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ツギシモノ  作者: KAIEI
1章 転移
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第八話 訓練の時間だ③

いつもより長くなってしまった。(word換算2953字)


お楽しみください。

司がミハエルのところで訓練をしている一方で光琉達も訓練にいそしんでいた。


「いいぞ。踏み込みも素晴らしい。やはり勇者のリーダーの称号を受けるだけはあるな。」


光琉からの剣をさばきながらニッカと笑うフレイム。二人の剣戟はかなりのスピードで目で追うのもやっとというところだが、フレイムは難なくこなしていた。しかし、光琉は少し疲労がにじんできていた。


周りでも同じような光景が繰り広げられていた。真や愛葉も対峙している相手と比べて疲労が見えてきている。


「そろそろ休憩にするぞ~!!!」


フレイムのその声にほとんどのメンバーがほっと一息つく。ただ一組その声に気が付かないほど訓練に熱中しているものがいた。洋一郎だ。相手の騎士とラウンドシールド一つで互角以上に渡り合っている。


騎士が振り下ろした剣を盾で受け、そのまま腹を蹴飛ばし、体勢が崩れたところを盾で殴りつける。一方騎士側も負けておらず短く呻きつつも洋一郎の足を払い、剣を捨て肘鉄を叩き込む。そして捨てた剣を拾い上げ唐竹割。それを洋一郎がまた盾で受ける。


このような応酬がずっと続いていた。フレイムの「おい!終われ!」の声でやっとこちらに注意を向けた。


「上川君って、こんなに動けたんだ。」


一人の女子がそうつぶやく。周りの人間もほとんど同じことを考えていた。


「あー、あれでしょ。」


そんな中、佳乃が口を開く。


「青葉君の叔父さんが昔スタントマンで今はジムやってるから上川君、青葉君、風間君は」


「佳乃!?」


佳乃が口を滑らせた内容に愛葉は目をむく。司の叔父のこと、そして司自身もかなり体を動かせることは明日人と洋一郎が生徒会メンバーと話したことがあるため、佳乃が知っている分には何ら問題はない。ただ、それを聞いた司が血相を変えて口止めしに来た過去があることを彼女はすっかり忘れていた。

あ、といった顔になるがもう遅い。口に出した言葉は取り消せない。周りの生徒達が佳乃を注視する。


「あ、えーっと…」


困り果てる佳乃だったが、光琉や愛葉も気の利いた助け舟を出せず困惑した表情をしていた。


「あー、あんま気にしなくてもいいよ?それ。」


そこに話題の主でもある洋一郎から声がかかる。どうやらきいていたらしい。彼は苦笑いを浮かべながら続けた。


「司がそのこと秘密にしてる理由って学校じゃないなら割と関係ないんだよね。しかも最近司自身、隠すの馬鹿らしくなってきたなんて言ってたし。」


司は小学校のころから高い身体能力を誇っていたのだが、それゆえに体育教員に尽く目を付けられた。それが嫌で、中学からは同じことを避けるために自分の身体能力を隠した。ちなみに、高校3年生になってでも隠していた理由はただ引っ込みがつかなくなってしまっただけであったりする。


「そうなんだ。」


佳乃の顔が少しふにゃっとなる。その後ろで愛葉は深く息を吐いて安心していた。それを見た生徒たちもどこか和んだ雰囲気になる。そして、人が集まれば雑談が自然にうまれるわけで、訓練のここがきつかったなどといった話題で各々が沸き始める。


「んしょ。」


それを横目に洋一郎が自分の傍らに置いていたラウンドシールドを踏み上げてつかみそのまま背中の格納用ジョイントに収納。流れるようにやったため周りもそれこそ流したが、かなり高等テクであったりする。

「よし。お前ら!今から昼休憩だ!」


雑談する生徒たちにフレイムが声を張る。生徒たちはそれを聞くと笑みを浮かべながら食堂のほうへと足を向ける。誰もが駆け足になり、男子の中には走り出している者もいた。


「ん?ああ、そっち終ったのか。おつかれ。」


「あれ?青葉??何してるんだ??」


食堂で光琉達を出迎えたのは司だった。不思議そうに自分を見る光琉に司は笑いをこらえながら説明を始める。その周りでは生徒たちが食堂に入って来次第各々椅子に座り、食事を始めていた。


「ミハエルさんのとこでの訓練が少し早く終わったからな。まあ、なんだ。邪魔にならない範囲で料理を見せてもらってたんだよ。」


「そうなのか。風間はどうしたんだ?」


すると司は明後日のほうを向き、ため息を吐いた。


「ミハエルさんのとこでいろいろいじってる。あいつの悪いとこだよ。いろいろいじり始めるとかんっぜんに没入しちまうんだよなあ。ミハエルさんに迷惑かかってないといいんだけど。まあ、いいって言ってくれてはいるけど、心配ではあるよな。」


「保護者か?」


司の発言に心底あきれた表情になる光琉。司は肩をすくめ傍らにあったトレーをつかむと「じゃあ」といって歩いて行った。そこには二人分の食事がのっていた。明日人の分と司の分、もしくはミハエルの分であろう。


昼食は宮廷料理人たちが腕を振るったコース料理…ではなかった。料理人たちが腕を振るっているのには間違いないのだが、時間の都合上、定食スタイルでの提供である。数切れのパン(お代わり自由)と赤身肉のステーキとサラダ。そしてスープだ。なお、水は炭酸入りと炭酸無しが選べた。


腹八分目にするよう言われながら食べた昼食が終わると訓練が再開される。


こまめな休憩と時々の軽食を挟みつつ訓練は夜まで続いた。へとへとになった生徒達は至れり尽くせりの夕食と湯浴みで癒され眠りにつく。


そのような日程での訓練が続き毎日生徒達は夜へとへとにならないことはなくなった。ちなみにへとへとな生徒を癒すのには司も家庭料理のレシピを提供することなどで一役買った。




「なあ、青葉ぁ。お前さあ、魔術師なのになんでこっちの訓練に来ねえんだよ?」


ある日のことだった。料理長と話し終え、厨房から出てきた司に声をかける者がいた。


「ん?香山?どした?」


声をかけてきたのは香山鋼。司との関係は良くも悪くもない。司としてはクラスメイトだとは認識している、程度の存在だった。


「だから、たまにはこっちに顔出せよ。魔術師なのに出てこねえのずりぃだろ。」


「そういうことか。」


そのうちそういう意見も出てくるだろうと思っていた司はすんなり鋼の話に従い、杖をとってくると訓練場へと向かう。そこでは光琉とフレイムが訓練場の中心におり、それ以外の面々は少し離れたところで二人を見守っていた。


「香山??なにこれ?」


「いや、聞いてないな。」


不思議に思った司が鋼に聞くが、鋼も知らないようで、首をかしげた。なので周りで見ている中で近くにいた一人、愛葉に声をかけることにした。


「神楽坂、お前の弟何してんのあれ??」


「ひゃえ!?…びっくりしたわ。いきなり後ろから声をかけないでよ。」


「ああ、悪い。お前の弟何やってんのあれ?」


「あなたのそのスルースキルは尊敬するわ…。」


あきれた表情になる愛葉。数秒その表情を続けたあと、彼女は説明を始めてくれた。


「どうにも勇者の代表格にしか使えない技があるらしいの。それの訓練よ。パワーバースト?だったかしら。」


補足しておくと、パワーバーストは暴走のリスクがある技であり、最初の使用では暴走は不可避らしい。


「なるほどな。香山…これ訓練する余地なくないか??」


「…無いな。」


司の発言にどこか無表情になる鋼だった。




『とある場所』


「久々の目覚めにしては嫌な起こされ方であるな…。この多大な魔力はどこからだ…。」




『ミハエルのアトリエ』


「試作品、完成だ!!!」


明日人は自分の試作品を前に叫んでいた。


こんな長く書いたの初めてです。なんか達成感ある。次回やっと明日人君が活躍するのか!?

個人的に男子キャラん中で今のところ俺が一番好きなの明日人君なんだよね…。


感想、評価、ブクマもよろしくお願いしますね

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