第34話 誕生日準備と3人姉弟 4
大変お待たせいたしました。色々と忙しくモンゴルに長期滞在中でして4ヶ月ぶりに投稿します。やっと落ち着いて書けるようになりました。ながらく待ってくださって真にありがとうございます。これから週一回のペースで書けるようにするのでぜひ見ていってください。
「セバルさん、私達の報酬から引いても良いから夕食を多めに出してもらってもいいですか?」
お姉がセバルさんに夕食についてお願いしていた。
「報酬から引かなくても多めに出せますが、如何なる理由でその様な提案を?」
「モンモンが沢山食べるので。もし明日のパーティーに影響があったら大変です」
「分かりました。直ぐに確認して材料を確保して置きます」
「お姉、流石に僕も自制と言う単語を知っているけど...」
「とか言いながら食べ放題の食堂で退場食らったのは誰だったかな?」
「うっ・・・」
元の世界で一度食べ放題の食堂で出した料金の3~4倍ぐらいの料理を食べた事がある。そこの店長に丁寧に追い出された。それ以来はギリギリの所まで食べては我慢している。
「でも、ちゃんと分かっているんだったら大丈夫だよね?」
「うん、出来るだけ控えめに食べるよ」
「モンモンが最後まで我慢できるか見ものだな」
「さあ、着きました」
セバルさんが扉を開いて僕達を先に部屋へ入れた。そこはテレビやアニメで良く見る豪邸の食事用の大きな部屋だった。長く繋がっているテーブル、丁寧に並べられた食器、見て楽しめる生花等が飾られていた。ミュールさんと奥さんは席に座っていた。
「「「おお〜!!」」」
「皆さん、こちらにお掛け下さい」
僕達はセバルさんの言われた通りに来客用の席に座った。全員揃ったところでタイミング良く料理人達が料理を運んで来た。
運ばれてきたのはいかにも高級素材で作られた芸術品と思わせる美しい料理だった。どうやらフルコース料理みたいだ。これは味が楽しめるぞ!
「お待たせいたしました。最初に前菜料理のスモークサーモンとりんごのカルパッチョでございます」
最初に出たのが前菜料理だった。久しぶりにカルパッチョを食べるな。前に作ってみようと思って料理の本を漁っていたな。
それはさておき、食べてみようか。フォークとナイフで丁寧に切って口に運んだ。おいしい!サーモンの味にりんごのあっさり感があって食欲が沸くね。
「次にトーモロコーのクリームコーンスープでございます」
トーモロコーはとうもろこしの魔物だそうだ。捕獲に手間が掛かるらしいのでそれなりにレア度が高いみたいだ。スープを口に入れた瞬間、濃厚なクリームの味ととうもろこしの味が広がった。喉こしが良く美味しい!
「魚料理のクラーケンのパエリアでございます」
魚料理はクラーケンとは・・・流石異世界だね。見た目は本当にイカだけど、これがあの海の大型魔物だなんて信じられない。でも、さっきからイカの良い匂いが漂っている。この世界の料理に戸惑いが無くなった僕には関係ないね。
ウマッ!!味は普通のイカより風味があって、香辛料がイカの生臭さを消しながら味を引き立てている。辛すぎず、程好いピリ辛なので食欲がすするね。本気でこの世界の料理を学んでみたいな。
「本日のメインディッシュ、ハイオークのステーキでございます」
肉料理はハイオークのステーキと来たか。この前にオークのステーキでも凄く美味しかったのに、オークの上位種であるハイオークとなるともの凄く美味しいに決まっている!!さっそく一口サイズに切って口にいれた。
うわぉ、美味すぎだ・・・想像以上の柔らかさと溢れ出る肉汁、それとソースが見事な調和を奏でてる。ソースはなんだろ?オレンジの香りがするね。他はまだ味見た事のない味付けだ。色んな食材を集めてみたくなったぞ。
「最後にドリンク、ライルの果汁でございます」
セバルさんが説明してくれたのだが、採取が困難で貴族達が好んで食べる果物らしい。一つでも場合によっては数十金貨はするそうだ。そんなお高いものとは恐れ多いな。ちょっとビビッていたらお姉が私にくれと目で言っていたので無視して飲むことにした。
フルーティ!!飲んだ感じスイカのようにすっきりしていて程好い甘さだ。少し酸味があって美味しいな。これを大量に生産できないかな?見つけたら頑張ってみるかな。
「如何だったでしょうか?お気に召したでしょうか?」
「はい、とても美味しかったです」
「美味しかった!」
「美味かったです」
本当に美味しかった。色々と勉強になる料理が沢山だった。この世界の食材をできるだけ多く食べて行きたいと思わせるほどに新体験が多かった。
「ところで君達」
「「「はい?」」」
ミュールさんが僕達を呼んだ。
「明日の娘の誕生会に参加してくれるのは嬉しいが、服装は大丈夫なのか?」
「「「あ・・・」」」
パーティー用の礼服は持っていない。前に服を買った時にチラッと値段を聞いてみたが一式買うのに全財産払っても足りないほどだった。
「持って、無いです・・・」
「そうか。流石に冒険者でもこのような機会は無いからな。セバル」
「畏まりました。皆さん、着る物を用意しますので移動しましょう」
「え、良いんですか?」
「追加依頼で護衛を依頼しよう。その報酬として礼服一式を渡そう」
「護衛依頼はランクが高い冒険者に依頼するのが常識では?」
「確かにそうだが、私も若い頃は冒険者をやっていたからそれなりに人の強さを分かるのでね」
案外、簡単にバレるもんだね。隠密系か隠蔽系のスキルを習得して実力を隠せるようにしたいね。
広い館を歩いて数分、僕たちは男性と女性で二組に分かれた。勿論、服を着替えるためだ。流石に着替えるのまで一緒は不味い。なので、お姉はキュリアさんとメイドさん達に連れて行かれた。キュリアさん達の目がきらりと光ったように見えたけど気のせいだろう。僕とお兄はセバルさんと数人の執事達と一緒にミュールさんの着替え室に連れて行かれた。
「私の古い礼服でね、中々捨てられなくてどうするかと思っていた所だった。古いので申し訳ないが、この中から好きなのを選んでくれ」
古いとは言っているけど、これいまだに綺麗に輝いたまま保管されてるよ・・・
断っても仕方が無いので体が合う礼服を探した。お兄は体が大きいから合うのが一着しかなかったため選べなかった。ミュールさんが言うに昔、自分の親族が大きくなるだろうと思って頂いた礼服らしい。けど、その予想は当たらず一度も着たことは無いらしい。お兄が着てみるとちょうど体に合った。全体的に見ると美術館で見た中世の礼服みたいな感じだった。上の色が藍色で白いボタンが施されていて、下が白の何も模様も無いズボンだった。昔頂いたと言っているけど、いまだに新品のままだ。流石に服だけでお兄の印象がこんなにも変わるなんて。お兄は顔も整っているから余計に似合う。
「おお~、似合っているじゃん」
「礼服って思っている以上に動くにくいな」
「私には会わなかったが、モトヨシ君にはちょうど合っているみたいだね」
「お似合いでございます、モトヨシ様」
さて、お兄は決まったみたいだし、僕も自分のを選ぶか。なるべく古そうな服を選びたい所だけど、どれも良く管理されているからほとんど状態が良い。適当に選ぶのも失礼だしちゃんと選ぼう。いくつか見ていると、一着の礼服が目に泊まった。上着の腕に赤い線が入っていて、肩に黄色の肩章が付いている黒い礼服だった。これはいいかな?さっそく着てみよう。
うん、ちょうど合っている。肌触りが良くて着心地は抜群だ。全身鏡が合ったので自分の姿を見てみた。
「おお、これはなかなか・・・」
一瞬、ポーズを決める所だったが、前の失敗を思い出して自制した。ふと後ろを振り向くとお兄が覗いていた。
「なにしてるの?」
「いや、モンモンがまた痛いポーズを決めていないかな~と思って」
「しないよ」
「そりゃ残念」
勝手にがっかりされとめどうしろと・・・
「モトアキ君も大丈夫そうだな」
「兄弟共々、真にお似合いでございます」
「ありがとうございます」
ミュールさんとセバルさんが微笑ましく見ている。ちょっと恥ずかしいな。コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「キッキー、モンモン、着替えたー?入って良い?」
「うん、今終わったよ」
扉が開いて現れたのはお姉であってお姉ではないお姉だった。赤いドレスを着ているお姉が少し顔を赤めながら入ってきた。プリンセスラインって言うんだっけ?ボリューム感が大きく、肩が出ている。見違えるほど綺麗、綺麗だけどやっぱり・・・
「「ちっちゃい」」
「ムキー!!!」
豪華な服を着ているので、いつものように飛び掛る事ができないでいるお姉。
「ヨシミ君も整えると別人だね」
「ヨシミ様、可愛らしいお顔が台無しですぞ」
どうやらお姉はキュリアさんとメイドさん達の着せ替え人形になっていたみたいだ。何度も着せられてはダメ押しが多かったみたいだ。さっきやっと終わったそうだ。
服も準備できたし、そろそろ寝ようかな。
「これで明日のパーティーは大丈夫だろう。もう遅いしそろそろ・・・」
「あの、お父様」
いつの間にかメロールちゃんとメリアンちゃんが来ていた。
「どうした?」
「あの、その、み、皆さんが良ければお話をもっと聞かせてもらっても良いですか?」
「ふむ、・・・よし、セバル。部屋に案内してくれるか?」
「畏まりました」
「「「え?」」」
後で3人姉弟の全身図や今回の服を描いてみたい。