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28.3人の素性

今回はやっと秘されてきた3人の、まあ2人の素性がわかります!

お楽しみに!

 突然だが、私は今非常に困っている。


「まだ顔色が優れませんね。やはり横になっていた方がいいのではないですか?

「お気遣いありがとうございます、フレディー様……ですが、大丈夫です。」


 ――フレディーと二人だけの空間に


 エリオ……エリオスティードの指示通り、私はフレディーと共に彼らが乗ってきたという馬車のところへやってきた……のだが――


「そうですか……エリオたちはもうすぐお帰りになると思うので、もう少し辛抱してくださいね。」


 そうにこやかに微笑むフレディーと向き合っている私には、毒でダウンしている暇などなかった。


 ”エリオはこの国の第一王子エリオスティードだった”


 この事実に私は非常に悩まされていたのだ。


 確かに高位貴族かと思ったけど……王族とは……

 正直予想外だった。


 そしてその事実が私の取るべき行動を悩ませているのだった。

 出会った当初は彼らについていけるならそのまま雇ってもらう、それが叶わないなら王都へ行って仕事をしつつ、兄やルイスたちの安否や国勢を探ろうと思っていた。


 だけど、王族だと知った今……いや、もう後には引けないところまで来てしまっている……


 ここに騎士が来てしまった時点で事態は予想をはるかに超えて深刻になってしまっている。ここまでくると褒章がどうこうと話が進んでいくはずだ。


 客観的にみれば、今の私は『第一王子に協力した一般市民』のはず。当然大なり小なり何かしらの褒美を与えられることになるのは間違いない。国的にも王子を助けた褒美を与えなければ、『褒美を与えることもできない国』と周りから思われてしまう。国の威信がかかっていると言っても過言ではない。


 ここで私が隠れてしまうのは悪手だ。何かやましいことがあると思われることはもちろん、国力をもって探されるのは御免こうむりたい。


 ――今の私にできるのはただ従順にしていることだけなのね……


 その答えにたどり着き、ガクッとうなだれる。……もちろん心の中で。


 思考に浸っていた意識をフレディーへ再度向けると、気持ちを切り替えて言った。


「それよりも、屋敷内で起きたことを報告いたしましょうか?」

「ええ、お願いします。ですが、無理をする必要はありませんからね。」


 フレディーが紙とペンを準備したことを確認し、屋敷内で起きたこと、見たこと、聞いたこと……できるだけ詳細に話した。


 フレディーはそれを、話の腰を折ることなく淡々と書き綴る。


「ふむ……とても詳細で分かりやすい……ありがとうございます、セシル。そろそろエリオたちが帰ってきても良いころなのですが……」


 フレディーの言葉が言い終わらないうちに、外が騒がしくなったことに気が付いた。


 外に出ると、騎士と共にこちらへやってくる二人を見つけた。


 ――こうして騎士を侍らせているところを見ると、王子なんだなって実感する。


 2人も私たちに気が付いたようで、エリオスティードはこちらに微笑みを向けながらやってきた。


「セシル、もう体調はいいのかな?」

「もったいないお言葉です、エリオ様……いえ、エリオスティード殿下……今までの王子殿下に対する数々の非礼、なんとお詫びすればいいのでしょう……」


 そこでいったん言葉を切り、跪いてさらに謝罪の言葉を述べようと思ったのだが……


「……あ、あの、殿下……?」


 私が膝をつくことを阻止するように、エリオスティードが私の腕をつかんできたのだ。

 エリオスティードの顔色を窺おうとするも、うつむいていてよく見えない。


 私は困惑を隠そうともせず、表に出していると……


「謝罪すべきは私の方だ……」


 つぶやくようにそう言った。

 やっと顔を上げたエリオスティードの顔からは悲壮感が感じられた。


「もっと早く言うべきだったな……セシルを困らせてしまった……」


 私が何も言えないでいると、さらに言葉を重ねた。


「これまでのようにというのは難しいと分かっている……けど、できればそう畏まらないでほしい。」


 そうまっすぐ告げられた言葉に私はたじろいだ。

 そして勢いにのまれて……


「承知い……わかりました……。」


 ……自分でもわかっているんです。もっと引き際をわきまえるべきだと……

 でもね!仕方ないじゃない……

 あんなに悲しそうに言われたら……


 それに……私……もう1人でいるのには耐えられない……


 安心できるところ……心の拠り所が欲しい。



 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……



「ありがとうセシル。じゃあ行こうか。」

「……はいっ!」


 馬車に乗った私たちは、エリオスティードから王都に行く旨を伝えられた。


「セシルには悪いんだけど、一度王都に……というか、城まで来てほしいいんだ。」


 と、エリオスティードが申し訳なさそうに告げた。 


「わかりました。ちょうど僕も王都に向かうつもりだったので、気にしないでください。」

「そう言ってもらえると助かるよ。セシルの活躍を報告したら、父上……陛下まで興味を持たれてね。直々に合われるそうだ。」

「……はいっ?!」


 声が上擦ってしまった……

 要するに……『陛下に謁見する』ということよね……?


「驚くのも無理はないよ。大丈夫。俺たちもサポートするから。」


 驚く私をみて、エリオスティードは苦笑していた。


 陛下ってそんなに簡単に会える人だっけ?

 アガートラーム王国が特殊なのか?


 エリオスティードたちがサポートしてくれるっていってたし、大丈夫よね……?


 ……そういえば、”たち”ってことは、


「あの、お聞きしたいことがあるんですが、ディラン様とフレディー様はその……」


 2人のことを聞いていなかったので、聞いてみた。ただ、私が知っていいことかわからないので濁して聞いてみる。


「ああ!二人のことを言っていなかったね。」


 そう言って、先ほどから私とエリオスティードの会話を黙った聞いていた二人に目を向ける。


 エリオスティードの目配せに反応して、二人が改めて自己紹介してくれた。


「ディランバート・マーメルス。マーメルス公爵家次男だ。エリオとは乳兄弟にあたる。」

「フレディアン・ミナーヴァです。ミナーヴァ伯爵家三男にあたります。これからもよろしくお願いしますね。」


 ディランバートはそっけなく、フレディアンはにこやかに、言った。



 ――その後の馬車内で、エリオスティード殿下、ディランバート様、フレディアン様と呼び方を変えたが、三人から『前と同じで言い』と言われるのはご愛敬といったところか。




お読みいただきありがとうございました。


来週、再来週、もしかしたら更新できないかもしれません。

最善を尽くしますが、ご承知おき下さい。

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