第31話 誕生日準備と3人姉弟 1
そろそろ戦闘も入れたいけど中々日常が長くなりますね。
親族の結婚が決まって気分は春気分です。
「モトアキさん、いやモトアキ様!どうか我が主に仕えて素晴らしい芸術品を共に作りましょう!」
「いや、私と共に主の口に感動溢れる料理を!」
「いやいや、私と共に忘れられないハーモニーを奏でましょう!」
「いやいやいや、我と共に誰にも悟られず、驚きのイリュージョンを披露しようぞ!」
...どうしてこうなった。
僕の周りに芸術家、料理人、音楽家、手品師がしつこく付きまとう。
「僕はただの冒険者なのでどれもやりませんよ」
「「「そこを何とかお願いいます!!!」」」
...ハァ。やりすぎたのかな...
2日前、ご飯を食べた後、僕はモロット師匠と一緒にポーションを作っていた。作業もなれたので、20本分のポーションを一気に作って作る量を増やした。僅か二時間ほどで最初の目標量を達成してしまった。師匠は驚いていたけど、よく出来たと褒められた。次に来る時はポーションの味の改良のレシピを作ってくれと頼まれた。師匠の店を出てから、そのまま他の依頼を達成する為にとある場所に向かった。
依頼に描いてあった場所に向かって見て驚いた。なんと、この街の領主ミュール・ヒュース様の館だった。お姉め、こうゆう事は先に言ってくれないと困るんですけど。もう...断れないし、そのまま館の警備員に声を掛けた。
「すみません、ミュール・ヒュース様の館で宜しいでしょうか?」
「うん?誰だお前は?」
「あ、この依頼を引き受けた冒険者、元明です」
自分の身分を証明する為にギルドカードと依頼書を警備員に渡した。
「冒険者?...うむ、確認を取れた。入るが良い」
「ありがとうございます」
「一応は確認するがのだが、領主様と親族に手を出すと軽く死刑になるので、くれぐれも気を付ける事だ」
「そうならぬ様、肝に銘じておきます」
「なら良い。もう直ぐしたらここに仕えている執事長が来る。その方に案内通りに付いて行く様に」
「分かりました」
お、リアル執事長か!正にファンタジーだな。やばい、テンション上がってきた。やっぱり名前はセバスとかセバスチャンとか王道執事の名前かな?でも変なことをして処刑とかなったら堪らないな。
そんな下らない事を考えながら数分もしない内に執事服を着た老人がこちらに向かって来た。近視眼鏡を掛けていて、顔にはしわが多いけどダンディーな外見だった。歩き方から只者ではないオーラを感じる。僕の前に着いた執事長が頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私の名はセバルと申します。この館で執事長をやらせて頂いております」
「どうも、元明と言います。作法とか詳しく分からないので大目に見て頂ければ嬉しいです」
そう言いながら軽く頭を下げる。
「ほう、これはどうもご丁寧にありがとうございます。見た所、少しはお学びしたと見受けますが」
「冒険業をやっておりますので深くは話せないのでお許しを」
「ほっほっほ、私とした事が無駄な探りを入れてしまった様で申し訳ございませんでした。主を守り、支えるのが私共の役目ゆえに疑い深くなってしまったもので」
「気にしてないので大丈夫ですよ」
「感謝致します」
「この依頼はミュール・ヒュース様からの依頼で宜しいですか?」
「はい、間違いないです。主が描いて頂きたい方が中に居られるので案内いたします」
方?領主様の家族か誰かかな?人物を描くのなら一番得意だ。
僕はセバルさんの後に付いて行きながら館に入っていた。館の中は正に貴族の館と言わんばかりの感じで様々の芸術品が飾ってあった。アニメや本で見たことしかなかったけど、豪華な飾り付けもしたあり、いっそう豪華に見えた。
見た感じ危なっかしい物を展示していないのを見ると、子供がいるのかな?美しく、可愛らしい物が多いので女の子かな?
「セバルさん、描いて欲しい方って領主様のご家族か誰かですか?」
「察しが早くて助かります。今現在、この館に居られるのが主の領主様、奥様、10歳と5歳のお嬢様、私達役人十数名となります。実は明日、長女のメロール様の誕生日でしてその記念の絵を描いて欲しくて依頼を出しました」
「え、そんな大きな仕事を冒険者の僕が引き受けて良かったんですか?」
「恥ずかしながら直属の美術師がスランプになっておりまして、急遽代わりの方を探したのです」
「僕じゃ期待に応えられる絵を描けるか不安なのですが...」
「ご心配要りません。モトアキ様の手を見る限り、相当な技術を持っていると断言できますな」
観察力が半端ないな。僕の手は確かに色々なことをやり過ぎで少しボロボロだ。それだけ見て確信するなんて。さすが執事長だな。
会話しながら歩いていたら、セバルさんはとある部屋の前に止まった。そしてドアをノックする。
「旦那様、セバスです。客人を連れて参りました」
「入れ」
中に入ると山のように積み上げられている書類と奮闘している領主らしき男性が机に座っていた。領主様は美形の顔で年は三十前半、髪の色は明るい金髪だった。僕の方を見ているが手が忙しく動いていた。
「私の名はミュール・ヒュース、この街の領主をしている」
「僕の名は元明と申します。クリエイションサモナーで冒険者をしております」
「珍しい職業だな。冒険者をしているのに申し訳ない。娘のメロールの誕生日が近付いているのに急に忙しくなってしまった為、働いている者がスランプになってしまってな」
「いえ、領主様の期待に応えられる様に最善の努力をします。それに絵など描くのが好きなので」
「感謝する。出来によっては報酬に上乗せする」
大変だけど娘の誕生日は祝いたいよな。父親でも領主の仕事を優先しないといけない気持ちは分かるな。
領主様の他にも書類を整理している人がいる...え?
「お姉!?」
「あ、モンモン。さっきぶり〜」
「おや、ヨシミ様と面識があるのですか?」
「面識と言うか僕の姉です」
「ほう、ヨシミの弟か。ますます期待できるな」
なぜお姉がここに?Fランクの依頼だよね!?低くてもBランクの依頼だぞこれ。
「領主様、姉を少しの間お借りします。ちょっとこっちに来て」
「何?」
お姉を招いて小声で話す。
「なんでお姉がここにいるの?」
「サプラーイズ、びっくりした?」
「びっくりしたも何も混乱しているんだけど!これ確かにFランクの依頼だよね?どうなっているの?」
「多分、冒険者ギルドの誰かの手違いか間違って低ランクに指定したみたい」
「え、じゃあ領主様に言わないと」
「それは駄目。今言うと領主様の冒険者ギルドに対しての信頼が下がっちゃう。この件は後でギルドマスターに報告しておこう」
「なるほど、分かった」
冒険者ギルドの失態をあえて隠すなんて。流石お姉だな。大きな借りを作ってしまうな。
「後、もう一つ領主様からの依頼があるんだよね」
「え、まさか」
不意に領主様を見ると休憩しているのか窓から外を眺めていた。
「旦那様、外に何かありますか?」
「いや、優秀な人材なのか、彼一人がパーティー会場の設置が早くてな。今年は準備が早くできそうだな」
「どのお方ですか?」
「あの黒髪の少年だ。先程から動き続けているのだが疲れを見せんな」
僕も気になって外を見ていたら、案の定お兄が物を走りながら運んでいた。
「やっぱりお兄かよ!」
「む、彼も君達の兄弟かな?」
「私の上の弟キッキーです」
「元吉です。今のは姉のが付けたあだ名なので気にしないでください」
「姉弟揃って優秀だな。モトアキ君は芸出で何を見せてくれるかな?」
そうだった、目的を忘れる所だった。
「お嬢様達と会わせてもらってもいいですか?」
「メロールだけじゃ駄目なのかな?君に負担が掛かってしまうのでは」
「それも良いのですが、一緒に描いたほうが妹さんが嬉しいはずですし」
「君に負担が無いのならお願いしようか。セバル、後から向かうので先に娘達に合わせてくれ。それと絵の具の準備もだ」
「畏まりました。ではこちらです」
「後で見に行くね~」
僕はセバルさんと共に領主様の部屋から出で別の方へ向かった。そして別の部屋の前で止まって、その部屋に入った。そこにはメイドさん二人と可愛らしい女の子達二人が遊んでいた。
「あちらが長女のメロール様と次女のメリアン様になります」
メロール様とメリアン様は領主様と同じ金髪で美少女と美幼女だった。二人ともおそろいの赤いリボンをしていて、大きな瞳はルビーのようにキラキラと輝かせながら可愛らしい笑顔で話し合っていた。メロール様の身長は目測りだと130センチぐらいかな。お姉と同じ...うん、忘れよう。メリアン様は100センチ位かな?やはり健康的な暮らしをしているので発育も良さそうだ。
二人を観察していたら、視線に気付いたのかこっちに振り向いた。メリアン様がメロール様の後ろに隠れて、メロール様は守るような姿勢で立った。
「おっと、お嬢様方の可愛さに紹介するのを忘れておりました」
セバルさんがやってしまった的な口調で言った。
「紹介致します、メロール様、メリアン様。こちら二方を描いて頂く冒険者のモトアキ様です」
「始めまして、元明と言います。クリエイションサモナーで冒険者をしていますけど絵とか小芸が得意です」
「領主ヒュール家長女のメロール・ヒュースと申します」
「次女、メリアン・ヒュースです」
流石お嬢様達だな。挨拶の仕方を教えられているのか、仕草が完璧だった。子供の面倒を見るのが好きだが、お嬢様と接するのは初めてなので上手く行くか分からないが、やって見るか。お嬢様たちの目線に合わせる為に少ししゃがんだ。
「いきなりで申し訳ございませんがお二人は何をするのが好きですか?」
子供とは仲良く会話しよう。