第6話 ヒュースの街と3人姉弟
春になったと思いきや雨が...
まだ二十代なのに腰が痛いです。
(8月22日修正)
物静かな朝の森に鳥の鳴き声、爽やかな風が吹いていた。いつもの朝に起きるタイミングで僕は眠りから覚めた。
「ふぁあ~...ここは...」
見慣れない景色...何で?あ、そうか。僕、異世界にいるんだった。今までのは夢じゃなかったんだ...
「おう、もう起きたか?良く寝れたか?」
最後の見張りをしていたオールさんが声をかける
「はい、おかげさまで」
「随分と起きるのが早いんだな」
「いつも僕が先に起きては二人を起こしていますから習慣になってしまって」
「ははっ、それは完全に母親だな」
「長い間そう生活しているので慣れました」
「そうか...こうゆう事を聞くのは失礼かもしれないが、君達の親は大丈夫なのか?息子娘が旅に出てるのに...」
「あ、大丈夫です。両親は数年前に事故で...」
「すまない、余計なことを聞いたな」
「いえいえ、僕達姉弟がお互いの支えです」
「みたいだな。昨日の料理を作る時の行動は素晴らしかった」
「家ではこんな感じだったので」
「そうか...そろそろ皆を起こさなきゃな」
「そうですね」
オールさんはパーティーの方々を起こしに、僕は隣で寝ている二人と一匹を起こした。
「お姉、お兄、シャール、起きて出発するよ」
「お前等、起きろ。街に向かうぞ」
のそりのそりと皆は徐々に目を覚ます。二人は珍しく一発で起きた。お姉はまだ寝ぼけているのか意識が曖昧だ。シャールは毛づくろいをしていた。
「ふぁ~...おはよう、モンモン」
「おはよう、早く準備して出発するよ」
「うん、じゃあ服を着替えて...あれ、何で制服?まぁいいや」
するとお姉は服を脱ごうとしていた。
「「ちょっとたんま!!」」
二人がかりでお姉を止めた。あまりの勢いにお姉もびっくりして目を覚ました。お姉が周りを見回すと、周りの人達の動きが止まっていた。
「「「「「...」」」」」
「ヨシミたんの...ハア、ハア」
何かやばいのが混じっている。アイナさんが獣のような眼差しでお姉を見ている。お姉の顔を覗いて見ると、顔が真っ赤になっていた。
あ、危険信号だ。シャールも察したのか僕の影に潜り込んだ。
「...燃やす」
お姉が僕達に手を向けたと思えば、昨日の戦闘より高い魔力がお姉から感じ取れた。
「お姉、ちょっと待って!落ち着いて!」
「燃やせば何も残らない...」
「お姉、俺達の恩人だぞ!みんな忘れるから、な!」
お兄が皆の方を向きながら同意するように目で合図した。
「ああ!俺達は何も見ていない」
「そうとも、何かあったけなぁ?」
「(ブルブルッ!)」
「惜しかっ、モゴッ!」
「...何も見なかった」
「そうそう、早く移動しましょう!」
アイナさんが今危ない事を言い出そうとしていた時にフェルさんが間一髪で口を塞ぎ、ローさんが話題を変えた。
「...そう、だね...( 覚えてたら消す)早く行こうね!」
サラッと怖いことを言った。誰もが聞こえていたが聞かぬふりをした。逆らえば軽く数回死ねる気がした。
「よ、よし、準備が出来たなら出発だ」
僕等はまた森の中を歩く。みんな少し気まずい空気だったが、さっきのことは記憶の奥底にしまった。何も無かった様に話し続けた。
また色んな事を教えてもらった。この世界の日数は元の世界と変わらなかった。 24時間で一日、三十日で一ヶ月、十二ヶ月で一年だった。四季も存在する。今は夏の始まる頃だ。そして街や王都は朝8時と夜の8時に鐘が鳴り、門を開けたり閉めたりするらしい。魔物の活動時間が夜なのが多いみたいだ。無闇に門を開けっ放しにすると魔物がしかねないみたいだ。
しばらく歩いていくと長い森の迷路の終わりが見えた。森を抜けると遠くに防壁が見えた。
「あれがヒュースの街だ」
「「「おお~!」」」
近づけば近づくほど街の防壁が高く見えてくる。元の世界で稀に見られる防壁がここでは常に見られるなんて、あまりの威圧感が凄すぎて僕達は感歎しか出なかった。戦争や魔物の襲撃がいつ起きてもおかしくない世界だ、そうしないと生きて行けない。
「何している?早く並ぶぞ」
立ち止まっていた僕等をダンさんが呼び戻す。僕等は門の前で列に並んでいる彼等の後ろに並んだ。前を見るとそんなに人がいなかったのですぐに僕等の番になりそうだ。
しばらく雑談をしながら待っていたら僕等の番になった。
「身分を証明する物を持っているか?」
門番の兵士が質問で気付いた事がある。僕達姉弟、身分を証明する物なんて何も持っていない。どうしよう?
「この姉弟達は俺達の連れだ。依頼の途中で出会ったんだが、何も害は無い。通してもらっていいか?」
オールさんが僕達の保護者(?)になってくれるみたいだ。
「オール殿の連れですか?う~ん...検査をしないといけないんですが、いいでしょう。でも、通行料はもらいます。一人につき5銀貨、三人合わせて15銀貨です」
「あ、お金なら持っています」
僕はアイテムボックスから金貨1枚を出した。周りの人が少し驚いた。金貨が大金だったのか、僕達がそこまで持っているとは思っていなかったんだろう。
「お返しの85銀貨を持ってくるので少々お待ちを」
その兵士は他の兵士にお金を持ってくるように指示をした。少し待つとさっきの兵士が銀貨が入っている皮袋を持って来た。
「85銀貨です、ご確認ください」
僕は皮袋をアイテムボックスにしまった。ちゃんと9金貨85銀貨と表示されている。
「はい、確認しました」
「では、通っていいですよ」
やっと門を潜る事が出来た。その先の街の景色は西洋の中世期みたいな家が並ぶ景色だった。人々も様々だった。商品を売っている商人、子供達は駆け回り、屋台で食べ物を売っている人達、色んな職業の冒険者達が歩きまわっていた。確実に別の世界だと思った。
周りをキョロキョロ見回している僕等を暖かく見守るゴルファドの方々。少し恥ずかしいな。
「なぁ、ちなみに俺等にいくら払うつもりだったんだ?」
オールさんが僕達に気になっていた事を聞いた。
「え、金貨しか無かったから2~3枚払うつもりでした」
「...ちょっと待て、金貨の価値とか知らないのか?」
「ええ、金貨10枚渡されただけだったので正確には知りません」
「...はぁ、宿泊所へ着くまで全部教えるから」
オールさんが金貨の価値や通貨の説明をしてくれた。
簡単に予約すると通貨は大体すべての国で使えるとの事。ドワーフの国、ドワキニスの鍛冶屋職人が作った。商人が各国に移動するため、通貨を使い分けるのに苦労したみたいだ。だから通貨を統一したみたいだ。
単位も教えてもらった。銅貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨と五種類ある。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚、白金貨100枚でミスリル貨1枚とある。円で例えると銅貨1枚が10円だとしたら銀貨1枚が1000円、金貨1枚が10万円、白金貨1枚が1000万円、ミスリル貨1枚で10億円に相当する。僕が金貨1枚を何も惜しまず出したから驚いたみたいだ。
「何かすみません」
「知らなかったんだし、良いって事さ。着いたぞ、ここがヒュースで有名な宿屋、ギルガルドだ」
僕達は結構大きい宿屋に着いた。看板にギルガルドと書いてあった。異世界の文字で書いてあったはずなのに読めると言う事は神様が色々施してくれたのだろう。中に入ると昼間からエールを飲んでいる人や食事をしている人、注文の品を配っている従業員もいた。僕達はまっすぐに宿屋の主人の所へ向かった。
「ギルガルドさん、こんにちは」
「オール殿、お帰りなさい」
このギルガルドの主人は筋肉マッチョでダンディーな外見だった。戦士かと思った。
「随分早かったんですね。これからギルドへ向かうのですか?」
「ああ、でもその前にこの姉弟達に部屋を貸してやってくれ」
「オールさんの紹介なら値引きさせていただきます」
「助かる。君達、ヒュースに長く居るのか?」
「えっと...どうする?」
僕はお姉とお兄に聞いてみた。
「長く居たほうが良いんじゃない?」
「色々馴染まないといけないしな。一ヶ月ならどうだ?」
「一ヶ月、か。いくら掛かりますか?」
「三人部屋で一泊1銀貨5銅貨、一ヶ月だと45銀貨の所をまけて40銀貨です」
「う~ん...うん、じゃあそれでお願いします」
僕はアイテムボックスから銀貨40枚を取り出した。
「はい、銀貨40枚確認しました。ご案内致します」
僕達は主人のギルガルドさんの後に続き、部屋に向かった。階段を上がって2階にある奥の部屋だった。ギルガルドさんは鍵で部屋を開けてその鍵を僕に渡した。
「こちらがこの部屋の鍵となります。自分達で持ってても、私に預けるかどちらでも構いません」
「ありがとうございます」
「食事は別途なので好きな時に下の食堂でご利用ください」
「では、何かあれば声をかけてください」
そう言ったギルガルドさんは下へ降りていった。部屋のドアを開けると、中には三つのベッドが並んであった。窓もあり、部屋の中から街を見渡せる事もできいい部屋だな。
「さて、宿も買う事も出来たしギルドへ向かうか?君達のギルドカードを作らないといけないし」
「「「はい!」」」
何処に向かうか考えた時、オールさんの提案で僕等はギルドへ向かった。
僕達姉弟は期待と不安もあったが無事に街に着いた。今から冒険者になれる第一歩を踏み出すんだ。
いよいよギルドか、冒険者になるんだ...ワクワクする。
新キャラや通貨の計算も色々あって難しい面もありますね。
善美タンのグハッ...(忘れて)
橘3人姉弟の所持金9金貨45銀貨です。
(宿の金額修正:4金貨→40銀貨)