裏舞台1 私の女神様 sideエリーナ
エリーナ視点の物語となっています。
今回は少し長めになっておりますので、お楽しみください!
それではどうぞ!
パカッパカッパカッパカッと私を乗せた馬車が走る。
窓から見える景色はいつもと変わらないはずなのに、今日はなんだか暗く見えた。
そうなる理由は自分でよくわかっている。
横に置いたカバンを眺めて、はあ~、とため息をつく。
数日前のことでしたーーー
お父様に呼ばれて、お父様の書斎へと向かっていまいした。
いつものことですが、その途中ですれ違う使用人たちにはお嬢様扱いしてくれるものの、目をそらされ、避けられているのがよくわかります。
これだから、外には出たくないのです。
私の髪は白い。銀とかそんな色ではなく、まるで老人のそれです。そんな見た目を周りからは気味悪がられています。
それに加え、私が生まれたときにお母様がなくなってしまったことで、『呪われた子』とまで言われる始末でした。
その原因は伯父様。お母様の兄にあたる人です。伯父様はいわゆるシスコンというもので、結婚したお母様の元へ頻繁に通っていたそうです。ですが、私が生まれ、お母様がなくなり伯父様は絶望し、すべての原因は私であると、触れて回ったのです。
お父様が仕事であまり屋敷にいないことをいいことに、定期的にここへきてはそれを言いふらしたり、嫌味を言ったりしていくとても迷惑な人です。
親族たちは面倒ごとはごめんだと考えているのか見て見ぬふり。唯一の私の味方はお父様だけなのです。
そんなこんなで、外にはいたくありません。早くお父様の元へ行きましょう。
「お父様。ただいま参りました。」
「ああ、来たか。そこに座りなさい。」
いったい何の用でしょうか?そう思いながらも、勧められた席に座ります。
「リーナ、最近はそうだ?」
何について聞かれているのでしょうか?アバウトな質問に一瞬戸惑いましたが、すぐに答えます。
「いつも通りです。ここへ来る途中も避けられている感じがありましたから。」
「そうか......義兄上にはやめるように言っているのだがな......すまないな。リーナ。」
お父様が悲しそうな悔しいような表情で言いました。
「何をおっしゃいますか。わたくしはいつもお父様に救われております。」
本当です。お父様がいなかったら、私の心はとっくに折られていたでしょう。
「そう言ってくれると助かるよ......それで相談なのだがな、リーナ、学園へ通ってみないか?」
「学園、ですか?」
「そうだ。私の力ではリーナを幸せにはできない。少しの間だけでも通って、友達を作ってみたほうがいいと思う。」
確かに友達ができたらどんなにいいでしょう......ですが、
「ですが、お父様。他の令息や令嬢に私のことは知られているはずです。それは前にこの話が出たときにも話したはずです。」
学園に入る入らないの話は、本来ならば学園に入る年齢である10歳の時にもでました。それが、義務だからです。しかし当時は私もまだ子供で、周りの視線に耐えられないという結論にいたり、王の許しを得て、学園には入りませんでした。
もう私は17歳であるため、本来ならばあと一週間と少しで卒業する年齢だったはずです。そんな時に入って意味あるのでしょうか。
「わかっている。だが、このままずっと部屋に閉じこもっていることもできまい。卒業まで一週間だが、この短いときだけでも行ってみたらどうだ?」
ーーーというやり取りの元、一週間だけ学園に入ることになりました。
正直言って、憂鬱でしかありません。お父様にずっと迷惑をかけるのは申し訳ないから、行くと決めたわけであり、自分から行きたいとは微塵も思えませんでした。
その思いは学園に到着してからさらに強まりました。
「ちょっと、そこのあなた。」
振り返ると、そこには気の強そうな令嬢が三人ほど。
「あなた、確かブリアーズ男爵家のエリーナさんだったかしら?」
「そうですが、何かわたくしに御用ですか?」
めんどくさいとしか思えなかったが、一応丁寧に接っします。
「あなた、その髪のせいで気味悪がられているんでしょう?可哀そうに......だから、わたくしたちが味方になってあげるわ!その代わり、あなたはわたくしに仕えるだけでいいわ。簡単でしょう?」
「はあ、ありがとうございます。ですが、結構です。それでは。」
可哀そうなんて思ってないでしょう?
付き合っているだけ無駄だと考え、立ち去ろうと背を向けました。が、
「ちょっとお待ちなさい!」
突然サッと髪につけていた飾りを取られてしまいました。あれはダメ!
「返してください!」
「ふん、あなたみたいな人には似合わないわ。それをわたくしがもらってあげるって言っているのだから、感謝しなさい。」
「そうよそうよ!私達は子爵家の令嬢よ。わたくしたちにそんな口を利くなんて失礼よ!」
「わたくしたちに謝りなさい!」
このままではとられてしまう!
無理にでも奪い返すしかないか........そう考え、強硬策に出ようとした次の瞬間。
「あら?あなたたち、何をしているのかしら?」
「わたくしたちも混ぜてくださらない?」
突然二人の令嬢が現れました。どこかで見たはずだが、誰でしょう?そう考えている間に会話は進んでいきます。
「あ......あの......」
「三人とも顔色が優れないようですが......?」
「まあ!大変だわ。保健室へ行ったほうがよろしいのではなくて?」
どうやら、あとから来た二人の方が身分が上の方のようです。三人が戸惑っていることがよく伝わってきます。
私は混乱し、それをただ見ているだけしかできませんでした。
そして、三人ともこの場から去っていきました......なんて、客観的にみていると声をかけられます。
「これ、あなたのものではなくて?」
「あ、ありがとうございます。」
きれいな白菫色だと見とれていて、ボーっとしていたので慌てて返事をしました。
驚いたことに、二人は私のことを知っているそうです。絶対に伯父様のせいですね......
そして、事情を聴かれたので、話そうと自分の中で整理しているうちに感情があふれ出してしまい、思わず泣いてしまいました。
白菫色の髪の少女に私の髪を褒められて、とてもうれしかったです。今までおばあさん見たいとしか言われたことがなかったから。
その時私はまるで女神様が私を救いに来てくださったのだと、そう思いました。
落ち着いた私は、二人と話すうちに二人のことを何も知らないことに気がつきました。慌てて尋ねると、驚いた表情をしていていましたが、改めて名乗ってくださいました。
「では、改めて自己紹介をいたしましょう......わたくしはシーウェル侯爵家令嬢のロザリア・シーウェルです。以後お見知りおきを。」
侯爵家のご令嬢だったとは......さっきの三人が逃げるわけだわ。それなら、そちらの方も高位貴族のご令嬢なのかしら?
「わたくしはフォルトゥーナ王国王女セレーネフィア・フォルトゥーナです。これからも仲良くしてくださいね。」
......え?......王女様......?
......。......。噓でしょう!?そんなこととはつゆ知らず、王女様に対して失礼なことをしてしまいました!
さっと思い返すと、自分でも血の気が引いていくのがわかります。
......そんな私がとるべき行動は一つです。
「申し訳ありません!王女殿下と侯爵令嬢だと知らずにご無礼をいたました!どうかお許しください!!」
不敬罪で処罰されるかもしれない.......そうなれば我が家に迷惑がかかってしまう......
ああ、ごめんなさい......お父様......
ですが、王女様は私を許してくださいました。
そればかりか、お二人ともとても良くしてくださいます。クラスを変えてださったり、剣を教えてくださったり......そして、友達になりました。
リーナと私を呼ぶのはお父様と、セレネ様、ロザリー様だけです。
なんだか、胸がポカポカしました。こんな気持ちになるのは初めてです。
お父様に今日のことを話すと、とても喜んでくださいました。
「それは本当か!?王女殿下とお友達になるとは!でかしたぞ、リーナ!」
そのせいか、今まで私のことを避けていた使用人たちの態度も柔らかくなっていきました。うれしい、という気持ちももちろんあるけれど、なんだか複雑です。急に態度が変わると......
でも、お二人と出会えて本当に良かったと、とても思います。
その後も二人は私のことを気にかけてくださいました。
そして、今日は二人と商業街へお出かけする約束をしていたのです。
初めての場所に、初めての人......最初は戸惑いましたが、だんだんと溶け込めていったと思います。お二人とも尻込みせずに話すことができていますし......
ですが、そんな幸せは長く続いてはくれないようです......
私はセレネ様と別れた後、無事に帰ってくることができました。おそらくロザリー様も。
けれど、敵陣に乗り込んだセレネ様は,,,,,,きっと無事では済まないはずです。
お父様のいる王宮のことも気がかりです......
ああ、どうかご無事で......
お読みいただきありがとうございました!
次回はルウェリンレイ視点です。