五夜
いやいや、ようやく帰ってこれたよ。住む家があるっていいね。安堵感が中と外とじゃまるで違うよ。
え〜と、鍵はどこかな?あったあった。やっぱり放り投げてあったぜ。食い物の事で頭がいっぱいだったからな。今回はしょうがない。
むにゃむにゃ・・・・・・さすがにまる一日寝てないと眠い、眠くて眠くてしょうがない。しかし、今寝てしまう訳にはいかない。なんといっても日払い2万がかかっているのだ。重い体をひきずって公衆電話へ向かう。募集終わってなければいいなあ・・・・・・。
ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。 ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。
良し!話し中だ。という事はまだ募集してるってことだろ、ようし!石にかじりついてでも、もとい公衆電話にかじりついてでもこの仕事はゲットしてやるぜ!俺は並々ならぬ気迫でプッシュボタンを押し続けた。
ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。 ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。
ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン! ピッポッパッ・・・ツーツーガガチャン!!!
おいおい、いつになったら繋がるんだよ?もうかれこれ2時間近く公衆電話にへばりついているんだが・・・・・・うわ、腕があがらなくなってきたし、頭ももうろうとしてきた。少し休憩にしよう。
昨夜から飲み続けている99コーラ1リットル入りを飲みながら考えた。別の公衆電話にしようか?大の大人が長時間公衆電話にへばりついて、女子高生じゃあるまいしみっともないぜ。と、いう事で、アパートからだいぶ離れた場所にある公衆電話に移動した。
ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。 ピッポッパッ・・・ツーツーガチャン。
相も変わらず繋がる気配がない。うう〜疲れたよ。たのむから生活に困ってない奴は俺に仕事をゆずってくれい。老体にムチ打って電話をかけ続ける事、約1時間。
ルロロロロ・・・・・・
おお!やった!ようやく繋がった!感動ものである。もうろうとしていた頭がいっきに覚醒した。
「お電話ありがとうございます。こちらは・・・・・・。」
あれ・・・・・・?様子がおかしい・・・・・・テープだ・・・・・・な、何!募集は締め切っただと!ふざけるなよ、昨日から続く俺の苦労がむくわれないじゃないか。どうしてくれるんだ!責任者出せ!
などと怒ってみてもしょうがない。電話が繋がった感動から一転、失意のどん底につき落とされた俺は気分を変える為にも他の会社に電話してみた。
あまり期待はできないと思ったコールセンターの会社にかけてみたら、なんと男性でも初心者でも大歓迎だそうだ。うおおおおーー!やったぜ!捨てる神あれば拾う神ありだ。
それによくよく考えてみるとこっちの方が金になる。時間は短かったり極端に長かったりするが全部で五日間働いて5万弱の稼ぎだ。ただし俺にこの仕事が務まるのかどうかが疑問?コールセンターって女子の仕事ってイメージあるもんな。んん?女子の仕事かあ〜。ひょっとして婦女子パラダイスでハーレム状態なんじゃないの?モテすぎて俺の取り合いになっちゃったりして・・・・・・。
うっしっし・・・・・・。良からぬ妄想を胸に描き、今度こそ意気揚々と家路に着く。あっ99コーラ忘れてきちゃった。まあいいか、とっくに炭酸ぬけてるし、ぬるぬるでゲロマズだったもんな。




