第一章1 『夢心地』
雪が路線に薄く降り積もる駅のホームで、彼はベンチに腰を掛けていた。時間帯は、深夜を回ろうとしていた。そんな彼の元に電車が時刻表通りにやってくる。
電車に乗り、人が少ない所を意識的に座り、不意に反対側の窓に自分の顔が映る。自分の顔が好きと言うナルシストでは無い、嫌いな方だから目を逸らす。
電車はホームとは違い暖房がある、外の冷気が入ってくる電車の扉が閉まるのと同時に睡魔が襲う。
彼――荒船 晃は襲い掛かる睡魔に身を任せた――。
夢現――夢か現実かはっきりしない状態。瞼を開けると、暗い場所にいた。数メートル先の前見えない。
何かを考える前に、突然横から体全体に激痛が走った。
その後、動けない脱力感が体を襲う。一番感じられるのは心臓の鼓動だ。鼓動の音で自分が生きているっと実感できる。体は横向きに倒れた状態だ。
突然、今まであったら地面が無くなり、体全体が抜け落ちる体験をする。
言うならば空から落ちると言う体験それも頭から。その瞬間、動かなかったはずの腕は怖さから無意識に手振りをする。
落ちている時間は正確には分からない、数秒かも知れない。そんな恐怖の中張りつめた糸はポツリと切れた――