0話:プレリュード
01/19:世界観説明を追記。誤字も修正。
ソレの初遭遇は唐突であった。
巨大な化物が各国の軍隊が襲われる事件が起きた。それまで開発されていた戦車などの兵器は全く役に立たず、簡単に破壊され、人々が食べられるという事態であった。
人類は化物を〈ノール〉と呼ぶことにし、ノールに対抗するための手段を考えた。
まず安全地帯の確保であり、巨大な壁を建設して人類をノールから守ることにした。
次に対抗するための兵器を開発した。それが6mほどの人型の甲殻兵器〈アーレイス〉である。アーレイスは戦車よりも速く、強くあることをテーマに作成された。全国の開発者が協力して作成されたこともあり、今まで開発されていた兵器を全て過去のものにするほどの性能となった。
次にアーレイスの使用する武器。弾薬の消費を考慮され、濃縮された熱の弾を発射・放射するビーム兵器も開発されることとなった。
これらの兵器を用いてノールを撃退に成功した後、人類側はそれらの兵器を量産・改良していき、長年の間ノールと戦い続けた。
兵器の数は余裕で足りるようになったが、段々と足りなくなるものがあった。
それはアーレイスの──操縦者だった。
大きな射撃音と共に、灰色の虎のような姿の巨大な何かが15mほど横に吹っ飛んでいった。
『ノールC型沈黙、残り5体』
学生服の少年は薄緑色のアーレイスに乗って操縦していた。アーレイスの右手には銃型の武器が持たされており、右の背中には鞘に収まった巨大な太刀が装着されていた。
「自分だけで4体ぐらいやってるのに、他の方々は何やってんですかね」
『技量が低レベルなのでしょう』
冷たい発言をする少女の声の発生源は小型のノートパソコン。彼女は人間ではなくAIである。
「手厳しいコメントだな」
先程飛んでいったノールは牙と爪を持つことからクロー(claw)型──C型タイプと呼ばれている。
「……自分達のチームが強すぎるという事ってあるのか?」
『今年振り分けの中で優秀な方は貴方を含めて二人。及第点が二人。残りの三人は察して下さい』
「そんな事は無い訳か」
彼はAIと雑談をしながら生体センサー付きのレーダーに反応がある地点──、次のターゲットを目指していた。
彼の乗るアーレイスの足の裏にはローラーがあり、背部や脚部内蔵のブースターを利用することで、足を動かすことなく移動する事が出来る。無駄な操作が必要なく、いざという時に高速回避行動が出来る利点がある。ただし、あまりにも足場がデコボコだとローラーの移動は使用できない。
彼が居る場所は崩れた建物が目立つ荒れ地。ここはかつて人類が平和に過ごしていた場所で、現在は誰も住んでいないという事だ。
人類は巨大な壁を作ってほぼ安全な場所で過ごしているが、その壁は絶対的な安全を保証できないものである。アーレイスが大量生産され、兵器の数は十分に足りるようになったが、アーレイスを操縦するパイロットが不足していた。
そこで政府はある事を始める。VRゲームとしてアーレイスのゲームを無料で配信開始。オンライン対戦が可能で、自分だけのアーレイスが作れるゲームという事もあり、爆発的な人気が出た。
その中で優秀なプレイヤー──主に中学生までを対象とした者を集めて一年間訓練させ、実戦に出させる事にした。
この仕組みはパイロット不足を解消する事ができたと同時に、一部の人類は平和に生き続ける事が出来ている。が……、この仕組みに対して不満を持つ人も居るが、パイロットになった者達への保証も多く、このパイロットになるかの選択は任意なので、大きな社会問題として取り上げられてはいない。
『考え事ですか?』
「……まぁ、そんなとこかな」
付近にレーダー反応があるのは二つ。一つは味方のアーレイスであり、もう一方は敵であるノールだ。彼はブースターを吹かしてその場へ急行。目視で捉えたものは──
「ギガンテス……ッ!」
ギガンテスと呼ばれるアーレイスとほぼ同等の人型サイズのノールと──
『チームDのアーレイス、フェイルス中破を確認。……胴体破損のようですね』
──味方のパイロットが死亡したアーレイスだった。
アーレイスの操縦コックピットは胴体に内蔵してあるものが多い。胴体を潰されればパイロットは無事では済まないだろう。彼の機体も同様である。
「くそっ、まだ3日も経ってないだろ!」
『ノールにとっては無関係かと』
彼の機体を発見したギガンテスは、彼の機体へそのまま直進を開始。地を蹴って右の拳を振り上げて向かっていった。
「……胴体か」
彼は機体の右手を左肩に回し、背負っていた納刀された刀の柄を掴んだ。彼は攻撃範囲に入るまでその場で待機。ギガンテスが刀型武器の攻撃範囲に入った直後──
「抜刀──!」
次の瞬間には、刀型武器がギガンテスの右腕に食い込んでいた。
「かっ……、てぇッ!」
刀型武器を振った勢いを残したまま、刀型武器とノールの右腕の接触点を支点として遠心力を使い、彼の機体はノールの右後方へ移動した。背後を取ったところで策は何もないので、彼の機体はそのまま後方へと下がった。
「対人最強の抜刀撃がダメかよ……」
『世の中は甘くないようですね』
ある程度下がったところで彼は刀型武器を構え直し、ギガンテスの方を向いた。
「初陣でこれは運が無いなぁ……」
『では二戦目での対峙の良かったのですか?』
「出会う時点でやりたくねぇよ……」
ここは初陣で死者が出る当たり前の世界だ。小説やアニメなんかの全員生存ハッピーエンドなんかは存在しない。
『コウヤさん、私は貴方なら倒せると思っていますよ』
「……なら、期待に応えないとな」
──彼はパイロットとして戦場の道を選択した内の一人。これは、彼らの戦いの物語である。
構想10年。書き直し5回以上。
不定期更新SFロボアクションになります。
※R15の理由:戦いというジャンルの都合。
世界観説明を飽きさせない方法がこの書き方だった…。