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休みについてのあれこれ(リワーク見学へ行こう)

 さて、リワーク見学へ行く場合、何が必要になるでしょうか?


 簡単に言えば予約です。あと、心療内科医といいますか、リワーク見学を推奨してくる医師の診断書です。

 現在はインターネットが普及していることもあり、医師が知り合いの伝手の伝手の伝手を辿って…ということより、患者の近所や長期間通いやすい場所でリワークを行っている医院を探すことが多いと思います。そして医師と相談しながら通う医院を探す場合、十中八九「あ、今予約取っちゃおうか。」という話になるんじゃないかなと僕は思います。(僕の場合、主治医も心療内科医もそんな感じなので。)

 予約の場合、「予約したい。」というと、普通の診療予約と同じく、“いつ”“何時に”するかを聞かれる、のではなく日時指定をされます。“いつ”“何時に”するか聞かれる場合、恐らく現在進んでいるクラスの見学ではなく、相談を重視するのではないでしょうか。というのも、僕が見学した病院は『日時指定』をするタイプで、クラス見学や施設説明がありました。実際に行っている人を見るというのは、体感できるという意味でも有効です。更に言えば、同じ空気を吸えば直感が働きます。


「…なんか、妙に嫌な気分になる場所だな、ここ。」


 僕が予約をした場所は、自宅から少し離れているけれど設備の整った病院でした。送迎バスは出ているものの、自転車や徒歩で来れない範囲ではないので、その日はグーグル先生を駆使して病院まで行きました。


 はっきり言って、第一印象が最悪でした。病院が古い、とかではなく、あ、ここなんか悪いのが出そうだな、と霊感をゼロ感と書くレベルの僕でさえ感じる場所でした。

 その日は快晴で突き抜ける程の青空だというのに、病院は全体的に湿っぽく、暗い。そして何やら黒っぽかったのです。外壁は明るい色で着色されていたというのに。

 中へ入るともっと暗かったです。節電の影響か、館内の3分の2の電灯が消えていたように思います。

 僕は身体メンテナンスや怪我をよくするので、それなりに病院を歩き回るのですが、素でホラー映画が出来そうな病院は久々でした。古い館内であったり、すごく痛い注射(液体窒素)を持って迫ってくる医師なら慣れている筈なのに。和製じっとりホラーな場所を苦手としていたので、外装を見て既に帰りたくなりましたが、見学しないと復職できないのでグッと堪えて入館しました。


「受付終わりましたけど。」


 睨むように僕に言い放つ、受付の人。えっと、病院ですよね?と聞きたくなりましたが、反応せずに用件を述べました。


「あ、リワーク見学を予約した○○と申します。受け付けはどこですか?」


 頭上にデカデカと「受付」という表示がありましたが、敢えて聞きました。会社で大人って怖いと思った手段を使うのもどうかと思いましたが、ここは病院。組織が違えば常識も違う、ということで無視しました。


「リワークの受け付けは後ろです。そこで待ってください。」


 真後ろにあった簡易カウンターを指されました。電話(内線やPHS)も無ければ誰も居ません。というか、すごい素っ気なく返されました。この病院は旧体質のままなのかな?


 5分後、看護師服にエプロンを着た方が来ました。その方によれば、これが通常運転だそうです。いや、特別扱いでも困りますけど。境界を跨ぐと変わるのは役所だけじゃないんだなあなどと暢気に構えていたら、到着しました。そう、リワーククラスに。


 インターネットに挙げられていた画像と異なり、全体的に黄ばんだ空間。まだ日中なのに暗い室内。新参者に向けられる鋭い視線。一目見ただけで、「あ、これアカンやつ。」と悟るような雰囲気。僕の本能が、「ここは危険」と全力で訴えてきました。


「今はホームルーム前の自由時間です。今日の日誌を書かれたり、宿題をされたり、思い思いのことをしています。」


 僕の体調が一瞬で悪くなったのを察することなく、ニコニコと説明が続けられました。自由時間は何回あるのか、ホームルームでは何をするか、リワークではどのような手助けをしているか。突如、笑い声が起きたのでそちらの説明も…。僕の一番の不調原因は、そのグループでしたが、本当に気づかないようで、リワークに来れば友達ができるみたいなことをすごく言われました。

 友達が欲しい訳ではないし、そもそもそのグループの中には入りたくない。というか、絶対関わると精神的に死にかねないと感じたんです。

 何故ならそう、彼らは似非一軍のように感じたから。


 なろう小説を幾話か読まれる方はご存知でしょう。一軍の位置に居て、我こそは正義という思い込みと非常に不要なお節介ともいうべき考え方の押し付けを行う人間を。そして間違った道を爆走し、結果、主人公と対立するという話の数々を。僕もなろう小説のファンで、書籍化されているシリーズはそれなりに読んでいるつもりです。

 読みながら、僕はこの「我こそは正義!」という名目で要らないお節介をする人間を“似非一軍”と呼んでいます。まあ、実際に「貴方は神か!」と感じる、本物の一軍は考えを押し付けませんし、程よい助力をしてくれます。

 話は逸れましたが、この“似非一軍”は常に「自分の考えは正しい。相手が間違っている。」で論破しようとしてくるので、厄介です。考え方を変えもしませんし、こちらの話は聞きません。というよりも、彼らの辞書に「聞く」という言葉は欠落していますので、時間と労力の無駄です。折れたと思うまで論破しようとするので、非常に疲れるし、言いたいことを総て引っ込めないといけないので精神にも悪い。

 学生時代にバイトや日常生活で嫌になるほど経験したからこそ、僕は似非一軍のいる環境には居たくないのです。


 リワークは決まった曜日の決まった時間、その場所にいる人と強制的に関わりを持ちます。作業は個人作業だけでなく、グループ作業もあります。孤立していると、強制的にスタッフから干渉されます。

 お金払ってまで、それはない。通いたくないな、と考えていたところに、スタッフさんから声がかかりました。


「詳細説明がありますので、こちらへどうぞ。」


 相談室と書かれた小部屋にて、具体的な説明がありました。おおよそ、僕が今まで書いてきた内容を説明されました。知らなかったことと言えば。


「え?1日4千円もかかるんですか!」


 リワークは1日あたり4千円。バスの送迎、作業の提供、昼食等が出ることを考えれば妥当です。これにスタッフの人件費、病院の光熱費諸々が入っていることを考えると安いのかもしれません。


「あ、でも大丈夫ですよ?」


 県によっては、申請をするとリワークの補助金が出ます。それによって10分の1くらいにはなります。詳しいことは各自治体で違うそうなので一概に言えませんが、僕の場合は適用可能とのことで、なんなら申請書も作って出しておきましょうか?と尋ねられました。


「いえ、それは大丈夫です。ありがとうございました。」


 一通りの説明が終わったと感じたので、お礼を言って出ようとしましたが。


「あ、すいません。ここ鍵が無いと出れないんで。」


 その仕組み、知ってます。僕の祖父母の介護施設も、出入り口にカギ付きのドアがあり、逃亡できないようにされていました。今回は随分がっしりとした扉でしたが。


「では、ご検討をお願いいたします。」


 出口まで見送っていただいた後、僕は心に決めました。


「ここには絶対に来ない。」と。






「あ、いいんじゃない?合う合わないがあるだろうし。」


 行かない旨を、翌日の診察で心療内科医に告げたところ、あっさりと返されました。もっと、なんというかこう、文句紛いな訴えを聞くんだろうと思っていたのに意外でした。

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