14.入国と別れ
先週は投稿できず、すみませんでした!
今後、このようなことが頻発するかもしれませんが、どうか温かい目で見守ってください!
それではどうぞ!
あれから数日がたち、もうすぐ国境へと到着するまでになっていた。
その間いろいろなところを巡っている間に心の整理ができたのか、私はもう普段の調子を取り戻していた。
もちろんあの酒場に行ったことは内緒のことなので、特にみんなには話していないが、何かあったことは隠し通すことはできず、心配されてしまった。
それでも特に触れないでいてくれたのはありがたかった。
アガートラーム王国までもうすぐだ。より詳しいことがわかるだろう。
「国境が見えてきたぞ!」
その言葉に現実に引き戻される。
「いや~、今回の旅はまた一段と大変だったなぁ。山賊に遭遇するわ、変な拾い物をするわ、フォルトゥーナはやばい状況になるわ、散々だった。」
「ほんとですね~。王様と王妃様は死んじゃったっていうし、王子様と王女様は行方不明なんて、可哀そうですよね。」
すぐそばで交わされるやり取りに思わず苦笑いをしてしまう。
わたくしはここにいます!
なんてことはいえるわけないので、心の中で言うにとどめた。
私は運よくここにいられるけど、兄はどうしているのだろうか?
優秀なお兄様のことだから、うまく隠れているはずだと思うのだけれど......
だが、いくら優れていてもあの状況を切り抜けるのは難しい。たとえ一時は逃げおおせられたとしても、隠れられる場所がなければすぐに捕まってしまうし、遠くに逃げようにも私のように集中砲火に合うはずだ。
まあ、私のように兄にも優秀な側近がついているだろうし、まだ大丈夫なほうだろう。
けれど......問題なのはルイスのほうだ。
あの状況で生きていられるほうがおかしい。あのまま放置されるか、そのまま矢を浴び続けるか、運が良くても囚われの身となっているだろう。
生きていてくれればそれでいいが、捕虜となっている彼に対する扱いはそれ相応のものに違いない。
一瞬拷問を受けている彼の姿を想像してブルッと体が震えた。
しかし、自分の身も危ういのに、私ができることなど何一つない。
私が今やらなければいけないこと.......次の壁を越えなければならないのだ。
「セシル!そろそろ準備しろ!」
ガイアの声に返事をして、事前に話し合っていた通りに移動した。
......何をしているかは後ほど説明しよう。
ガタッコトッガタッコトッとそのまま進んでいくと、いよいよ国境門へと到着した。
「とまれっ!」
一人の門番が馬車に近寄ってきた。
代表してサイラスが出ていった。
「この紋章は......ヘルメーシア商会か?」
「そうだ。フォルトゥーナ王国からアガートラーム王国へ戻るところだ。ここを通してもらいたい。」
「承知した。だが、いろいろ確認させてもらうぞ。」
そういって応援に来た他の兵とともに持っていた荷物を一つ一つ丁寧に、あらためていった。
私たちに緊張が走る。
そしてその緊張は一人の兵士がある箱を開けたときに最高潮に達した。
「......この箱は?」
「女性の下着ですわ。......ご覧になります?」
「......あ、ああ、一応......」
一応仕事なので確認しないわけにもいかず、真面目な顔をして、赤くなりそうな顔を抑えると、そっと開けた......
「......」
と思ったら、またそっと閉めた。
「兵士さん?」
「あっ、はい!もう結構です!」
急に敬語になったところをみると、すごく動揺しているようだ。
後ろでは、一部始終をよく見ていたステラが、うぶな反応を見せる兵士をにやにやとみていた。
それから、全員の身分証を確認してから、通ってよし!とのお言葉を頂いたので、無事国境を通過できた。
「意外とうまくいったな。」
「ほんとね。でも、流石に蓋を開けられたときには肝が冷えたわ。」
「バレたらさらにややこしいことになるのは目に見えているからな......セシル、もういいぞ。」
その言葉を合図に、私はゴソゴソと箱の中から出た。
「ふぅ、うまくいってよかったですよ。」
「そうだね、まさかそんなところにセシルを隠すなんて、さすがステラさんって感じ。」
「当然よ。いくら仕事といっても女性の下着に触れるなんて、ましてや女性が見ている前でなんて、普通はできないわ。」
そう、聞いての通り私は女性の下着の入った箱に隠れていたのだ。
理由は簡単。
1つは私がフォルトゥーナ王国の人間であるから。このご時世に対立している国の民が入国するなんて、歓迎されるはずがない。最悪入国できないと思う。
もう1つは私が身分を証明するものを持っていないから。国内の移動なら身分証はいらず、むしろ持っていない人が大半である。だが、国外に行くときは証明証が必要になるのだ。当然そんなものを持っていない私は
絶対に身元をあらわれてしまうであろう。
......とのことにガイアは気付き、急遽密入国という形で入ることにしたのだった。
そんなこと無理だという面々に、ステラが怪しい笑みを浮かべながら提案したのだ。
あそこならバレないわ、と。
意外と箱にぎっしりとものが詰まっていたので、うまく隠れられた。それに、さすが王族も利用している紹介だけあり、入っていたものはとても豪華だった......何が言いたいのかというと、セクシーなもので見つめるにはちょっと刺激的すぎる、ということも見つけられなかったことに影響しているだろう。
その後は前の通りである。
「まあ結果良ければなんとやらってね。それより先のことだよ!」
「俺たちはこのまま王都を目指すが、セシル、お前はどうする?」
ガイアが不意に訪ねてきた。
「そのことなんですが......」
アガートラーム王国に入ったからといっても特にやることに違いはなく、進んだり、村によったり、休憩したりとを繰り返しながら、しばらくして、最初の町、ガルシェラルに到着した。
「ほんとに一人で行くのか?」
「はい、僕はこれ以上お世話になることはできませんから。」
国境を通過した後、私は彼らに次の町で別れる旨を伝えていた。
現在の私はこの国にとってスパイのような存在だ。実際情報を得るためにやってきている。
その中で当然危険な目に合うかもしれないし、隠密行動をとろうとするとどうしても彼らに気付かれないようにするのは困難を極める。
このまま一緒に行動するのは、双方にとって良くないと考えた結果、別れることにしたのだ。
「まあ、セシルがそう決めたのなら仕方ないな。」
「これからどうするの?」
ウェズの言葉に少し思案してから、
「しばらくこの辺りにとどまって、そのあとはいろいろなところに行ってみようと思います。」
「そうなの......私たちは王都エシュリーゼへ向かうわ。もし、エシュリーゼに来る機会があったら、ぜひ来てね!私たちの誰かの名前を出せば、きっと誰かが対応してくれるはずだから。」
「わかりました......それと、その......」
「なんだ?」
この言葉を言おうか、最後の最後まで迷った。しかし、
「僕のことを聞かれたら、正直に話してもらって構いません。もし、あなたがたに害が及ぶようでしたら、僕を突き出してください。」
はっきりと伝えることにした。
本当は国を背負うものとして失格な言葉だということはわかっている。しかし、どうしても彼らには不自由な思いをさせたくなかった。
もちろん進んでへまをするつもりはないが、私は多少剣を扱えるからと言って、アガートラーム王国を相手に立ち回れるほど強いなどとうぬぼれているつもりもない。この先どんなことが起こるかわからないからこそ、彼らには危険がせまったらすぐに逃げてほしかった。
「「「「......」」」」
四人は何か言いたげだったが、私の様子をみて言葉を飲み込んでいるようだった。
「わかった......」
サイラスが答える。サイラスも一応、この商団のリーダーであるからこその言葉だろう。しかしすぐに、
「だが、セシルを見捨てるというわけじゃあないからな。」
と、付け加えた。
「わかっていますよ。それに、万が一の話です。必ずそんな状況になるとは限りませんし。」
そういって私は安心させるように笑った。
「そうだな......っと、そろそろ出発だ。それじゃあな。」
「またね、セシル。」
「バイバイ!」
「またな。」
サイラス、ウェズ、ステラ、ガイアがそれぞれ別れの言葉を告げて、馬車に乗ると、進み始めた。
四人が手を振っている様子を見て、私も手を振り返す。
「さようなら、どうかご無事で......」
私のつぶやきは、風と共に消えていったーーー
ありがとうございました。
次話では、ようやくあの人が登場すると思います!