第十六話 最後の場所へ
「AUG…。」
司が手を振ると魔方陣が展開。そこから出てきた白銀の片手剣を手に取り、魔物を一瞥。
「…」
そして風のごとく走り抜け、魔物が認識する暇を与えなかった。
死を認識する暇を。
“Phantom”の能力により固定してから首をはねたこともあり、断末魔も聞こえず響くのは勢いの良い水音だけだった。そして、“鑑定”と竜の力が混ざり“竜眼”となった眼が自分の足元、床をすり抜け下の改装に様々な魔物が生きていることを認識する。
「SA…I…TA…N…。」
片言でそうつぶやくと司は剣から“ブレス”を地面に向けて噴き出した。そしてひび割れた地面に大槌形状に変わった片手剣をたたきつけ、最短ルートを作り出す。ルール違反だが、違反できるパワーが今の司にはある。
あふれ出る魔力によりついてくる魔物を再度片手剣にもどしたそれで流れるように切り伏せていく。
「UGAAAAAAAAAAAAAAAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」
魔物の集団の中から響く声。魔物のものではなく司のものだ。そんな化け物の声とともに首ちょんぱされた魔物の山が出来上がっていく。どうにもここの魔物は怯むことを知らないらしい。川の流れのように無限に司へとびかかっていく。
数時間後。死体の山の上に立っていたのはやはりというか司であった。ただ、暴走超人である司とはいえ、魔力を過剰に使用しているため、普通に長期戦はきついものがある。ならばどうしたのか。左手から伸びている糸がこの長期戦を乗り切ったカギだった。魔方陣から取り出した糸に物体のエネルギーを吸い取る魔法“ドレイン”の効果を付与しており魔物やその死体からエネルギーを抜き出し魔力と体力へ変換していたのである。実は少しずつ栄養も奪っていたりするのでいままで健康になりつつあった。
血の巡りが緩やかにならぬ前に、とどんどん魔力の反応がある方向へと進んでいく。そうして5日。司はバカデカい魔力の塊を内包した部屋の前にいた。
「いくか…。UGAAAAA!!!」
落ち着きと理性を取り戻していた司だが、ここで再度暴走状態に。だが、理性は残っているし体も思うがままに動かせる。ただ、ちょっと舌足らずになる、というのがいまだ弊害として残っているがこの状態(司曰くドラゴンバーサカー)のメリットに比較すれば些細も些細であった。
司は低くつぶやきながら部屋へと足を進めるのであった。
「UAA…。」
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