第37話 注意人物と3人姉弟
日本に帰国するのに準備が必要でおくれてしまいました。これから日本にいる予定です。頑張ります。
多くの人達に拍手で迎えられながらメロールちゃんは少し恥ずかしながら階段を降りて来た。貴族の人達がメロールちゃんの側に寄って祝いの言葉をかける。それを丁寧にお辞儀をしながら挨拶を返す姿はまさにご令嬢ってかんじだ。でも昨日の事もあるからまだ安心できないし注意しないと。今の所、一番怪しいのはさっきのデブ貴族だ。周りを見ても表情が険しいのはあのデブだけ。お兄は黒だと思っているみたいだけど物証がないから迂闊に動けないから何も出来ない。見当違いって可能性もあるからなおさらだ。お姉にも話したけど関わらないで状況を見るべきだと言ったから大人しくしてよう。一応ミュールさんの所へ行ってこの事を伝えなければ。
「ミュール様、少し宜しいでしょうか?」
事前に貴族達の前では‘さん’ではなく‘様’を付けて話しかけるようにと話していたから違和感は無い。出来るだけ言葉を選んで話すのも忘れてない。
「どうしたかな?」
「あちらのテーブルの前に立っている方はどなたですか?」
「ああ、あの方は王都のデモール・オールク侯爵の息子、デズール・オールク公だ。近い内に後継する予定らしい。あの方がどうかしたかな?」
「昨夜の主人かもしれません」
小声で知らない人には分かりにくくしながら伝えた。ミュールさんは少し険しい顔をした。
「分かった、注意しよう。本音を言うとあの方を招待する予定では無かったのだが権力と圧力で招待しろと文通で脅していたから招待した。娘達に目を付けている可能性が高い。そばにいてくれないかな?」
最悪に腐っている貴族だな。しかもロリコンの可能性が出てきた。これは流石に離れられない。それから僕達はメロールちゃんとメリーちゃんの話し相手をしながら警戒していた。正直言って関わりたく無い思いだったけど、事は上手く流れない物だ。向こうからこちらに近づいて来た。妙に笑顔を作りながら。
「うわぁ、こっちに来ちゃったよ」
「ぶっ飛ばすか?」
「絶対ダメ!お兄、手を出さないで」
小声で話している間にもう目の前にデブが立っていた。
「この度招待して頂き感謝する、ヒュース伯爵殿」
「いえいえ、わざわざ遠くからお越しいただき誠に有難うございます」
「パーティーも思ったより素晴らしく整っていますな」
「貴方のような方が満足出来るよう努力したまでです」
嘘ばっかの会話は外から見るとなんとも無いが、事情を聴いてしまうと醜く見えるよ。心にも無い言葉で相手の機嫌をとるのは日常茶番だな。
「ところ、でその者達はどこの家系だ?」
こっちに目を付けられたよ。どう説明するか考えていたらお姉が前に出た。
「お初にお目にかかります。橘家長女、喜美と申します。私達は遠い所から旅をしていまして縁あって領主様から招待されました。以後、お見知り置きを」
「タチバナ?聞いたことない家系だな。雰囲気からするにサクラ共和国の者か?」
「はい、そこから離れた田舎の方から来ました」
お姉が絶妙に嘘と真実を混ぜながら説明した。流石、元生徒会長様だ。これなら深く怪しまれないし、調べる術がない。それにサクラ共和国て言う場所の情報ゲットだ。感覚的に日本に近い雰囲気の国みたいだ。後で用事があれば行ってみたいな。
「おっと、吾輩の名はデズール・オールク、王都の貴族である。もし王都に尋ねる時が来たら吾輩の家に来ると良い。それなりの待遇をしてやってもいいぞ」
そういいながらお姉の手の甲にキスをした。一瞬、このデブをブッ殺す気持ちが溢れたけど堪えた。お兄は拳から血が垂れていた。ロリコン確定。目が獲物を見つけた猛獣の様な顔だった。でも相手は貴族、ぶっ飛ばせない。僕達はともかく、当事者のお姉はなんともないのかな?
お姉が近くのテーブルにあったナプキンを手に取り、キスされた手の甲を磨きだした。それも超ゴシゴシしている。我慢出来ないほど嫌だったんだ。それを見ていたデブが何をしているか理解出来なさそうな表情だった。
「オールク様、女性に対してその様な行動は度がすぎます。貴族として恥ずかしくない様に振舞ってください。特に、幼い子供に関しては外見、人格的に模範になれる様にしてください。王都の方がその様な行動を取るとしたら、あまり忠誠的では無いと伺えますね」
お姉は周りに聞こえる様に少し大きい声で冷たく言い放った。
「な、なんだと!吾輩は王都で陛下に仕える予定である身だ、好意を示していると言うのに侮辱するか!」
「では尚更、相手に対して失礼では無い行動をするべきではありません。一歩間違えれば王都の方が全員ロリコンと間違われますよ?」
「ろ、ロリコン!?」
「私はこう見えて17歳となるので適当にあしらっても構いませんが、貴方様の顔で迫られても夢でうなされそうになるので止めて頂ければと」
「それで17だと?どっからどう見ても12くらいだろ。子供の見えも大概にすると良いぞ!」
「むっ、後ろの弟達が11、10に見えるなら貴方様の目は濁っておられますね。至急洗濯される事をお勧めします」
「な、何を・・・」
「本当に姉です。俺は16」
「僕は15です。多くの方々は誤解されますけど僕達の姉です。疑われるのであれば僕と兄が保証します」
「ともかく、今後からは女性に対しての行動を謹んで下さい。不愉快なパーティーにならない様にしましょう」
「こ、この!!!」
デブがお姉に手をかけようとしたが、お兄が割り込んで振り下ろされた手を受け流した。その反動でデブが壮大に地面へ転んだ。あまりにも無様過ぎてその場にいる人達が笑いを堪える。
「く、クソッ、もう良い!貴様等、覚えておけ」
恥ずかしくなってさっさと帰るデブ侯爵。みんなが笑いを堪えている姿を見てさらに怒って帰って行った。
「お姉、流石にやり過ぎじゃないか?」
「お姉、わざと憎み役を買ったね」
「ありゃ、バレちゃった?」
「とゆこと?」
「メロールちゃん達がまた狙われる可能性が高いから完全に安全じゃない。でも目標が僕達に向くとなれば対処も出来るしメロールちゃん達の危険が断然に減る。それをお姉が自分を餌にしてさっきのデブの注意をこっちに向けた。それに昨日の親玉だったら上手く捕まえられる可能性も高い。まさに一石三鳥の策」
「あらら、そこまで読まれてるとは流石モンモン」
誰かを助ける事があればリスクを負ってでも助けようとするんだから。でもここは異世界。日本とは比べられないほど危険だ。いつでも襲われても対処できる様に対策を取らないと。
「君達に負担を掛けてしまうな」
ミュールさんが心配そうな顔で声をかけて来た。
「大丈夫ですよ。メルちゃん達の危険が遠ざかるのであれば」
メルちゃん?あ、メロールちゃんの事か。またお姉のあだ名付けか。いつの間にメルちゃんって呼んでたっけ?
「本当に感謝しきれないな。後に報酬を励もう」
「それは後で話しましょう。まずはこの場を修習しないと・・・」
「それなら僕に任せて」
僕が近くのテーブルに置いてあったナイフとフォークを数本ほど手に取った。
「皆様、先程は大変失礼いたしました。お詫びと言ってはなんですが小芸をお見せ致します。お兄、ジャグリングするよ」
「おう、了解!」
僕は手に持っているナイフでジャグリングを始めた。周りから歓声が出る。まだ歓声を上げるのは早い。お兄は周りにある皿やグラスを手に取り、僕に向かって投げた。僕は飛んで来た物を掴んでは直ぐに上へ投げ、そのままジャグリングを続けた。投げる物がワインのボトル、食べ物とだんだんとエスカレートしていった。流石に食べ物は素手で触れないから上に投げていたナイフやフォークで受け止めて上に投げた。そのままジャグリングは続き、そろそろフィナーレにしよう。僕の合図を理解したお兄は最後にトレイを投げて来た。それを受け取り速度を上げた。そしてトレイを初めに他の物も上に大きく投げた。片手を前に出して、落ちて来たトレイをキャッチする。続けて落ちて来る物をトレイで割れない様に受け止める。全て受け止めるとトレイの上には精錬に並べられた食器と料理だ準備された。そして一礼。すると壮大な拍手が送られた。
「おお、素晴らしい」
「何処から雇われたのですかな?ぜひ我が祝いの日に来て頂けないだろうか?」
「先程は大変面白い事をされたのにさらにこの様な芸をされるとは。何処から来られたのかな?」
「儂の家で働かないか?」
「結婚されいますか?お相手がいないのであればぜひ私と・・・」
一気に人が攻め寄って来た。これはやり過ぎたかな?
またやらかしたかな。