第29話 落し物と3人姉弟 3
少し遅れてしまいました。
クロールが魔力を高めながら僕達を思いっきり指差した。
「我が使い魔達よ、あのクソガキどもを八つ裂きにしろ!!!」
「私ここだと立派な大人のレディーなんですけど!」
「人に向かってクソとは何だ!」
「お姉、お兄、敵を刺激してどうすんの!」
「貴様の言葉が一番頭に来たぞぉ!!」
周りにいた烏達が僕達を目掛けて高速で飛んできた。もしかして、この烏も魔物かな?
-個体名:シャドウ・クロウ
レベル:10~13
HP:200
MP:50
属性:闇
スキル:爪、嘴、飛行、連携、闇魔法
-群れを形成して集団で行動する烏の魔物。闇魔法で隠密行動に長けているので、森の中では対処するのは至って危険。雑食なので狙われた獲物は無残な姿で発見される。危険度はD~C+。
要するに魔法使って凶暴な烏って所かな...森では危険って、積んでいるっぽい?
...って、やばいじゃん!ここは相手にとって最高の戦場って訳か!
「お姉、お兄、早く森を出よう!ここだと相手にとって有利な戦場だよ」
「おっと逃がすなよぉ!」
烏の羽ばたく音が多くなった!魔力感知で周りの気配を探ると、段々と取り囲まれるようにシャドウ・クロウが迫ってくる。
「逃げられそうに無いね!」
「ここは腹を割って前面突破だ!」
「穏便に行きたかったけど仕方が無いね。お兄は大きい武器を使わずにシャドウ・クロウの羽を斬って動きを封じて!あいつ等は闇魔法を使えるから気をつけて。お姉は光魔法で動けないのから確実に止めを刺して!僕は二人をサポートしながら術者を警戒しているね!シャドー・クロウが減ってきたら一斉にあいつを確実に倒す!」
「「了解!!」」
喋り終わった瞬間にシャドー・クロウ達が襲い掛かってきた。お兄はアイテムボックスからダガーを二本を取り出し、手数を増やしてスピード特化で対処した。無数のシャドウ・クロウの通常攻撃と闇魔法の攻撃を完璧にかわしながら、すれ違い際に正確に羽を目掛けてダガーで斬りつけた。次々とシャドー・クロウ達が襲い掛かってくるが、紙一重の差でかわしながら行動不能にしていた。
羽を斬られて飛べないシャドー・クロウが闇魔法で攻撃しようと魔力を高める。
『ライト・レイン』
だが、その行為は無駄だった。お姉が発動した光魔法の広範囲攻撃でシャドー・クロウ達を正確に当て、その命を絶った。相性で闇属性に光魔法が効果抜群なのでダメージが多いはずだ。ついでに飛んでいるシャドー・クロウにも当てていた。掠っても大ダメージだったらしく、そのまま地面に突っ込んで力果てた。お姉の攻撃を耐え抜いてまだ息がある個体もいたが、また光魔法の攻撃を食らって断命した。
「ちぃ、やはり一筋縄ではいかないかぁ。ならばぁ!」
クロールはさっきと別の動きで指示を出した。すると周りにいる全てのシャドー・クロウが魔力を高めた。やばい、あの数で低級の攻撃魔法でも放たれればかなり危険だ。時間を掛けていたら負けると判断したのか力押しで来るつもりか!
「お姉、お兄のダガーに光の衣を纏わせるイメージで属性付与をして!それと後方に光魔法のシールドを半球体で展開!お兄は出来るだけ前に出て攻撃を斬り落として!シャールは僕と打ち漏らしを闇魔法で追撃。プービーはお兄の急所になる場所だけを覆い被って!」
『ライト・エンチャント』
『ライト・シールド』
「おう、任された!!」
“『シャドー・シールド』”
“硬化”
僕の指示通りに行動を終えた瞬間、四方八方から闇魔法の矢が僕達を目掛けて撃たれた。
「うぉおおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」
余りにも早いお兄の手捌きは眼では追えなかったが、向かってくる闇の矢を切り裂く。少し掠ってはいるが、プービーがお兄の体を這いずりながら防いでくれた。お姉のシールドはかなりの魔力を込めたのか闇の矢を完璧に防ぎきった。矢がシールドに触れたと思ったら、光の影響で触れる前に消えていたので持久力が減ることも無かった。僕とシャールは僅かな隙間から入り込んだ矢を闇魔法で正確に相殺して打ち落とした。
結果、僕達は無傷でクロールと対立していた。
「ば、馬鹿なぁ!!お前らに殺られていても100羽以上もいたんだぞぉ!!!」
「「「いやぁ、それほどでも~」」」
「褒めてないわボケェ!!!」
「あの人怒りっぽいね」
「あれだから仲間に嫌われてんじゃねえの?」
「お姉、お兄、こうゆう隠見な人にそんなことを言うのは失礼だよ」
「お前が一番失礼だぁ!!!ふざけているのかぁ!?」
ホント、怒ってばっかだな。あんなに気が短いと痔命が短くなるぞ。
「もー、あーだこーだうるさいね。さっさとお縄に頂戴してくれないかな?自首すれば私達から罪を軽くしてもらえるように憲兵さんにお願いするから」
「ここではい、そうですかと答える馬鹿はいねぇ!これだったら憲兵はいらねえよぉ!!」
「もしくは俺の拳で一日中地面に埋まるか?」
「拳って...まさか、最近話題になっていたあの3人姉弟かぁ!?」
「え、もうそんなに知られているの?」
「あんなにやらかしたら噂は直ぐに広がるぅ。まさかお前たちだったとはなぁ」
「分かったいるんな話が早いね。お姉の言うとおり、捕まってくれれば刑を軽くするように問い合わせるから」
「...分かったぁ。そうしようぅ」
あれ?意外と簡単に捕まえられる?
クロールは両手を前に差し出しながらこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。お姉がその手を縛ろうとした瞬間、お兄がクロールの右腕を握り潰した。
「ぎゃあああああああああああああああ!?」
「キッキー!?」
「お兄!?」
右腕を押さえながら崩れ落ちるクロール。右の袖からナイフが転げ落ちた。
瞬間、クロールとシャドー・クロウ達はこれまで感じた事も無い殺気を感じた。目の前の男二人から発せられる殺気は異常だった。全てのクロウは怯えて動けず飛べなかった。
「おい、良い度胸だな」
「正にギルティだね。お姉が優しく言っているのにそれを拒否するなんて」
「く、くそがぁあああああああああ!!!」
やけになったクロールは一人でも道連れにしようとお兄にナイフを突き立てるが、それは一番悪手だった。お兄は左手でナイフを叩き落し、右手でクロールにアイアンクローをかました。
「くがぁががががががががががががが!!!」
「覚悟は出来てんだろうな?」
「わ、我が、げ、げぼ、くたちぃ!」
クロールはこの状況を打破するためにシャドー・クロウを操ろうとしたが反応が無い。すると、シャドー・クロウが次々と落ちてきた。
「お兄、全部のシャドー・クロウを動かせなくしといたよ」
「良くやった。流石、俺の自慢の弟だ」
「なっ!?」
僕は既にシャールとプービーを融合させて、影に忍ばせて全てのシャドー・クロウを麻痺させた。今の戦闘中でレベルが上がっていたのか、予想より早くシャドー・クロウ達を制圧することが出来た。
「そ、そんな馬鹿なぁっ、いだだだだだだだだぁ!!」
「さて、色々と積もった落とし前、どうしてくれようか」
「どうしようかね、お兄」
「キッキー、モンモン、もう終わったんだし離してあげて?」
「わ、分かったぁ!降参だ、降参!もう何もせず大人しく捕まってやるからこの手を離せぇ!」
「言い方」
「んがああああぁ!!」
お兄の手に更に力がこもった。心なしかメリメリ音が聞こえた気がする。
「わ、分かりましたぁ、もう降参ですぅ!降参しますから離して下さい!」
「...良いだろう」
お兄が手を離そうと力を緩めたと同時に、クロールの靴から仕込みナイフが飛び出て、お兄の首元を蹴りこんだ。
「お兄!」
『ウッド・バインド』
が、お姉の木魔法で食い止めた。
「あ、ああぁ...」
「貴様には何も言えねぇな」
「「あ...」」
久々に見るお兄のマジギレ。終わったな。
クロールを掴んでいる右手を高く持ち上げ、左手に力を込めた。
結果を言うと、リアルでジ○ジョのオラオラを見れるとは思いもしなかった。片手だけでも、まるで腕が数本あったように見えた。つい、興奮して感動していたが、両手でやっていたら多分死んでいたな。あえて半殺しに止めていたんだと思う。
僕達はクロールが盗んだ物を回収して、街に戻った。口と身動きを封じたクロールをお兄が担いで走った。なので移動が遅くなり、時刻は既に夕方だった。そのまま憲兵にクロールを引き渡し、ギルドに行ってミネルさんに落し物の依頼を全て報告した。直ぐに検討して持ち主に返すらしい。因みにクロールの事も報告したら、かなり高額な指名手配犯だった。後で憲兵と話し合ってから依頼の報酬金に上乗せしてくれるみたいだ。
疲れたなぁ。レベルの確認はせずに夕食を食べて直ぐに寝た。明日移動しながら確認しようっと。
戦闘シーンなのかギャグシーンなのか分からなくなってしまった...
まぁ、えっか!