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勇者を譲った僕の異世界生活。  作者: 紅花翁草


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イストマイジール・エトラシア 1

 ファルザ公国に向けて出発した僕とマイジュさんは1日目の宿がある街に、何事もなく着いた。

 というより、着いていました。

 僕は整備された街道を走る馬車の中で寝ていたのです。

 揺れも気にならなかった事と、暇だったこともあり、馬車の中で眠ってしまっていた。

 僕はマイジュさんに起こされて街に着いた事を知る。


「マイジュさん、本当にすみませんでした。僕だけ休んでしまって。」

「いや、いいですよ。」

 まあ、当然の返答が返ってきますよね。

 だけど僕のお父さんが言ってた。

「旅行の車中で、一人で運転するのは寂しいものだぞ。それ以上に、ずっとスマホいじっているのは腹が立つ。すっごく腹が立つ!だけど男なら、笑顔で我慢しろよ。」

 よし!マイジュさんにお詫び的な何かをしよう。


 宿の受付の所でマイジュさんが少し困った顔をしていた。

「どうしたのですか?」

「いや、部屋を2つ頼もうとしたのだけど、宿の空きが少ないから出来れば一部屋でと、頼まれたのです。」

 僕が宿の人に話を聞くと、独り旅の客は問題なく一人で泊まれると。

 宿の意向としては間違ってはいない頼み事だった。

 そりゃ、泊まりたい客が満室で泊まれない事になる可能性があるからね。


 ん~…僕的には同室で泊まるつもりだったけど、2部屋を頼んだって事は、マイジュさんは一人がいいってことだよね。

「ここ以外の宿でもいいですけど?」

「いや、浴槽付の宿はここしかないのです。」

 僕は少し悩んで、マイジュさんに譲る事にした。

「マイジュさんは騎手として、今日は疲れているし、埃もかかってるいるし、この宿に泊まってください。僕は別の宿にしますから。」

 これで、さっきの昼寝のお返しにはなるかな。


「いや、大丈夫です。二人同室で泊まりましょう。」

 そう言って、僕の返事を待たずにマイジュさんは手続きを終わらせた。

「僕は同室で泊まるつもりだったのですが、本当に良かったのですか?」

「ああ、大丈夫です。余計な気を使いましたね。私も同室でも問題ないので。」

「そうでしたか、なら良かったです。」


 そうか、僕に気を使ってたのか。そうだよな、旅で一緒になったとはいえ、お互いほとんど知らない相手なんだし、普通はそうするよね。

 僕は気が回らなかった自分が恥ずかしくなった。


「マイジュさん、先にお風呂入ってくださいね。」

 アイザの時は自然と決まった事だけど、今日の僕とマイジュさんの労働を考えたら、当然の順番です。


「ありがとう。先に入らせて貰います。」

 鎧を脱いだマイジュさんはベットの横に並べるように置いていく。

「鎧って、皆さんそうやって置いているのですか?」

「ああ、これですか。そうですね、何かあったときに順番に装着出来るように、自分で決めた並びに置いていくのが一般的ですね。」

「なるほど。理にかなっていますね。」


 マイジュさんが脱衣所に向かったので、僕はいつも通りに脱いだ服を部屋干しする。

 自分の分だけなのですぐに終わってしまった。

 僕のリュックはアイザに預けてきたので、借り物のカバンには地図本と換えの衣類だけを入れて荷物を少なくしてきた。

 なのでジャージが無いので今は下着とシャツだけになっている。

 さっきも気を使って一人部屋にしようとしてくれてたし、マイジュさんって紳士的なんだよな~

 ブレザー着たまま待っていた方が良かったのかな?

 リビングの端だけど、部屋干しって気にするのかな?

 先に聞いとけば良かった。

 そんなことを考えては見たけど、一度脱いだ服をもう一度着るのは凄く面倒に思ってしまい、

「まあ、ブレザーで待っていたら、それこそお風呂、先に入ってくれとか気を使わす事になるかもだし、ここはあえて、寛いでる姿を見せるべき。」

 って、事にしよう。


 お風呂から上がった、マイジュさんはきっちりと服を着た状態で部屋に戻ってきた。

「入浴先に使わせて貰ってありがとう。」

「いえいえ、じゃ僕もお風呂入ってきます。あと、僕の服を部屋干ししてありますが、邪魔じゃないですか?」

「いや、大丈夫です。私も後で干しますから。」


 良かった。部屋干しは正解だったよ。

 僕は安堵してお風呂に向かった。


 ん? 何か落ちてる…

 僕は脱衣所の床に白い布を見つける。

 パッと見、下着には見えなかったので僕は拾いあげて確認すると、タンクトップ? にしては長さが短い?


「ハルト君!それ私のです。すみません、落としてました。」

 何故か慌てた様子のマイジュさんに僕はそれを渡した。

「いえ、ぜんぜん気にしてませんから、アイザなんていつも脱ぎ捨ててましたから。」


 僕は下着とシャツを洗って、のんびりと湯船に浸かっている。


 マイジュさんは、やっぱりしっかりしてるなぁ~

 日頃の姿もそうだけど、どこかの貴族の家とか、格式ある家庭で育った人なのかな~

 アイザとは大違いだな。

 って、アイザってある意味、姫様なんだよな!

 マイジュさんは、気遣いっていうか、気を張っているというか、距離感が少し遠い感じなんだよな~

 いや…これが普通の対応かもしれない。

 僕とアイザの付き合い方がおかしいんだよな、やっぱり…でも、気兼ねしない相手が傍にいるのって大事だよ。うん、もの凄く大事だよ。


 僕もマイジュさんに見習って、脱衣所で替えの執事服までしっかりと着てから部屋に戻った。


 いつものように宿にあるレストランで食事を済ませ、部屋に戻って来た僕は執事服を脱いでカバンに詰める。

 結局、2着目として買った執事服は宿で着る用にしました。

 ジャージでレストランとか恥ずかしすぎる。


 僕は下着とシャツだけになったけど、マイジュさんはやっぱり服を脱ぐ事はなかった。

 ここは、何も聞かない方が良いのかもしれないけど、我慢出来ずに聞いてしまった。

「マイジュさんって、普段から服を着たまま寝るのですか?」

 その後の、『もしかして、気を使ってますか?』っていう言葉は押さえることが出来ました。


「任務中は出来るだけ、そう心掛けてます。気持ちを切らさない為とか、すぐに行動出来るようにですね。」

「なるほど、さすがですね。」


 マイジュさんの事を少し誤解していた自分が恥ずかしくなりました。



 2日目の馬車の移動も何事も無く、夕刻前にファルザ公国の入国ゲートに隣接する街『イズリ』に着いた。

 ファルザ公国に入れるゲートは全部で3箇所。

 なので、『イズリ』に集まる商人や傭兵も多いため、街の大きさに比べて、宿や飲食店が多く並んでいた。


 僕は王都の中心地のような街並みを見上げていた。

「ここだけみたら、王都にも負けない賑わいですね。」

「そうですね。ここは『リビエート王国』からだけじゃなく、『タライアス王国』からと、『バルディオ帝国』からも人が集まりますからね。」


 僕はデバルドさんの武勇伝の話で知った帝国の知識を思い出す。

「タライアス王国とバルディオ帝国の戦争で、周りが巻き込まれた感じでしたよね。」

「そうですね、隣国を巻き込んでの領地の奪い合い。本当にくだらない時代でした。」

 マイジュさんの悔しそうな顔が、重く物語っていた。

「だとすると、魔王島が現れたのは、悪いことだけではなかったのかな。」

「公に発言するのは駄目ですけど、そう思っている人は沢山いると思いますよ。」


 戦争なんて、なにも良い事なんてないのに、権力者の欲望に付き合わされて、命を奪われた人達…僕は戦争を知らないけど、その理不尽さと悔しさは判る。

 当人ほどの重みは無いけど、それでも僕は、それを少しでも判る人間になりたいと思っている。


 宿に入った僕達は、今回は二人部屋を最初から頼んだ。

「イストマイジール様ですか?」

 受付から部屋に向かおうとした矢先に声を掛けられた。

 僕は声の主を確認するために振り向くと、綺麗な女性が立っていた。

 マイジュさんと同じ栗色のロングヘアーにスラッとしたドレス。隣には執事とメイドさんがいる。


 どう見ても、貴族だよね? 

 マイジュさんの事を言っているのだろうか?

 『様』って呼んでたし、マイジュさんってやっぱり貴族系の人ってことかな。


 僕は返事をしないマイジュさんが気になって顔を見ると…

 めっちゃ、固まってるんですが!

 凄く驚いているのか、困っているのか、よくわからない顔で、固まっているのですが!

 声を掛けた女性が、凄く困った顔になっているのですけど…

 マイジュさん、戻ってきてください~!


「マイジュさん? マイジュさぁ~ん!」

 僕の声が届いたのか、マイジュさんの顔がいつもの冷静な顔に戻りました。


「ミリティーラ…どうしてここに。っと、済まないハルト君、先に部屋に行っていてくれますか。」

「はい。それじゃあ、荷物預かりますよ。」

「すみません。先にお風呂入って寛いでいてください。」


 僕はマイジュさんの荷物を預かり、先に部屋に向かった。

 そして、言われた通りにお風呂に浸かっている。


 まあ、僕から色々と聞くのは駄目だよね。

 マイジール様か~…見た目は家族ぽかったけど、家族なら様は付けないから違うか。

 少し離れた従兄妹とかかな?

 でも、あの驚き顔は…

 僕は笑い声を漏らしていた。


 お風呂も終わり執事服に着替えた僕はリビングのソファに横になっていた。

 そろそろ1時間くらい経つけど、マイジュさんはまだ来ない。


 扉を叩く音がしたので声をかけるとマイジュさんだった。

「お帰りなさい。」

「すみません。少し遅くなりました。」


 僕はお風呂を済ませたと伝え、マイジュさんにお風呂を勧めて、僕はカバンからファルザ公国の地図を取り出した。情報誌の地図じゃなく、アラガル伯爵の住んでいる場所から、所謂国王にあたる公爵が住む宮殿まで街の完璧な地図を僕は眺める。

 ファルザ公国は、街一つだけの領地で、所謂バチカン市国と同じだった。

 なので、この街の地図がファルザ公国の地図になっている。


 馬車の中で覚えようと試みたけど、酔ったので断念し、宿で暗記をしている。

 物覚えはいい方なので、数回読めば大体の位置は覚えたけど、覚えている事を確認するための復習が大事です。


 ゲートから密書のやりとりをするアクセサリー店、そこからの住宅地の道にアラガル伯爵邸までの地図は完璧に覚えた。あとは予期せぬ時のための、目印になる場所と位置関係を頭に叩き込む。


 密書の受け渡しをしていた商人さんは…最悪を想定しておかないとか。

 店も商人さんも手違いで何もなかった時は、何もせずに帰って来る予定だったけど、もう伯爵家族を亡命させた方がいいよね。

 どっちにしても亡命させるなら、早いほうがいいし僕なら国との戦争にもならないし…

 そうなるとマイジュさんは外さないとだな。


 マイジュさんがお風呂から戻って来たので、今決めたことを話す事にした。



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