じく金髪。こちらを興味深そうに見つめてくる瞳も同様にエリオスティードと同じ紺色。

 成長したらこんな感じになるのだろうといった風貌であった。


 すぐ隣にその本人がいるのでなおさらそう感じた。


 エリオスティードは私と目が合うと、わずかな変化であったがこちらに微笑みをくれた。


 その瞬間、私の頬に熱が集まるのを感じた。


 どうしよう、今まであんまり気にしていなかったけれど、こうして心を許しはじめていることに気がついてから、何か変だな、私……



 でも今は、謁見中。視線をさまよわるのは良くないので、すぐに視線を戻した。


 それと同時に、何か複雑な感情がせり上がってくる。


 ――この人が……アルフォンジーク王。


『悪夢の一夜』を作り出したその人なのだ。当然、溢れてくる暗い感情を制御するので精一杯だ。


「ふむ、そなたがセシルか。」


 その言葉を受け、私は肯定を示すように少しだけ頭を下げた。


「王子から話は聞いている。此度の活躍、大儀であった。」

「恐れ入ります……陛下。」

「そこで私はそなたに褒美を授けようと思うのだが……なにか望みはあるか?」


 ここで是と答えられるわけがない。

 私は無難に返事を返す。


「陛下のお心遣いには感謝の言葉もありません。ですが、こうして陛下のご尊顔を拝見する名誉をいただけたことが、何よりの褒美でございます。」

「……なかなかにしっかりしているな。さすが、王子が協力者に選ぶ人材というわけか。」


 半ばつぶやくようにして言われた言葉に、心臓がはねた。


 何か間違ったかな……?


 表情を隠すように視線を下げていた私は、今度こそはっきりと言われた言葉に顔を上げた。


「だがな、この国としては何も渡さないわけにはいかない……そこで、だ。」


 褒美は必ず与えられることになることは、もちろん予想はできていた。王室として褒美の一つも渡せない国と万が一にも思われては決してならないからだ。


 だから私としては、金銭や宝石など物を賜るのが一番良い展開だと考えているのだが……わざとらしく言葉を切った国王に何か嫌な予感を覚えた。


「我が国の騎士になる気はないか?」

「……!」

「それほどの剣の腕を持っている人材をみすみす手放すのは惜しい。どうだ?騎士になればそれなりの地位や名誉、金にも困ることはないだろう。」


 ……確かにそうだ。

 騎士と言えば誰しもあこがれる職業。この国で己の剣で生計を立てるものにとっては一番なりたい役職だ。


 だが、私にとっては最悪に近い展開であった。これは私の剣の腕を利用すると同時に、監視もすることができるという向こうにとって利の多いものだった。


 むしろこちらには味方が一人たりともいないのだから、ただ自分だけしか情報を得られないということだ。

 私の計画ではここまで危ない橋を渡るつもりはないのだが……


「僕は……フォルトゥーナ王国の人間です。今僕を引き抜くのは情勢的に厳しいのではないでしょうか?」


 あまり国王にたてつくことはしてはいけないとは思いつつも、言ってしまった。だが、私だってただで引き下がりたくはなかった。


「それは問題ない。私が口添えするからな。それに旅商人の家系なのだろう?それなら国籍などあってないようなものだ。」


 しかし、相手は国王。向こうは私の出身国など把握済みだった。


 そもそも私に断るという選択肢は残されていないのだから。


「……ありがたく承ります。」

「うむ、そなたの働き、期待しているぞ。ああ、そうそう。入団試験は後日受けてもらうことになる。他の者から不満が出てしまう可能性があるのでな。なに、そなたの実力ならば大丈夫だろう……宰相。」


 今まで成り行きを見ていた宰相であったが、国王からの呼びかけに応じ、高々と言葉を述べた。


「それでは、セシルには騎士団への入団資格、そして、当面の軍資金として大金貨3枚を授けることとする。」


 こうして短くも長い謁見は幕を閉じた――

金額の設定は迷ったんですが、適正価格何でしょうか?

「おかしくない?」と思った方は指摘していただければと思います。


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