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18.元王女と貴族様(後)

先週は投稿できず、すみません!


これから夏休みに入るので、受験勉強も少しづつ始めていかなければなりません。そのため、日曜日に投稿することは今後厳しくなるかもしれません!


なるべく早く書きますので、次話をお待ちいただけると嬉しいです。

 協力って何の?誰の?


 急な話の展開についていけなかったのは、どうやら私だけではないようだ。


「我々だけでは少々心許ないですし、1人協力者がいるだけでもかなり仕事が楽にできるのではないでしょうか?」


 フレディーがつらつらともっともらしいことを並べているそばで、私はその真意について考えていた。


 これはおそらく協力してもらうことが目的ではないはず.......知り合いでもない人に協力を依頼するなんてことは、裏切られたら困るので普通はしないから。

 となると......私の監視が目的?怪しいとまではいかなくとも、念のため程度に私を観察しておきたいといっただけなのかもしれないが。

 あるいは、有能な人材ならスカウトしたいと思っているのかもしれない。


 うーん。何とも言えない。


「あ、それはいいな!荒事に対応できる人は大歓迎だよ。」


 エリオはフレディーの考えを察知したのか、単純に私のことを気に入ったのかはわからないが、賛成の意を示した。


「......そうだな。」


 ディランはおそらく、私の監視をしたいのだろう。少し思案していたが、彼も同意した。


 それを受けて、エリオが私の方へ向き直る。


「セシル、俺たちに力を貸してくれないか?」


 ここで断ったら、”やましいことを隠しています”と言っていることになってしまう。

 だから、


「僕でよろしければ......」


 と、いうほかなかった。


「ありがとう、セシル!君とは仲良くやっていけそうな気がしたんだ!」


 そういったエリオに裏があるとは思えなかった。ただ単純に私と友人になりたい、そんな思いが伝わってきた。

 だからかな、私は初めて彼らに、いや、エリオに笑顔を向けた。


「こちらこそよろしくお願いします......それで、僕は何をすればよろしいのでしょう?」


 協力云々の前に概要について知りたいんだけどなと思いつつ、笑顔を苦笑に変えて、説明するように頼む。


「そういえば、何も説明していなかったね。」


 今気づいたようで、はっとした様子でエリオが言った。


「実は、僕たちはある目的でここへ来たんだ。」


 それは旧フォルトゥーナ王国との国境に近い辺りで起こる盗賊騒ぎのためだった。


「盗賊がでるのはわかる。けれど、『悪夢の一夜』以降に急激にそのあたりで盗賊が出始めたんだ。それもかなりの頻度で。」

「.......悪夢の一夜?」

「知らない?もうフォルトゥーナ王国が滅んだことは知られていると思っていたんだけど。」

「『悪夢の一夜』と呼ばれているんですか、そのことは。」

「そっか、悪夢の一夜って言葉はまだ浸透していないのか......まあ、話を戻すよ。」


 盗賊がいるのはおかしいことではない。けれど、国境近くに盗賊が出ることはほとんどないと言っていいらしい。

 国境近くは両国の対立が起こりやすい場所であるため、そのあたり一帯は警備が特に厳しい場所のひとつである。そんなところで騒ぎを起こすような馬鹿はレアなケースなのだ。


「実質的にフォルトゥーナ王国が亡くなったとはいえ、国境警備隊は機能しているんだ。けど、今では市場に影響が出るほど盗難被害報告されている。」


 そう言われて、屋台のおじさんとの会話が蘇る。


『今は野菜や果物の相場が高くなってるんだよ。なんでも、輸送中に商団が襲われてるって話だぜ。』


 これはこういうことだったのか。


「それを解決すべく、俺たちはここまでやってきたんだ。」

「......事情は分かりました。ですが、もう結論は出ていると思うのですが。」

「というと?」


 私の言葉にディランが反応した。


「『悪夢の一夜』でフォルトゥーナ王国が機能しなくなり、うまく経済が回らなくなったのでしょう。生活に必要なものが行き届かなくなり、平民たちは盗むしかなくなる......争いの後にはよくあることです。」


 勢いのまま、誰のせいでこんなことになっていると思いか、とか余計な事を言ってしまいそうになったのでいったん口を閉ざした。

 チラッと相手方をうかがうと、一様に驚いた表情をしていた。


「そのことを知っているんだ.....君に協力を仰いでよかったよ。」

「さすがは商人の息子、といったところでしょうか。」


 エリオとフレディーがそれぞれコメントをし、間を開けてディランが私の言葉に反論した。


「普通なら、だ。だが、今回は状況が違う。」

「どういうことですか?」

「それはーーー」




 カチャッ


 ドアに鍵をかけたことを確認してから、胸に巻いていたさらしを脱ぎ、ゆったりとした服に着替えると、ベッドへダイブした。


 ここは私が使っている宿屋......ではなく、三人が泊まっている宿屋である。本当は話が終わった時点で自分の宿に帰ろうと思ったのだが、連絡を取るのが大変だからとか、もっと親睦を深めたいな〜、などと言われ、気がつけばここに泊まることになってしまったのだ。まあ、鍵がついているのは幸いだったが。


 それにしても......今日も忙しい1日だったな......


 目をつぶればいろいろな光景が思い出される。


 ーーーヘルメーシア商会のみんなとの別れ

 ーーーこの町での買い物

 ーーー酔っぱらいから女性を助けたこと

 ーーー男たちとの闘い

 ーーーエリオたちに出会い

 ーー....

 ー....

 ...


 その光景はディランよりもたらされた情報を聞いた場面で止まる。


『それは、国の重役の面々は変わっているが、フォルトゥーナの貴族がこの状況下でも1つの国を運営しているんだ。すまないが、これ以上は詳しく教えることはできない。』


 一体どういう状況なのだろう?


 通常侵略された国には、戦勝国から役人が派遣されてその国の良いように運営されていくような状況のはず......なのに、未だフォルトゥーナ王国として機能していると、ディランは言っていた。


 やはり情報が足りないな......正確な状態が把握できない。

 今後も情報収集を徹底的にやるべきだろう......と、改めて認識した。


 そう考えるとなると......彼らと一緒に行動するのはいい選択だったのかもしれない。

 身分の高い彼らなら、一般庶民には回ってこない情報も得られるはず......

 このまま行動を共にして、信用を勝ち取れれば......


『悪夢の一夜』


 その全貌が分かるかもしれない。


 ーーー暗闇を手探りで歩いてきた私に突如一筋の光が差し込んできた。


 そう感じざるを得ない。


 胸元に手をやり、ネックレスを取り出す。


「ようやく進むべき方向が定まりました。必ずや、真相を明らかにして見せます。」


 私の決意に満ちた声に応えるかのように、キラッと光ったーーー




ありがとうございました。

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