20.情報収集
すみません!
大変長らくお待たせいたしました。
あぁ、やっと帰ってこれた......
いや、この5日の間に何回かこの町を見ましたよ?けどね......5日間の旅はサイラスたちの移動ペースとは比べものにならないほどの強行軍であったから、ゆっくりと見てる暇などなかったのだ。
そういえば......とふと私は思った。
こんなペースで移動するような商団がいるのか、と。馬は体力のある丈夫な馬で、荷物は中身のない木箱と私たち4人、だから必然的にスピードは上がっていたのだが、もしかしてそれが原因で襲われなかったとか?
......でも、これは心の中に留めておこう。
適当に思い至ったことが、的中しているとは考えにくい。
それに加え、私の怪我の具合が、良くなっていない。いや、悪くなっているわけでもないのだけれど。何もせず座っていただけだし、時間もそれなりに経ったので回復に向かっているのだろうけど、代わりに疲労が蓄積されているのか治り具合が良くないのだ。
これも、平和のためだ.....
おっと、馬車駐車場が見えてきた。
町の中では馬車は必要ないので、一旦そこに預けることになっている。
「それじゃあ予定通り、俺とセシルで情報収集をメインに行動するよ。ディランとフレディーは宿をとったら物資を調達して、余裕があれば情報収集も頼む。」
「.......わかった。だが、本当にこの組み合わせでいいのか?なんなら、俺一人でもいいが?」
「それだと、ディラン一人に苦労させてしまうから遠慮するよ。それに、セシルもついているんだ。俺たち2人だったら、大抵のことは乗り切れるよ。」
町に入る前に、情報収集をする人と物資を調達する人に分かれて行動することを決めていた.......のだが、エリオが私と共に行動することを望んだのだ。
普通は守られるべきエリオはこの中で一番腕がたつディランを連れるべきなのにも関わらず。
「エリオの言う通り、ディランほどではありませんがセシルも腕が立ちます。この五日間でセシルのことは大方知れましたし、エリオがこう言っているのですから、ここはセシルに任せましょう。エリオを頼みます、セシル。」
「.......わかりました。必ずお守りいたします。」
というわけで、早速町へ!
「なんか、二人でいるのって新鮮な感じだな。」
「今まではつねに二人のどちらかがついていましたからね。」
私が今までの二人を思い出していると、エリオも同じ様子を思い浮かべていたのか、苦笑しながら同意した。
「二人は俺の従者だからね。ちょっと過保護すぎるけど。でも、ここ何日かで二人もだいぶセシルに心を許すようになったよ。現に今二人で出かけられているわけだし。」
いや、どうかな。信用された、というよりも......
「ただ単に僕一人くらいエリオ様一人でも対処が可能と判断されただけな気がします......」
悔しいけどね......
「今はとにかく、僕たちの役目を果たしましょう。」
「そうだね、適当な店で聞いてみようか。」
いろいろなお店を巡り、近くにいた従業員らしき人を捕まえては、話を聞いてみる。
『え、最近の盗賊の被害についてだって?しらねぇな。俺はただ運ばれてきたもんを売るだけだからな。』
『困ったものよ。商品が足りなくて困ってるの。盗賊の情報はこっちが知りたいくらいよ。』
『私どもも品物が届かないことが多くなっています。けれど、うちのような服装類を扱っているお店は比較的被害は少ないようですよ。食料を扱う店の被害が大きいそうです。』
『ああ?客じゃねえならとっとと他をあたりな。邪魔だ。』
『そうだな......確か狙われてるのは大きな商会の馬車が多いって聞いたぞ。隣の店のやつから聞いたんだが、そっちにも聞いてみたらどうだ?』
『ああ、確かにそう言ったよ。自分も他の人から聞いた話から聞いた話から推測しただけなんだけど、多分アガートラームの馬車だとわかる馬車だけ狙われてると思ってるんだ。やっぱり同じフォルトゥーナの馬車は襲いたくないんじゃないかな。』
「総合すると、盗賊たちは食料料を持っていそうなアガートラームの馬車で、特に大きい商会を中心に狙っている、ということですか。」
「みたいだね。どうりで俺たちの馬車が狙われないはずだ。」
「見るからに少人数の小さい馬車でしたからね。小さい方が襲われやすいと思っていたのに......予想外です。」
「同感。ひとまず、ディランとフレディーと合流しよう。もうそろそろ集合の時間だしね。」
2人とはこの町の中心にある広場で落ち合うことになっている。
食料を買うのにはそんなに時間はかからないはずなので、確実に待たせてしまっていると思われるのではないだろうか?
案の定2人はもう着いていたらしく、私たちはすぐに合流できた。
「待たせてごめん。」
「いいえ、たいして待っていませんから......何かわかりましたか?」
「ああ、色々わかったよ。とにかく、ご飯でも食べに行こうか。」
もうお昼なので、どこも人で賑わっている。どこがいいかな、と話していると突然後ろから声をかけられた。
「あ、あの!」
振り返ると、女の人が緊張気味に、しかしどこか嬉しそうな面持ちでこちらを......というより私を見ていた。
って、あれ?この人は......
「あなたは確か、酔っ払いに絡まれてた......」
「覚えていてくださったんですね!あの時は助けてくださりありがとうございました!」
「無事で良かったです。あのあとは何事もなく、家に帰れましたか?」
「はい。あなたが助けてくださらなければ、今頃どうなっていたかとか......本当にありがとうございました。それで、私あの、お礼がしたくて......」
「.......ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきます。」
正直に言うと、私はそこまでいろいろな人とかかわる予定ではなかった。私が消えても誰も気づかないような感じが理想的だったのに......すでに知り合いが3人もいるのだから。
と、ちらっとその当人たちを見ると、それを勘違いしたのか、私が彼らを気にして断ったかのように受け取られてしまったようだ。
「それなら、食事だけでもご一緒にどうだろうか?ちょうど俺たちは昼ご飯を食べるところなんだ。」
というエリオの言葉で一緒に食事へ行くことになってしまった。
..........私の計画が、どんどん崩れていくーーー