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夢現~僕達は忘れられない  作者: 島忠(シマチュウ)
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第一章2 『冬休み終了――』


        ◆


 瞼を開けると、膝が伸びた両手が上にあった。太陽の光が目にあたり、眩しさから手で覆う。

どこからか落ちる夢、最初の感想がそうだった。両手を上にあるのは恐怖から無意識にやっていた行為だ。


 安堵をしたがそれはすぐにかき消される。今の体制は仰向けで目の近くにはデジタル時計があった。


「……あれ?」


 第一声が自分でも驚くほど、声が上ずっていた。

 自分は布団の中にいたのだ。ついさっきまで、電車の中にいたはずなのに……。


 布団を掻き分けて起き上がると、見覚えがある机がある。その上には、お世辞にも可愛いとは言えないピンク色の豚の貯金箱があった。


 鏡で自分の全身の姿を再確認するとまた素っ頓狂な声を上げそうになる。体は縮み、幼少の頃から気にいっていたパジャマを穿いている。だがパジャマや、豚の貯金箱もどちらも月日が立ち、とっくの昔に捨てたはずの物だった。


 鏡で全身の姿を見ると自分はそれほど背が大きくないけどそれでもこれの異質は伝わる、予想とも思える言葉をぼやく。


「夢……?」


 電車の中から一辺、布団の中にくるまっていて、とっくの昔に捨てた物が目の前にある。自分で思っていて混乱する。


「起きた? 今日行ける?」


 一階から昔から聞いた馴染みある声が聞こえた。

母親の――荒船 幸子(あらふね さちこ)が声を掛けてきた。俺はその声に急いでクローゼットから適当に服を出し着る。

 服の思い出に浸る間もなく急ぎ足で一階に降りて母親に質問する。


「行けるって?」


 母親は少し呆れた顔をして、答える。


「学校よ……。昨日行けるかもって言わなかったっけ?」


「ああ、そうだったね」:と適当に相槌を打ちながら誤魔化す。カレンダーに目をやると、一月と書いてある。


自分の質問に疑問視してきたのか母親は家事を止めて見てきた、俺は言う。


「なに?」


「何でもないわ」言い終わると、母さんは安心したような顔で家事に戻った。

 ランドセルの場所など聞くと、持ってきてくれた。


「ランドセル、教科書、ハンカチ、テイッシュ、筆箱、あ、上履きはこの袋の中に入っているから」


 異常なまでの過保護に俺は飽き飽きしていたがそんな母親の行動が分かる理由が次の質問で分かった。


「……僕って何年生?」


 変な質問と自覚しながら言う、もうちょいマシな聞き方があるはずだって思う。


「小学五年生よ」


 笑いもせず、呆れず、小馬鹿にもせず真剣に答える母さんに違和感を覚える。『小学五年生』と言う単語で思い出す。

 椅子に座り、机の上にある朝食を頬張りながら考える。


 ああ、俺は不登校だったな。そうだそうだ、小学五年生から行ったな。そう思いを馳せる、そうすると記憶次々と出てくる。

 思い出せるだけの記憶と今知っている情報を混ぜての予測だが、俺は冬休みの終わりの一日前に戻った。母さんが安心したのは朝、駄々をこねて行かないって言う事が無くなり安心しため、且つ、今まで不 登校だった俺に行けるかの確認か……。なるほど。

 

 一人違うかもしれない事を確かめるすべは無い。だから現状を勝手に納得して、違う事を考える。

一週目の今日と言う日まで休みだった俺が言うのは何だが……。

( 冬休みが終わる一日前ってそんなギリギリじゃなくてもっと前にしてくれよ)

 

 無神論者だが、こんな不可解な事は神かなんかしか出来ないと思っていた。それか夢か、そう思いをふけながら朝ご飯を食べ終えると六年間ある学校生活で三年間とちょっと使っていないランドセルを背負うと馴染んだような背中の滑らかな感覚が伝わる。


( 懐かしいな、また背負う日が来るとは……)


 玄関に向かう足取りは重い「行ってきます」、の一言も言えないまま家を出る。学校までの道のりは足と記憶がはっきりと覚えていた。


 九年でここら辺も変わった。昔に戻ると言うのは無くなったものがまた形として見れるそれは貴重な体験だった。

  学校までの道のりの昔の風景を楽しみながら、気をまぎわらすがお一向には足取りは重い。


 学校と言うのは義務教育で、その義務に反する行為が休む事だった。

 四年にわたる不登校の初めは気楽だった、「一日行かなくてもいいや」で始まったのだから。

 その一日が二日、三日と続くと次は、次の日行ったら何か言われるのではないかっと言う不安が襲った。

 

 そして一週間、二週間、もうこうなると行くタイミングを失う。


 この負のルートに乗ると負の連鎖は止まらない、行かなくなれば後になればなるほど行きづらくなる。速く行けばよかった……。っと後悔をする。

 この体験は後悔をする所までが一セットなのだ。


 片道切符の人生で俺は戻ってきた。まるで見切り発車に置いていかれ反対の電車に急いで乗ってしまった人間がそしてまた電車に乗る、だが乗っても自分自身で別のルートに開拓を出来る。


 いや、するんだ――。


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