仕事に戻ろう(定時勤務編・4か月目)
何が起きたのだろうか。
この2か月は目まぐるしいという言葉が当てはまるような、そんな日々でした。僕の記憶は、とても曖昧です。そもそも、何故曖昧だったのか?事の発端は前の月に終わる筈の仕事が終わらなかったから、だったと思います。原因は課長と顧客が契約締結後に仕様をバンバン追加していったから。いや、それ契約外だよね?と尋ねても「頑張れ。」仕事が既に遅延起こしてるし、どうしていいのか分からないと、相談しても「頑張れ。」いや、頑張れで頑張れないからね?頑張れって言葉だけで赤くなって3倍速になるとかないからね?と言っても何も助けは来ませんでした。
その間、上層部との話し合いがありました。とはいえ、これは雇用云々に関する話ではなく、定期的にある異動希望面談でした。
毎年、異動希望面談があり、正しく行われていれば入社年次と同じ回数が行われています。残念ながら、僕の部署では隔年でしか行われませんでしたが。
「これはどういうことかな?」
僕の異動希望を読んだのは事業部長でした。何故、部長を飛ばして事業部長が面談を行うのか不思議でしたが、面談中にその答えの一部を知りました。
「君、この内容は思考停止しているとしか捉えられないよ。」
僕の書いた内容は「異動希望無し・他のことに向いてると思えないし、今は忙しくて考える余裕がない。」でした。ちなみに、過去3年ほど同じ内容でしたが、「思考停止してるよ。」と返されたのは今回が初めてでした。
「あのね、これは自分のやりたいことを書く場なの。枠に囚われてない?もっと大きく考えていいんだよ。」
まるで小学生に「大志を抱け。」「創造の翼を羽ばたかせろ。」と諭しているようでした。ただ、僕には夢も希望もないので何も言えませんでしたが。その間に「君ならここじゃなくても大丈夫。」「何故、この職場に拘るんだ?」「もっと言えば、この会社じゃなくても通用すると私は考えているよ。」と言葉が重ねられましたが、結局僕は一言も発せませんでした。
「とりあえず土日によく考えて、月曜日に答えを聞かせてくれ。」
その日の面談はそれで終わりました。
僕は面談の後から、何がしたいのか、どうありたいのか等を考えました。自分の心にある奥底に何があるのか、僕は一体何者なのかという哲学めいたことまで考えました。その中で、僕は最近の変化に気づきました。復帰してから僕の視力が、異様に下がっていることです。僕はずっと小説や漫画を読んでいたい。それは仕事よりも僕の核にあるもの。無くなったら僕は、本当に孤独になる。だから僕は、キャリアより身体を優先すべきだという結論に達しました。
事業部長に「自分のキャリアよりも、自分の身体を優先したい」と話してから先は、まるで坂から転げ落ちているかのようでした。
同じ話を産業医から向けられ…ることはなく、相変わらずの世間話と自分の環境と体調について話し、同じ内容を心療内科医にも話しました。今回、心療内科がかなり混んでたこともあり、心療内科医は「で、そんなんじゃダメなの分かってるんでしょ。何しでかす気なの?」と転職の話にも触れてきました。そんな確定した話ではなく、ぼんやりと思っていることしか伝えられませんでしたが、「まあ、そうよね。いいんじゃない?」と返されました。
所詮、他人事。その判断が正しかろうが決定的な誤りだろうが、心療内科医には関係ありません。嫌な書き方をするなら、お金さえくれれば患者だけども、その縁が切れてしまえば関係ないからです。
翌週、僕が出社すると寒気がしました。背中を温めても、カイロを貼りまくっても寒気が取れず、火曜日には寒すぎて欠勤しました。
翌日、出勤すると事業部長に声をかけられました。「産業医が呼んでいるよ。」と。
産業医のところへ行くと、前回は触れられなかった転職の話について尋ねられました。僕は「転職したいのではなく、自分の身体が健康になれる為の選択をしたいんだ。」と返しましたが、事業部長も、産業医もあまり理解できていないようでした。
産業医との話し合いが終わって席に戻ると、今度は課長から聞かれました。「何を聞かれたんだ?」と。これはもう、事業部長との話し合いが何だったのかという感じです。会議室での話し合いならまだしも、自席だと周囲にも伝わってしまう。配慮も何もあったもんじゃないと感じました。
言いよどんだ僕に、課長は「まあ、体調不良はよくあるし。休む予兆とかあったら言ってくれよな。」と言って離れていきました。
その後も事業部長や課長と個々に話し合う機会がありましたが、その度に出るのは「勿体ない、若いのに。」「違う場所でも輝ける。」そんな言葉でした。
それらの言葉は、僕にとってとても大きな苦痛でした。
だって、言い換えれば「この会社から居なくなってくれ。」に捉えられるからです。
確かに、僕を抱えることは会社にとって大きなリスクです。いつまた長期で休むか分からない。仕事は遅い。全部が全部、中途半端。会社としてはアウトな基準に引っかかる要素であり、抱えるメリットが見いだせない。そんな僕は要らない、と言われているかのようです。
僕は、転職したいわけじゃない。仕事がしたいけど、ここではお荷物になっている。消えたい。
入社してからしばらくして無くなった筈の感情が揺れました。「消えたい」という感情が僕を奈落の底に突き落としました。空が灰色に見えるなんてもんじゃなく、世の中のすべての人やモノが敵に見えます。
僕は、どうすべきなんだろうか。