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六夜

 さて、泥のようになって寝たので活動を再開する事にしよう。


 生意気にも短期の仕事のくせに面接はあるので、とりあえず履歴書を書いてみた。


 いっつも思うのだが履歴書ってめんどくさいね。毎回、曖昧な記憶をたどって職歴を書かなくちゃいけないのに嘘の履歴は書くなと書いてある。転職を繰り返してる人間にそんな事言ったって、どだい無理な話だぜ。


 履歴書は運良く残っていたが、写真がない。う〜ん困った。電車代や食費の事を考えると写真代なんてどうやっても捻出できない。


 いやあ〜これはどうしたものか・・・・・・仕方ない。マックに提出した履歴書を返してもらおう。死ぬほど恥ずかしいがそんな事言ってられないよ。


 アポなしで取りにいくのは気恥ずかしいので、まず電話で聞いてみた。するとすんなり返すと言ってきた。だが、ちょっと困った事に郵送するというのだ。電話の相手が忙しそうに話すので俺もごねる事ができずに渋々了承したが面接は明日なんだよなあ。


 なぜに郵送?直接取りにこさせた方が金もかからないし早いじゃねえか、取りにいくから切手代くれよ。う〜やっぱり直接のりこんだ方が良かったな。そしたら向こうだって早く追い払いたいから、さっさと履歴書返してくれたかもしれないし・・・・・・。


 おっ!ちょっとひらめいた。


 だいぶ前に履歴書用の四分割写真を撮ったらフロッピーディスクが一緒に付いてきて、中に四分割写真の画像が保存されてたんだよな。だからそれ以降はそのフロッピーを写真屋に持って行って焼き増しさせて使ってたんだが、あの機械、普及するどころかなくなっちゃった。合掌。


 まあ要はその応用で、携帯で自分の写真を撮る→ミニSDカードに保存する→写真屋に持って行って現像してもらう。これだ!これしかない!


 早速、携帯のカメラで自分の顔を撮ってみる。「カシャーン!」うわ、シャッター音でけえ、うるさい。どれどれ、うへっ、気持ち悪い。なんか斜めになってるし、ブレてるし、暗いし、背景がモロ部屋の中だし、どうしようもねえ。


 「カシャーン!」「カシャーン!」「カシャーン!」


 背景は丸めてあったポスターを裏にして白背景を作った。手ブレも押さえた。一応、形にはなったのだが・・・・・・やめておこう。


 こんな下手くそな写真を貼るなんていくら鉄面皮な俺でも耐えられん。やめだやめだ。とりあえず写真は忘れてしまったという事にしておこう。


 次の日、面接会場である高層ビルの立派な事に驚いた。ええ〜俺みたいなのが出入りしていいのか?警備員も立ってるし、挙動不審な俺は警備員の目を盗むように面接会場に向かう。別にそんなコソコソする必要はないのだが習性ってやつだろうか?


 会場にたどり着きひと安心。なんだ、結構いるじゃねえか俺みたいな貧乏人ファッションの皆様が。おまえらよく来たな。ここまで来るのは大変だったろう。俺もおまえらと同じ貧乏人だ、よろしくな。と、心の中で声をかけ、席に着く。


 ひゃっほー!面接官はスーツ姿の綺麗なお姉さん。こんなお姉さんが面接官なら話がはずむ。はずまない訳がない。


 一通り説明し終えて「何か質問はないですか?」とお姉さんが聞くので「スリーサイズは?」と危うく言いかけたが引っ込めた。


 かわりに写真を貼ってない言い訳をしたら「分かりました。」と奥から何か取り出してきた。デジカメだ。それで記念写真感覚でパチリ、と一枚。んで終わり。ああああ〜あんなに苦しい思いをしたのになんだったんだ。焦燥感と劣等感を抱き、俺は会場を後にした。


 合否は即決もちろん採用。というか人数が足りていないとの事。そんなに人気ないのか?この仕事。一抹の不安をかかえながら家路に着く。


 即決で良かった。後で携帯に連絡なんて言われたら止められてるから返答に困ってしまうものな。


 会場には十数人しかいなかったが男は俺ただ一人。あの中には可愛い娘はいなかった。むしろ「女、捨ててます。」といった人ばかり。だが、婦女子パラダイスには違いない。嫌が応にも俺の期待はふくらむ。


 うおおおおお〜唐突だが煙草が切れた。悩む、悩むぜ!今の俺にとって300円は大金。しかも煙草なんて「百害あって一利なし」のしろもの。だが吸いたい、吸いたくてしょうがない。


 う〜ん。とりあえずシケモクでも吸っておくか。根元まで吸う習慣がなくて良かったぜ。


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