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15.ガルシェラルの町

先に謝ります!


あの人の登場は次回です。


ごめんなさい!

 私は彼らを見送ると、次の行動を開始した。


 いらっしゃいませー!

 そこの兄ちゃん、彼女の贈り物にーーー

 新鮮な食材揃っているよー!

 どこ見て歩いてんだよ!?


 フォルトゥーナと変わらない、同じ町。でも、アガートラーム王国の兵がいたり、風景が違っている様子を見ると、アガートラーム王国にいるんだな、と感じる。


 っと、目的の店、武器屋を見つけてそちらへ向かった。


「ん?なんだ、坊主?ここはお前のような素人の来る店じゃねえぞ。」


 が、ついたとたんにそう言われた。


「いえ、それなりに自信はあるので。」


 といって武器を見始める。


 私が使える武器は双剣と短剣だが、短剣は本数を多く持っていなければならず、手入れをするのが大変なので、多少目立つだろうが、双剣を買うつもりだ。


 とりあえず、手ごろなものを持って、いつものように振ってみる。

 そのようすをみていた武器屋の主は目を見開き、また話しかけてきた。


「お前、かなりの使い手だな?ちょっと待ってろ。」


 そういって、いったん店の奥に引っ込むと、何本かの双剣を抱えてやってきた。


「これらは俺が作ったものの中でも、業物の剣だ。これなら、お前の腕にも合うんじゃないか?」

「では、ありがたく見させていただきます。」


 男は、ぶっきらぼうではあるが、認めたものに対しては熱心に対応してくれるようだった。


 数組ある双剣をひとつひとつ手に取ってみる。


 ......うん、これかな。


 一つの剣を手にしてみると、扱いやすい剣を見つけた。


「それが気に入ったのか?」

「ええ、おいくらですか?」

「金貨3枚ってところだな。」


 予想はしていたが、思った以上に高いな。一般的な家庭の2か月分ほどの金額である。

 私が現在持っているのは、ロザリアとエリーナと買い物をして残ったもの、およそ金貨3枚と大銀貨4枚。大銀貨4枚もあれば、いろいろできるので節約していけば大丈夫だと思うが、うーん。どうしようか。


 手に持った双剣を見つめながら思案して、


「ください。」


 結局買うことにした。命を預けるものなのだ。量産品でなく、それなりにしっかりしたものがいいと思うのだ。


 まあ、私が王女だったときに使っていた剣と比べれば、劣ってしまうのだけれど。


「まいど!このまま持って行っていいぞ!」

「ありがとうございました。では。」


 痛い出費だったが、結構いいものが買えてよかったな。


 武器屋を出ると、洋服店や雑貨店、食材店へ足を運んで、ようやく買い物は終了した。


 ふう、これで全部かしら?


 漏れがないことを確認し終えたときには、すでに夕暮れだった。

 サイラスたちと別れた朝からずいぶん時間がたっているところをみるとかなり買い物に熱中してしまったようだ。


 なので、宿屋に一度戻って荷物を置くと、どこかおいしい店はないかな、とすぐに外へ戻った。




 なるべくお金は節約したいので、安くて美味しい店を探していると、いい香りを放っている屋台を見つけたので寄ってみた。


「おじさん、いくら?」

「大銅貨5枚だ。」


 そう聞くと、フォルトゥーナの2倍の代金を言われた。


 高っか!


 そう思って、疑問をぶつけてみると、


「今は野菜や果物の相場が高くなってるんだよ。なんでも、輸送中に商団が襲われてるって話だぜ。」


 ふぅ~んと頷いて、とりあえず買うことにした。高いがまあいいか。


 もらったものを一口食べてみると、


 ん、普通においしい。


 見た目はただの魚の丸焼きのような、串にさして焼いただけのように見えるが、何かたれにでもつけてあるのか、美味しくいただけた。

 それに、今まではどこで誰が見ているかわからないので、串にかぶりつくという行為は、たとえお忍びであっても控えていたのだが、今はその必要もないので、ちょっぴり解放感を味わえながら食べられたことも美味しく感じる要因の一つかもしれない。


 適当な石塀に腰かけて、ゆっくりと食べていると、


「きゃっ!」


 と、静かな夜にふさわしくない、いや、酔っぱらいの夜にはふさわしいのかもしれないが、まあとにかく、突然声が聞こえて、反射的に私もそちらへ顔を向けた。


「おいおい、どうしてくれるんだよ!?」


 はい出た、酔っぱらい。街灯に照らされた顔が赤いところを見ると、まだ夜もこれからだというのにすでに酔っているらしい。


「ビールがこぼれてびしょびしょじゃねえか!この服高かったんだぞ!弁償しろよ!」


 いや、絶対うそでしょ。男が着ているのはここから見ても普通の服。


「ぇ......そんな......」


 ぶつかった女性もそんなことは当然わかっているはずだが、完全に男の迫力にやられてしまっている。


 誰か助けないのかと、周りを見渡すが、周りの人も厄介ごとはごめんだと思っているのか、可哀そうにという目で見るだけで誰も助けようとはしなかった。


 しかたない、私が行くしかないか......


 本当はこんなところで目立ちたくはないのだけれど、見てしまったものは仕方がない。


「そこまでです、おじさん。」


 間に入った私は、必然的に彼女を背に庇う形となった。


「誰だぁ?坊主。」

「酔っぱらいはお呼びじゃないんです。とっとと失せてください。」

「んだと!その女がぶつかってきたんだぞ?文句はそっちに言えよ!?」

「はあ、それなら力ずくで退場していただくまで......」


 私はそう言いながら、さっき買ったばかりの双剣の片方を少しだけ抜いて見せた。


 私のことを丸腰だと思っていたのか、武器を見せた途端、男はたじろいだ。そして、腰に手をあてて顔をしかめると、


「チッ!」


 そのまま男は立ち去って行った。


 とりあえずは行ったか......


 男が去ったのを見届けて、私は後ろを振り返った。


「お怪我はありませんか?」

「え......あ、ありがとうございました。どこかでお礼でも......」


 女性は私をつかんでいた手を慌てて話すと、少し赤くなった顔で言葉を言ってきた。


 けれど、


「いえ、お気になさらず。では。」


 私はそういうとすぐに立ち去った。

 しかし、そのまま宿には戻らず、しばらく歩いていた。

 もちろん、ただただ歩いているわけではない。一見普通に散歩しているように見えるだろうが、私は常に周りの気配を探っていた。


 ああ、やっぱりか......


 案の定といういか、予想していた事態になってしまったらしい。それもかなりよくない方の。


 はあ~、何度目かのため息をつくと、通りを外れた路地へ行き、奥へと進んだ。




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