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アーレイスシフター  作者: ケースヶ
1章:4月
2/11

1話:はじまりの1日(1)

 時は少し遡り──

04月01日

 アーレイスのパイロットとしての道を選択した子供達は、学生寮に部屋が手配される。基本は二人部屋で、一部例外で三人部屋もある。

 現在この部屋には、制服に着替え終えた二人が座って小型の端末を操作していた。

 この端末は携帯電話の発展系で、画面全体がボタンになっているものである。スマートフォンと呼ばれているタイプに似ているが、これは人体と繋げる機能を持っていることから、《コネクターフォン》、《コネクタ》と呼ばれる。

 人体からの信号を受け取る小型の受信機を人体に接続──あるいは、体内のどこかに埋め込むことで接続を可能にしている。コネクタに接続した際のメリットは、手で操作することなく脳波で端末を操作できる点、端末の画面を使用せずに、使用者の視点に表示ができる点である。神経を機械に繋げる仕組みにより、過去の人々が想像していた空中にキーボードを投影して操作する事も可能である。

 ──そんなハイテクな事が誰でも出来るような時代になったのだ。

「なあ、今日ってエイプリルフールらしいぜ」

 彼と相部屋の男子生徒──音山カズキがそう言った。彼は少し間を置いて、こう言い放った。

「さっきメールで、音山カズキは成績に問題があり一人部屋へ移ります、って来てたぞ」

「はぁっ!?マジで!?さっき見たときはそんなメール来てなかったぞ!?」

 カズキはメールアプリを起動し、急いで確認した。……が、そのようなメールは見つかるわけがない。

『私が送りましょうか?』 

 ……というメールが彼に届いたが、これ以上はカズキが精神的大ダメージを受けるので、嘘だと伝えることにした。

「お前、さっきエイプリルフールって言っただろ……」

「冗談にみえないヤツはやめろよ……」

 カズキはメールアプリを閉じて、先程まで扱っていたアプリ操作に戻った。

 そもそも、エイプリルフールとは4月1日を嘘の新年とする事から始まったものである。それが日本でもなぜか流行り、今でも1日だけ全力で冗談な事をやる企業が多い。

「……この戦いも冗談だったら良かったよな」

 先程まで慌てていたのは落ち着いたのか、カズキは真面目な話を切り出した。

「そうだな……」

 中学生活終了の時点で、所持しているVRアーレイスの所持ポイントに応じて選出される。そこでパイロットへの道を進むかは任意選択が可能。

 パイロットの道を選択した場合は、高校生活からアーレイスの技術を磨く専門学校への入学が許可される。そこでは学費がかからないといったメリットが非常に大きい。その為にアーレイスのパイロットを目指す子供も多いと聞く。

 ……だが、アーレイスに乗るということは、戦場に出ると言う事でもある。その事を考えない子も多いので問題視されているのだが、戦場の兵士が足りてない事もあるので政府はそういった市民の声を無視し続けている。

 高校生活1年目はアーレイスの操縦を主な内容とした訓練項目。ここでリタイアする者も少なくはない。ただし、アーレイス専門といっても学門が疎かではいけないので、一般教養科目も学習している。そして高校生活2年目。ここから命がけの戦いが始まる。

「よし、ほどよい時間だ。いくぜ!」

 そう言いながらカズキは端末を右ポケットに仕舞い、鞄を持ち上げながら立ち上がった。

 意気込みの良い発言だが、先程まで端末を操作していただけにすぎないので、格好良さが半減している。

「……ああ。行こうか」

 続けて彼は端末を右手に持ったまま、中身がほとんど空っぽの軽い鞄を左肩にに引っ掻けるようにして立ち上がった。

 ここから一年で何人が居なくなるのか。自分は一年間生きているのか。等と思うことは沢山あるが、今更気にしたところでもう遅いのは分かっている。

「イーリス……、壊したらごめんな」

 彼は端末に向かって謝罪をした。

『謝罪は不要です。貴方が簡単に負けてしまうように訓練していたとは思いませんので』

 冷たい口調である少女のような声の彼女は、端末にインストールされている人口知能ソフトウェアてある。分かりやすく説明するならば、彼の端末は意思を持っているのである。

『──高末コウヤさん、自信を持ってください』

「……ありがとな」

 彼──、高末コウヤは端末を右ポケットに仕舞いながらそう言った。

 2人は寮の部屋から出て、コウヤが扉のスイッチを押すと扉が横からスライドして閉まった。扉には自動ロックが搭載されており、ロックを外すためには彼らが持っている学生証のような個人カードが必要となっている。

(今日から始まる……)

 彼は少しだけ恐怖を感じていたが、それよりも化物への憎しみが上回っていた。

(ようやくここまで来れたんだ)

 自分の力で何が変わるかは分からないが、多くの化物を減らしたいと彼は願っていた。

 コウヤにとって、この戦いは復讐が主な目的であった。だが、その原因は6年ほど前に親友を化物に殺された事である為、その化物を撃破するという目的を達成する事は困難なものである事は明白だ。それでもコウヤはこの道を選んだ。

 彼の復讐が果たせなくとも、化物によって人々が殺され続けている事を止める事が出来ればそれで良いのかもしれない。

「ようやく、始められる……」

 ──彼にとっての戦いがようやく始まろうとしていた。 

1週間に1度は更新したかったのですが2日遅刻しました…。

本来はもう少し1話分を長く続けたかったのですが、待たせることになりかねなかったので区切りのいい部分でひとまず区切りました。


しばらく世界観説明とか色々続くので、本格的な本編というのは少し先になりそうです。

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