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勇者を譲った僕の異世界生活。  作者: 紅花翁草


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結婚しました。 2

 アイザのお母さん『ユイナ』さんは西暦1998年の20歳の時に、この世界の200年前に転移した日本人でした。


 アイザが凄く驚いていたので、母親が転移者だった事は知らなかったようです。

 その衝撃的な発言に、僕は片隅にあった想定だったこともあり、すぐに納得した。

 アイザから聞いていた話と、「ファイヤー」とか言ってたからね。


 だけど、次からの話にはちょっとびっくりでした。

 この世界の言葉が日本語だったのは、数千年前の時代に転移した日本人が神的な存在になって広めた事、魔族の寿命が1000年なのは、元々がその日本人の子孫だからという話。

 文字が日本語じゃないのは、絵文字的な文化が既にあった為にその絵に合わせたとの事。

 まあ、これはユイナさんが魔族の残した口伝などからの推測らしいですが、つじつまが合う話だったので、僕も信じてみました。

 ちなみに魔族達が文字を使わないのは、アイザが言ってた通り、必要がないからだった。

 意思疎通出来る者が魔獣合わせても300人くらいしかいなくて、記録に残すとか、契約書みたいな習慣がないとの事です。

 まあ、1000年生きていくと、そういうのは要らないのかもしれない。


 

「だけど、疑問が出てきたのよね。」

 ユイナさんが困った表情になっていたので、その理由を聞くと、

「勇者って日本人なのは判っているのだけど、毎年違う人間なのよね。1年契約的な召喚だと納得がいくのだけど…」


 確かにそうだ。

 僕を召喚したラニューラさんは、そんな事は言ってなかった。

 魔王が倒してないのなら、毎年呼ぶ必要なんてないだろうし、エイルさんのお父さんは病気だから仕方がないけど…


「それについては、私がお答え出来そうです。」

 そう発言したのはエイルさんだった。


「私の父親は、21年前の最初の勇者として召喚された異世界人です。」

 僕以外の人達が驚きの声を上げる中、エイルさんは話を続けました。


 あの薬にそんな副作用があったのか。飲まなくて良かったぁああ。

 僕は選択を間違ってたらと、想像して背筋が冷たくなっていた。

 

「じゃあ、ハルトは死んじゃうの?!」

 エイルさんの話が終わると、アイザが叫び声を上げました。

「いや、大丈夫だよ。僕はその薬を飲んでいないから。その薬は一年に一人分しか精製出来ないって聞いてるしね。」

 最初に出会ってエイルさんと会話した時に、なぜ薬の話を聞いたのか理解しました。そして、その時の笑みの理由も。


 そうか…ソウジって人は死んでしまうんだよな。

 他人事だったけど、さすがに胸が痛いな…


 僕が俯いていたらマイジュさんが、 

「なぜタライアス王は、そこまでして魔王を倒そうとしているのでしょうか?」

 マイジュさんの質問は、僕も思っていた事だった。


「そうですね。あまり深く考えていなかったですが、本当にどうしてなのでしょうか?」

 ユイナさんも首を傾げて考えていた。


 人が魔王を倒す為に行動するってのは、定番で当たり前すぎて気にも留めてなかったのとのことです。

 そもそも、20年前までは、人間の領地の事すらも気にも留めてなかったと…

 実際、自分の生活に関係ない事なんて興味すら沸かないよね。


「だけど、騙されている日本人の事はなんとかしたいなぁ~」

 僕は心の声を、独り言として声に出していた。


「そうですね。理由はどうあれ、これ以上召喚者を犠牲にしたくはないですね。」

 ユイナさんの表情も暗くなっていた。


「まあ、それはまた考えるとして、明日の事を決めましょうか。」

 ユイナさんの仕切りなおす仕草で、僕達は当初の話をする事にしました。


 結婚式は城の中にある教会で、城で生活している身内同然の者達だけでするとの事でした。

 人数的には10人程度なので、盛大な結婚式って感じにはならないそうです。

 ユイナさんの時もそうだったみたいで、披露宴みたいなものも無く、『結婚の儀式をする』という事なのだそうだ。

 まあ、披露宴はないのだけど、夜は皆で宴会になるらしい。

 僕的には、同じような気がするのだけど、無礼講的な場になるので宴会なのだとか。


 で、結婚式自体の流れは、いわゆるウェディングドレスを着て、バージンロードを歩いての指輪の交換と誓いのキスという僕の知ってるやつです。

 マイジュさんやエイルさんについでに聞いてみたら、人間側も同じでした。

 まあ、これも神的な存在になった日本人が伝えたのだろう。


 そして僕は、ある疑問を明確にしなければならない事があった。

 これは、聞き方を間違えれば生死に係わりそうな案件です。

 そう…いつ僕がプロポーズしたかだ。

 大体の予想は今までの経緯で思い当たるものがある。

 日本の文化がここまで浸透しているのだから当然、指輪が決定的なプロポーズだと思う。

 だけど、指輪を贈っただけで、即プロポーズになるのなら、あの時に何も反応が無かったのが判らない。

 僕は、どう確かめれば良いのか、必死に言葉を探していた。


 でも結局、アイザに直接聞く言葉が思い付かなくて、後でマイジュさんとエイルさんに相談する事にした。

 今は、結婚式の事だけを考えることにします。


「指輪の交換って、結婚指輪を持っていないけど、どうすればいいのですか?」

「それなら大丈夫よ。『ベルフォーランド家』の指輪を、二人に用意しますから問題ありません。」

 ユイナさんが左手の指輪を見せてくれた。

 真っ黒なんだけど、クリスタルのような質感で光が反射して綺麗な石の指輪だった。

 この後、指のサイズを測って造ってくれる話でした。


「それでは、アイザはドレスの準備があるから今から部屋に行きますよ。ハルトさん達は、もう少しここで待っていて下さい。お部屋の準備をしますので。」

 僕はアイザとユイナさんを見送って、部屋には僕とマイジュさんとエイルさんの3人になっていた。


 よし! 今なら聞ける。


「マイジュさん、エイルさん…こっちの世界のプロポーズ? じゃないか、結婚の申し込みって指輪を贈る事ですか?」

 僕は部屋には僕達以外居ないのは判っていたけど、テーブルに乗り出し小声で訊ねる。

 マイジュさんとエイルさんが、呆れたような溜め息の後、子供を優しく叱るような笑みを僕に向けて答えた。

「「そうです。」」っと二人がハモる。


 やっぱりかぁ…


「まあ、それだけでは足りないのですが、ハルトさんはアイザさんの事を『一番に考えている。』と公言した事が、ありましたからね。」

 マイジュさんが遠い目をしている。


「ああ…そうですね。でも何で指輪をアイザに付けた時、誰も何も言わなかったのだろう…王妃さんも居たのに。」

 僕の呟きのような言葉に、マイジュさんが、

「神聖な事ですからね。当事者達の邪魔になるような事はしませんよ。」


 そりゃ、そうだよな…

 やっぱり、指輪かぁ…

 軽はずみだったなぁ…アイザに悪い事したよな。


 僕はあの時のアイザが、どんな思いで受け取っていたのかを知って、遣る瀬無い気持ちと悔しさが溢れていた。 

 


 ユイナさんとアイザが、ドレスの試着から戻ってきました。

 二人とも満足そうな笑顔です。

 それから、昼食をご馳走になり僕とアイザは指輪のサイズ合わせに向かい、マイジュさんとエイルさんは二人同室の客室に案内されました。

 魔族領での心細さを少しでも取り除く為と、ユイナさんの配慮でした。


ユイナさんに連れられて入った部屋は色々な武器や防具が飾ってある部屋でした。

「初めまして、ハルト様。私は鋼細工師のウォームと言います。ベルフォーランド家の武具や装飾品など、全てを任されている者です。」

 見た目は50代くらいで、2メートル近い長身で細身。整えられた短い黒髪に、目元に皺が少し出始めているが、整った美形顔。スーツのズボンに、引き締まった筋肉を誇示するような薄いシャツ一枚の姿は清清しい威圧感を放っていた。


 僕が自己紹介を返すと、早速っといった感じで指のサイズを測る。

 そして、アイザの着けている指輪を見た時、職人魂に火が付いたようです。

「これは? なんていう金属なのですか?」

 アイザから取り外した指輪を、真剣な顔で凝視しています。


「さあ? ハルトに貰った指輪だから、私には判らないわ。」


 アイザの言葉に、ウォームさんが視線を僕に向ける。

「僕には判らないですが、魔法付与が出来る合金らしいです。ある国の企業秘密的な物なので、調べることも難しいのかな?」

「魔法付与だと? なんだそれは?」

 紳士的な喋りから、職人の喋り方になっているウォームさんに、アイザに指輪を返して貰う。

 こっちが普段の姿なのだろう。


「アイザ、盾を出してくれる?」

 僕に頷き、『エイルの盾』を発動させたアイザの姿に、ウォームさんと一緒に居たユイナさんの二人が驚きの声を出していた。


「なるほど! 指輪の中に魔法を発動するための、紋章か呪文のような類を組み込んでいるのか。面白い!」


「他にも色々と…あっ! そうだ!」

 僕は腕輪を見せてその効果を説明し、自分のリュックを取り出して中から、ピアスを見せる。

 アイザのお母さんに許可を貰う為に買ってあったのを、今思い出したのだった。


「そうね…ハルトさんは人の領地で色々と約束をしていますし、アイザと離れる機会が少なからずあるだろうし…着けても良いですよ。でも大丈夫? 開けるときはそれほど痛くないけど、化膿すると痛いわよ?」


 え? まじで?


 僕は、嫌な汗と、全身が身震いする寒気のようなものを感じていた。


「ママ、それほんと?」

 僕達の話を聞いていたアイザが、痛みを堪えているような顔で聞き返していた。


 僕とアイザの表情を見てクスっと笑う、ユイナさん。

「本当よ。でも、大丈夫。治癒魔法があれば、その心配が要らないから。」


 ユイナさんは僕とアイザをからかっていたようです。



「じゃあ、指輪のサイズも測り終えたみたいだし、今からピアスを着けましょうか。」

 そう言って、終始笑顔のユイナさんに連れられてこられた部屋には、3人の女性が居ました。

「ここって?」

 僕が隣にいるアイザに尋ねる。

「医務室よ。」

 着ている制服が白いワンピース服のような服だったので、アイザの言葉ですぐに部屋の女性達が、白衣の看護師さんに変わりました。


「ユイナ様、どうかしましたか?」

「アイザと隣のハルトさんに、ピアスを着けてやってください。」

 一人の看護師さんがユイナさんに挨拶をした後、深くお辞儀をして「承知しました。」と答えた。


 僕はピアスを看護師さんに渡して、アイザと一つずつ左耳に着けて下さいと頼みました。

「え!? という事は、アイザ様の殿方となる方ですか?」


 あれ? あぁー! そうだよな。ピアスを着け合うって、そういう相手だよな。

 便利アイテムって認識しかしてなかったから、気付かなかった。

 はぁ…これもアイザ的には、そういう重みのあるイベントだったんだな。


「はい。アイザと明日、結婚します。」

 僕は背筋を伸ばして、アイザを一度見てから、自分の口で初めて言葉にしました。


 僕はベットに横になって耳に穴を開けた時、少し痛かったけど、アイザの為にみっともない姿を見せたくないと頑張りました。

 その後すぐに治癒魔法で治療したので、痛みが消えてピアスが着いている違和感も無くなっていました。


 アイザも別の看護師さんにしてもらっていたので、ほぼ同時に治療が終わり、嬉しそうに手を耳に添えていた。

《ハルト、どう? 聞こえる?》


 僕は不安そうな視線を送るアイザに、ピアスに指を当てて答えた。

《うん。聞こえるよ。 これからもよろしく、アイザ。》


 アイザの表情が赤くなりながら笑顔になっていたので、僕の言葉がちゃんと伝わったのが判った。



 ピアスを着け終わって、医務室を出た僕達は、ユイナさんが通路で立ち止まったので、僕も立ち止まる。そして考え込むユイナさんに、僕とアイザは顔を見せ合い疑問符をそれぞれ頭に浮かべていた。


「アイザ、ハルトさんの部屋はどうしたい? 普通は客室なんだけど、もう二人は一緒に暮らしてたし、アイザの部屋で一緒に過ごす?」

「うん。ハルトと一緒がいい。」

 アイザの屈託のない笑顔に、ユイナさんは嬉しそうに笑みを返していました。


 リビエートからの事が、全部知られているんだよな…

 いったい、どこまで話してるのだろう? …あの影に居た人。


 僕はアイザとは対照的に、気持ちが沈んでいた。

「ハルト、嫌なの?」

「違う違う、影の中に居た人がどこまで伝えてたのか考えてただけだから。アイザと一緒の部屋の方が僕も嬉しいから。」


「全部ですよ。」

 ユイナさんの意味深な笑みに、僕は恥ずかしい気持ちになって体が熱くなっていた。


「それじゃあ、夕食時にまたね。」

 ユイナさんはマイジュさん達に改めて挨拶をしに行くと言って、歩いていった。


 アイザの部屋は、宿の2人部屋のリビングと寝室を足したよりも広いと感じるほど広かった。

「お帰りなさいませ、アイザ様。」

「ただいま、メイラ。私の夫になるハルトよ。今日からこの部屋で一緒に過ごすのでよろしくね。」


 身長的にはアイザと同じくらいだけど、アイザより幼い感じに見える少女に僕は「よろしくお願いします。」と頭を下げた。

 質素と言えばそうなるのだろうけど、艶やかな生地で少し光を反射している黒に近いグレー色の無地の長袖ワンピースに、黒タイツ姿はメイドとしての服装なのだろう。

 アイザの着ている可愛いメイド服とは対照的で、目の前にいる少女の姿の方が実用的な服装に見えた。


 ん~これはこれで清楚的で良いな。


「そんなにジロジロ見て、何考えてるのよ。」

「いや、メイド業務するなら、彼女の服装が正解なのかなって思っただけだよ。」

 アイザの言葉と視線が少し痛いです。

「そうね。ハルトから貰ったメイド服は、こっちではドレスに近い使い方ね。」


 そっか、だからメイド服のアイザに何も言わなかったのか。

 

 そして服の話が終わると、アイザは着ていたメイド服をメイラさんに脱がさせて、下着姿でベットに寝転んだ。

「飲み物を持ってきて。」

 いつも見るアイザの姿に僕は安心して、近くにあったソファに座った。



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